農業協同組合新聞 JACOM
   

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論壇
ビジョンを構築し国の政策をリードしよう


◆政府に21世紀を展望する力なし

 この21世紀初頭は大変化の幕あけである。国の人口1つとってみても、単に少子高齢化のみならず、総人口が50年後に1億、今世紀末には7000万を割り込むと予測されている。明治初期以来の人口増を軸とした国家航路、まさに大転換しようとしているのである。
 世界規模の急速なグローバル化、中国・東南アジアの経済発展による工業生産力を背景とし日本の経済優位性の低下など、わが国を取り巻く環境条件も激しく変化している。
 今こそ国家百年の計を立てなければならぬときなのである。現小泉政権で長期ビジョン構築は可能なのだろうか。
 いま話題の道路公団問題への対応ひとつとってもみても、口先・小手先政権であること明白である。お世辞にも構造改革内閣とはいい得ない。何故にこのような政権が、さらに永らえようとしているのであろうか。それは、民間が政治に突きつける自らの政策と要求を持たない、の一言に尽きる。
 農協組織ひとつとっても、自らの課題たる「農協改革」までも、農水省の設けた審議会答申報告書によるというていたらくに、明々白々に映し出されている。政府に舵なく、民間に案なければ、日本丸は荒波逆巻く21世紀洋には漕ぎ出で得まい。
 
◆民間がビジョンを描いて政策要求

 米国の場合、大統領交代による新政権では、民間シンクタンクで長期国家政策研究をおこなった連中が、スタッフとしてその中枢を占めると言われる。政治形態の相違から日本にそれを求めるのは当面は無理であろう。2大政党、政策中心の政治運営、政策研究の可能なシンクタンクの存在などの条件に欠けている。
 ならばどうするか。民間が自らの問題として、自らの長期ビジョンを政権に突きつけるのである。
 民間のなすべきことは自立的要求活動である。すなわち「国家百年の立場からこのような国家・社会・経済が望ましい。その実現のために、我々はこの分野・この方法で協力・貢献する。政府は我々の活動を促進するために次の施策を講ずべし」とする活動である。
 長期ビジョンは画期的なものであらねばならない。諸々の審議会・研究会の議論を見ても明治以来の経済至上・高度経済成長・国家規模の拡大の深みからほとんど抜け出ていない。
 羅針盤も船体構造も大転換する視点と覚悟が必要であろう。ビジョンには大胆な目標設定も重要である。例えば適正人口6000万、食料自給率60%、エネルギー自給率50%などなど。
 
◆21世紀は農協がリードする時代に

 21世紀はどんな時代になるのか。農業・農村が大きく脚光を浴びることとなる。今、全世界で自然資源ならびに環境の保護、自然エネルギーの開発、食料生産力の強化などが強く求められている。となると、農業・農村の果たすべき役割は大きい。
 農業・農村とくると、主役は農協となるのが理の当然であり、その責任は重い。今までのように政府の下部機関的な存在では社会的責任を果たせないのである。自らが、21世紀の日本国のあるべき姿と農業の果たすべき役割、その中での農協の機能と責任を描き出し、実践せねばならない。
 
◆農協シンクタンクの総力結集を

 “農協組織にそのデッサン力なし”の声が大きくこだましてくる。何たる自己卑下ぞ、農協シンクタンクで全力を挙げて事に当たればよいのである。農協組織は多くの研究機関を有している。農中総研、共済総研以下ずらっと並ぶ。各事業のセクトと組織を超え国益的立場から、農業・農村を軸とした国家ビジョンを構築したいものである。 民間が自ら描いた国家ビジョンで政策をリードする。ぜひ、農協組織がその先鞭をつけたいものである。 (2003.8.6)


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