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水田ビジョンに多彩な創意工夫 全国大会の議論から (12/20)

 水田営農の将来をどう描くか。JA全中が12月7日開いた「地域水田農業ビジョン」実践強化全国大会では事例報告をした3氏に多くの質問が出て、課題の重さをうかがわせた。3氏の応答やパネルディスカッションでの発言から要点をまとめてみた。
多彩な議論を展開した地域水田農業ビジョン実践強化全国大会。都内のホテルで
多彩な議論を展開した地域水田農業ビジョン実践強化全国大会。都内のホテルで
 宮城県・JA登米の阿部長壽組合長は「売れるコメづくり」を掲げたビジョンの実践状況を報告した。中心は「環境保全米」の生産拡大で「赤トンボが乱舞する環境と家族経営農業の発展を目指す」というロマンをこめたビジョンだ。
 環境保全米は3区分で、うちAタイプは有機栽培。Cタイプは減々栽培。初年度の昨年の作付は1000ヘクタールだったが、今年はCタイプを主体に6倍に増えた。「なぜ急に増えたのか」の質問に、組合長は「意識改革が進んだ」と答えた。具体的には、各タイプの生産基準を営農指導員につくらせる過程で意識の変化が見られたという。またコメ卸を現場に呼んで各水稲部会の幹部と交流したり、部会のメンバーと営農指導員が卸を訪問したりして、流通の実態を肌で感じさせる方法も試みた。
 こうして農家は有機栽培に限りなく近づく農法転換に目を向け、コメの過剰下でも完売できる展望を開き始めたという。
 滋賀県・JAグリーン近江の大林茂松営農事業部次長は「約10年前から集落営農を推進してきたが、新しいビジョンにはコメの販売戦略を組み入れ、これを通じた集落営農の機能強化を図っている」と報告した。
 約300集落のうち約200の集落営農が機械の共同利用と担い手対策に取り組んでおり、うち約3割が一歩進んだ協業方式への転換を考えているためJA体制も営農企画課を集落営農の専任部署としたという。
 報告の後、次長は質問に答え、経理一元化では「全体でやれば反当たり収益はこうだと、個別農家のコストと比較した数字を、集落の組合長に示して一元化を進めた」例などを挙げた。
 また▽もうかる話をしないとダメ▽次世代を育てるためにも法人化は一つの手だて▽集落営農への生産資材供給は、コメ出荷量に応じて奨励金を出したり、JA施設の利用度による大口割引などをして商系に対抗している、などと語った。
 佐賀県・JA佐城の水田徳美参事は「共同乾燥調製施設を核とした組織体を目ざして」と題して報告した。これによると、大豆を本作化し、生産の大規模化を進めた。今年産の作付面積は約2400ヘクタール。団地化率・担い手への集積率は約80%で、ブロックローテーションの仕組みを整えた。
 ビジョンは「こうした仕組みを余り変えない考え方で策定した」という。
 大豆の共乾施設は3カ所ある。利用組合は管内の100%の農家を組合員とした利用組織だ。機械化一貫体系も整備した。
 米麦では13のカントリーエレベーターと、2つのライスセンターがある。
 一方では、担い手の条件に満たない「20ヘクタール以下の集落があり、数集落が集まっても、高齢化が進み、新しい担い手が育たない場合は、また集落を再編しないといけなくなる。それよりも最初から共乾を単位にした営農集団づくりをしてはどうか」という議論があり、模索中だという。
(2004.12.20)


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