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「米の需給と価格安定の実現めざして
 

12年産米の販売について
”対策”を理解し、整然とした販売を

JA全農 米穀販売部 主食課長 松本一成

 12年産米の集荷が進展し、一方で緊急対策で需給改善のための対策が具体的に決まった。今後のJAグループの米販売はどう展開するのか、JA全農米穀販売部主食課の松本一成課長に語ってもらった。

「集荷」と「計画的な販売」は車の車輪

集荷状況は昨年より向上する見通し

 「12年緊急総合米対策」によって目指す方向としては、(1)需給改善、(2)需給バランスの回復、(3)適正な価格の形成、(4)稲作経営の安定、(5)需要の拡大、などがあげられます。
 このうちとくに「需給バランスの回復」と「適正な価格の形成」についてのJAグループ米穀事業の課題としては、「集荷」と「計画的な販売」がもっとも重要なことだと考えています。

 米の需給全体のバランスをとるためには、やはり一定の集荷量がなければ実現できません。たとえば、全体量を100とすると、そのうちの3割程度で全体需給をコントロールし安定供給しようと思ってもそれは無理なことです。
 一方、需給バランスが崩れた状況のなかでは計画的な販売ができないばかりか、集荷のほうもうまくいかないということになります。つまり、計画的な販売を円滑に行うことによって集荷も円滑に進むと考えられます。すなわち、集荷と計画的な販売は“車の両輪”だといえます。

 JAグループとしては、このような考え方のなかで、まず集荷に全力を注いできました。
 今年度は、優良事例などを盛り込んだ「集荷マニュアル」を作成し、JA段階で自ら課題を分析して集荷できるような取り組みを行い、また、経済連や全農の役割分担も明確にして、同一歩調をとって集荷にあたってきました。こうしたなかで、集荷数量は昨年を上回る見通しとなっています。現在、各産地でさらに集荷率を上げるなどの取り組みが続いています。

緊急総合米対策で「入り口」と「出口」の対策が確立

 そこで、今後はどのように計画的に販売していくかが課題となります。その際、米販売の仕組みは、生産者にとって適正な価格で流通することが前提条件であることを念頭に置くことが重要だと考えています。
 そのための基本的な枠組は、緊急総合米対策で打ち出されていると考えています。

 まず、「需給改善」のために、今回は13年産米の生産調整面積は96万3000haの継続に加えて5万haの緊急拡大と、さらに作況が100を超える見込みとなったときの対応策として需給調整水田の仕組みも加わりました。また、12年産の生産オーバー分の飼料用処理も実施されます。
 こうした対策による生産量の削減は、米の需給バランス回復のためのいわば「入り口」の対策であるといえます。
 一方、「出口」の対策として導入されたのが、「隔離効果の高い自主流通法人による一元的な調整保管」です。これは12米穀年度当初から実施され、24万tを調整保管することになりました。

需給と米価の回復は協同組合の理念に立って

入札結果が米価全体に反映される制度を

 今回のこの調整保管が従来と異なるのは、来年10月末に政府古米と差し換えるということです。これまでは調整保管分は翌年に持ち越して販売していましたが、今後は当年産、つまり来年でいえば13年産の需給に影響を与えるような処理はせず、調整保管分と差し換えた政府古米は加工用を中心に販売していく予定にしています。この方法は、11年産自主流通米の販売残についても同様で、13米穀年度において政府古米と交換して加工用などに販売することとしています。
 その後の需要変動によって販売残が発生した場合にも同様の仕組みで扱うので、主食用の需給に影響を与えません。

 このように「入り口」と「出口」の仕組みが確立したわけですから、今後はそれを前提にいかに計画的な販売を実施する仕組みを構築するかが課題となります。
 その際、検討課題のひとつとなるのが自主流通米の入札制度のあり方です。
 自主流通米入札制度は、平成2年から実施され、その仕組みについては値幅制限の撤廃など見直しが行われてきましたが、現在の仕組みがベストだということではありません。入札によって価格形成に市場原理を導入したわけですが、一年に一回しか収穫されない米の入札制度はどうあるべきかという点についてまだ議論があると思います。たとえば、入札回数についてもさまざま意見があります。

 また、最近の問題点としては、入札参加者が減少していることです。価格形成を入札で行うことを基本としたわけですから、すべての卸業者が参加するような制度になるよう考えることも必要だと思います。
 さらに値ごろ感を求めるためとして、現在は前場と後場を設定し、また、入札には二札制も認めていますが、これが値ごろ感を表わすことになっているのかどうかについても検討が必要です。
 今後は消費者からみても分かりやすい制度にするなどの観点も必要になると考えています。

 もうひとつの検討課題である相対取引については、契約の種類と実施方法を明確にし卸売業者が仕入れ態様に応じた契約をできるよう考えています。
 相対取引には、事前年間、期別、スポット取引の3種類があります。
 事前年間取引は、一定期間一定量の需要が見込まれる場合に契約を実施するものです。
 そのほかに、一定期間に数量と価格を決めて契約する特定契約も含まれます。この取引は年に2回契約を実施する予定です。
 期別取引は、一定のサイクルで販売を行うもので、2か月程度に1回実施する予定にしています。スポット取引については、急に需要の見込みが変わり、原料米を手当しなくてはならなくなったときに実施するものです。

 このように相対取引の性格を明確にしますが、やはり基本は入札で適正な価格形成が行われることが前提となるべきだと考えています。
 そのためには入札に卸売業者が積極的に参加し、適正な価格形成が行われ、その価格で相対取引を行うという形にすべきであり、期別取引については昨年から、入札取引の落札状況を勘案して契約を行う方法をとってきました。今後は、事前年間取引についてもこの考えを導入し、来年、早々から実施したいと考えています。いずれにしても入札取引で適正な価格形成が図られるよう、きちんとした入札が行われることが課題と考えています。今後、自主流通米価格形成センターでは、小委員会を設けて検討されていきますが、JAグループとしても研究会などを設置して意見を反映していくこととしています。

精米表示の厳守と米消費拡大運動の強化を

 このほか販売面の課題としては、来年4月から施行される改正JAS法による精米表示の問題があります。
 生産者が作った米がきちんと評価されるためには表示が守られなければなりません。このため国に対しても調査を実施するよう求めるなど取り組んでいく予定です。
 また、消費拡大も大きな課題です。当面は学校給食での米飯給食の一層の拡大や、若者に対してごはん食を普及することがテーマです。この点については、国や全中とともに啓蒙・普及活動をしていきます。

JAグループは同じ方向を向いて取り組みを

 今後、11月中には政府買い入れ数量や飼料用処理数量が決定する見込みですが、それと合わせて調整保管についても産地銘柄別に数量を確定していく予定です。その後、来年早々には政府と協議のうえ、10月末に政府特越米との差換えが実施できるよう準備を整える予定です。

 今後の米の販売については、入札での希望価格の慎重な対応やリベートの廃止なども課題となります。そこの問題は、そもそも過度な産地間競争は慎もうということです。JAグループは、生産者という弱い立場の人が協同で生産・販売をしようと作った組織です。現在、流通が複線化しましたが、だからこそ協同組合の理念にたちもどることが求められています。そうすることが生産者のメリットになると思います。
 価格は市場で決めることになっていますが、その価格で生産者が生活に困るということでは問題です。そのために今回の対策が打ち出されましたが、今こそ、JAグループが組織をあげて同じ方向を向いて、しっかりと取り組まないと需給と米価の回復はできないと考えています。



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