トップページにもどる 農業協同組合新聞 社団法人農協協会 農協・関連企業名鑑

米の需給と価格安定の実現めざして」

健康長寿に不可欠なごはん食の伝統
「お米・健康サミット2000」より

 農林水産省と(社)日本医師会、(財)全国米穀協会が共催したシンポジウム「お米・健康サミット2000−ごはん食で生活習慣病の予防を」が11月2日、日本医師会館で開かれた。今、わが国では食生活の乱れを一因とする動脈硬化性疾患や糖尿病など生活習慣病の増大が問題となっている。こうした生活習慣病を予防するため、同シンポジウムでは食生活のあり方とごはん食の意義について医師が最新の研究成果をもとに報告。専門家は一様に、健康で長生きするため「ごはん食の伝統はなくてはならないもの」と強調していた。


米食で世界一の長寿国に

上島弘嗣
滋賀医科大教授

 現在、わが国は世界一の長寿国となっているが、1965年では脳卒中死亡率が世界一だった。その後、脳卒中を減らすとともに、欧米のように心筋梗塞が増加しなかったために長寿を達成したという。
 では、なぜ、心筋梗塞が増えなかったのか。コーディネータを務めた上島弘嗣滋賀医科大教授は「その答えは米飯を中心とした和食にある」と指摘した。ごはん食は、魚介類をはじめとした多くの副菜とあいまった世界でもまれにみる健康食だという。

 しかし、最近では米などの穀物摂取の減少ともに、脂肪の摂取量が増加し、心筋梗塞などの原因となるコレステロール値の高い日本人が増えている。30歳代の男性で高脂血症が疑われる(血清総コレステロール値220mg/dl以上)割合は20%にも達しているという。

 一方、上島教授によると8000人の循環器疾患患者を対象にした90年の調査では、ごはんを毎食食べている人は、1日1回の人とくらべて、とくに男性では有意に血糖値やコレステロール値が低いことが明らかになっている。
 「米食にするとおかずの影響もあって脂肪摂取が抑制されコレステロール値が上昇しにくく、血糖値も抑えられる。また、魚介類に含まれる不飽和脂肪酸は血栓予防に働く。健康長寿のため和食の伝統を守りたい」と強調した。

山城雄一郎
順天堂大小児科教授

米飯給食で子どもの脂肪摂取が改善

 順天堂大学小児科の山城雄一郎教授が小学生を対象にした最近の調査では、食事から摂取する総エネルギーの33.8%を脂肪が占めていた(適正値は25〜30%)。しかもこれは農村部と都市部に差がなく全国的な傾向で「子どもの食は憂慮すべき状態になりつつある」という。とくに給食ない日の脂肪摂取率が高く、それにともなって毎年、コレステロール値も上昇、最近では米国の子どもたちよりも高いとの指摘もされている。

 ただし、米飯給食の導入による改善効果も期待されることも明らかになってきた。東京都の子どもを対象にした調査では、80年代には学校給食での脂肪摂取量は35%程度だったが、米飯給食導入後は30%前後にまで低下しているという。

 「副食がバラエティの富みしかも低脂肪になったためだろう。学童期までに繰り返し経験した味覚は脳に刷り込まれ、その後の食行動に大きな影響を与える」などと学校給食の意義などを訴えた。

やせと肥満が共存するヤング世代

中村丁次
聖マリアンナ医大栄養部長

 聖マリアンナ医大の中村丁次栄養部長は、「ヤング世代には肥満とやせが共存している」と指摘。
 とくに20歳代の女性では、“やせ”とされるBMI(体格指数、体重(kg)÷身長(cm))18.5以下(理想は男女とも22)の人が47.1%も存在することを紹介、「ある種の低栄養状態の人がこれだけいるのは深刻」と話した。
 しかも問題なのは、20代女性では実際は「普通の体重」でありながら、そのうちの51.1%が「自分は太っている」と思っており、実際は「やせている」のに46.2%が「これで普通だ」と思っていること。理想体重を「やせと判定されるほど低く考えている」という。
 そのために不要なダイエットを行うなどの問題が生じ「そうなれば骨密度低下などの健康障害も懸念される」。

 またダイエットについては、ごはんは太る、との誤解も問題だ。医学的には、ごはん(糖質)では、多少、過食しても自己調整能によりエネルギー収支のバランスをとるよう働くが、一方、脂肪はそうした機能が働かず余分なエネルギーとなって肥満の原因になることがはっきりしているという。「穀類を中心とした食事をすれば肥満にならない。若い世代も健康を考えた食事をすることが大切だ」と中村部長は指摘した。



農協・関連企業名鑑 社団法人農協協会 農業協同組合新聞 トップページにもどる

農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
webmaster@jacom.or.jp