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朝ごはんを食べよう
朝食抜き食生活の改善に照準合わせ  −朝ごはん実行委員会−


 健全な日本型食生活の提唱と一体となった米の消費拡大運動が大きく盛り上がってきた。農水省の「食生活指針」は日本の風土に適している「ごはんなどの穀物をしっかり食べましょう」と呼びかけている。ご飯は様々なおかずとの組み合わせに向くから栄養バランス抜群の主食に間違いはない。ご飯食を推進する組織が全国規模で次々にできている。兵庫県知事の提唱で発足した「ごはんを食べよう国民運動推進協議会」といった地方発の運動もある。そうしたうねりの中でJAグループの果たす役割はますます大きくなっている。

◆朝食抜きの食生活改善に照準

 食糧庁、JA全中、JA全農が「朝ごはん実行委員会」という名のプロジェクトチームを5月につくった。ご飯中心の朝食メニュー開発や食材の販促などをスーパーや外食産業などと協議し、流通業界とも力を合わせた運動にチャレンジする構えだ。JAグループは今秋開くJA全国大会の議案に日本型食生活の普及を盛り込んだが、とりわけ朝食抜き食生活の改善に照準を合わせた。その取り組みが実行委員会の発足で始動した。運動のねらいには米の消費拡大が基調にあり、そして食料自給率の向上につなげて方針だ。

 「朝ごはん実行委員会」が会社員を対象に実態調査を実施したところ、4.5人に1人が朝ご飯を食べていないという結果が出た。
 しかし欠食はしていてもその8割は「本当は食べたほうがよい」と考え、これからは努力したいという。

 だが専門家の中には「そんな努力は必要ない」という学説を唱える人もいる。「朝起きて食欲がないのに無理に食べると体に悪い。朝食抜きに慣れてしまえば体調もよくなる」といった論法だ。だが、そうした理論は少数派のものだ。

◆チラシなどで精力的にPR

 農水省の「消費者の部屋」には食料や農林水産業全般の資料が多種多様。その中にはJA全中が作った朝ご飯の効用を説くパンフやチラシ類もいっぱい。
 そこには「朝食を食べないと、体と頭は寝ぼけたまま。集中力もなくなります。毎日の健康のために、きちんと朝食を食べましょう」とか「元気のスイッチを入れる朝一杯のゴハン」などといった活字が躍る。

 やはり「朝食抜きは不健康」というのが学界主流の通説であり、行政のベースにもなっている。欠食者自身も経験則から「食べなければ」という考え方だ。

◆子育て世代が朝食を抜けば・・・

 JA全中の中で朝ごはん実行委員会の仕事を担当するのは食料農業対策部の米消費拡大・食生活対策室。 久保信春室長は「1日の活力源として朝ごはんは絶対に必要です」と、その立場を簡潔に強調。「ところが朝ごはんの欠食率は年々高くなり、特に2、30代では30%以上になっています」と問題点を挙げた。 「この層は子育て世代であり、日本の食生活を今後担っていく。この層が朝食をとらない習慣は日本の食文化の危機にもつながっていきます」と指摘した。単に米消費拡大だけにとどまらない問題だ。

 欠食の理由は調査結果によると「もっと寝ていたい」「朝は忙しい」などだが、夫婦共働きの社会環境だからといって、それが子供のために許されることだろうかとの疑問も投げかけた。 実行委員会が朝食をキーワードにしているのは、昼食や夕食を親子そろってとるのが困難な社会環境にあるからだ。せめて朝食だけでも子供と一緒に食べて家族のきずなを確かめ合おうというねらいだ。

 少年少女の犯罪が続発している。その報道には家族のきずなを問題視する識者のコメントがつく。そうした社会現象も視野に入れて運動を構築していく。  

◆JAグループは手軽に食べられる新製品を開発

 「わかっちゃいるけど食べられない」という朝食欠食者のうち女性たちは手軽に食べられる「新商品に期待」し、また「残り物の利用」を工夫したいという。いずれにしても簡単クッキングを志向している。

 それは冷凍米飯など加工米飯の需要の伸びにも現れている。米消費が減り続ける中で、この加工米飯は成長市場だ。JA全農も積極的に生産を拡大している。 そこでJAグループは加工米飯を含めて、より一層バラエティに富んだ簡便な新製品を開発し、朝食摂取の「実行」を促進する。

◆朝食メニューで外食産業に要請

 実行委員会ではもう一つ朝食をとるチャンネルつまり機会を増やす方針だ。
 朝食は家庭でとるのがベストだが、単身赴任などを含めた一人暮らしの消費者には朝の外食機会を広く提供しようというものだ。
 具体的にはファストフード店でバーガーやポテト以外に、ご飯を中心にした朝食メニューを拡充し、朝食キャンペーンを展開してはどうかと提起している。

 朝の外食といえばトーストとコーヒーか立ち食いソバのイメージがある。ファストフード店やファミリーレストランでは朝食メニューには手つかずの状況だ。
 朝食マーケットは大きい。欠食の″3割″がご飯にみそ汁を外食するようになれば、その客層だけでも大きな市場開拓になる。

◆ご飯フェアなどスーパーに提起

 一方、スーパーには冷凍米飯など朝ご飯関連商品のセット販売など企画を凝らした朝ご飯フェア開催の検討を呼びかけている。
 といっても各社にはそれぞれの政策がある。業界ぐるみのタイアップは困難だ。このため実行委員会では各業種で意欲的な企業を選んで先行的に協議中だ。

 これまでの米消費拡大運動は啓発、広報、広告のいわば情報発信が主軸だった。ところが今回の朝ごはん運動は、現物の食べ物を開発し、供給し、そのチャンネルを提供するという流通分野に乗り出したことが大きな特徴だ。「食べないといけない」といった啓発活動などの情報発信には限界がある。そこを突破した今後の展開が期待される。

◆店内からの情報に期待

 協力要請先は@量販店AコンビニBファストフードCファミリーレストランD通販の5業種だ。これは欠食率の高い若年層に対する影響力の強さを検討して選んだ。その店内から情報を効果的に発信する。
 通販はカタログなどによる訴求力の強さをみた。特に主婦層への影響が強い。このためカタログに冷凍米飯などの朝食商品セットを入れてもらう計画だ。

 なお朝ごはん実行委員会は広報事務局を設置しているが、プロジェクトなので委員長はいない。

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4.5人に1人が朝ごはん抜き−会社員対象に調査

 朝ごはん実行委員会はさきごろ首都圏と関西圏で20〜49歳の会社員を対象に朝ごはんの実態調査を実施したとろ、4.5人に1人が朝ごはんを食べていないという結果が出た。
 その理由としては「寝ていたい」が圧倒的に多かったほか「お腹が減らない」も3割あった。

 また欠食者の8割が「本当は食べたほうがよい」と考えており、今後、食べるために「早く起きる」ほか「新商品に期待」(40代女性)、「残り物の利用」(20代女性)などを挙げた。 一方、ふだん朝食をとっている人の中でも、ごはんを主食にしている人や、家族などと一緒に共食している人は、そうでない人と比べて、バランスのよい食事をしているという傾向も出た。
 実行委員会は調査結果を受け、朝ごはんを食べやすい環境づくりを流通業界などと検討する。

 調査結果の特徴をさらにみると、「3食バランスよく食べることがダイエットに効果的」と認識している女性が意外に多いことがわかった。この回答は全体では14%(264人中37人)だが、うち4割は40代だった。
 朝食の主食はやはりパンが5割と多く、ごはんは4割だった。しかし関西圏ではパンが6割弱もあって地域差が出た。
 朝食の所要時間は6割が15分以内で、パンもごはんもほぼ同じだった。
 朝食で食べるおかずは、コーヒーなどの飲み物が6割弱、卵が5割弱、みそ汁などの汁物4割弱、以下は乳製品、牛乳、果物の順。


 

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