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「米の需給と価格安定の実現めざして

「組合長の責任」を強調 事故をなくす取り組みを
JA全農・CE協議会研修会から


 カントリーエレベーター(CE)は、現在39道府県において、700数十の施設が建てられ、米麦の集出荷・販売の拠点施設として、また地域農業活性化の拠点施設として、極めて重要な地位を占めている。しかし、転作面積の拡大もあり利用率が年々低下し、また、品質事故も毎年発生している。
 このため10月26〜27日、全農は全国農協カントリーエレベーター協議会と共催で、施設のより適切な管理、とりわけ利用率の向上と品質事故の防止を目的に、JAの経営者クラスを対象に東京で研修会を開いた。研修会には全国から56名が参加し、農林水産省の石田係長、全国稲作経営者会議・五月女会長をはじめ諸先生の講演に熱心に耳を傾けていた。

 ここでは、諸先生の講演内容は別の機会に譲るとして、香川県・JA香川県の三谷安夫常務理事(元JA坂出組合長)が2日目に“我がJAにおけるCEの運営管理と事故防止”と題して講演した内容(要旨)を紹介する。

香川県のCE普及率の高い理由 ‐農家支援を第一義に

JA香川県
三谷安夫常務

 CEは全国39道府県において745施設が設置されているが、その普及率はまだ12.4%に過ぎない。そのなかで、福井・岐阜・滋賀・香川・福岡・佐賀の6県が30%以上のCE普及率になっている。なかでも、福井や香川は40%にもなっている。
 香川県は、水田面積と米の生産量は全国の1/100程度の小さい県である。その小さな県でCEは22基、処理能力は65,000tを数える。JAの取り扱い総量の80%が処理されている。なぜ、こんな小さな県でCEが普及しているのだろう。

 その理由は2つある。1つは、かつて香川県は農業機械の普及率も全国一だった時代があった。その根底にあるのはJAが農家にどういう支援ができるかを常に考えていることが、CEの普及率が高いことに現れている。最近では、大型の共同育稲施設もこの観点で建設されているそうだ。
 もう1つは、地域の特色を考えたCEの設置である。気候が温暖なことで、米につづいて、みかん、レタスや人参などの野菜の収穫が控えている。したがって農家は、米は収穫後、即CEに持ち込めば米の作業は完了となる訳である。その後は、みかんや野菜の収穫作業に専念できるという風に、CEは農家にとって極めて便利な存在になっており、まさにCEが地域農業を支え、地域営農と一体的な役割を担っている。
 また、坂出地区や仲多度地区のように幾つかのJAが共同でCEを利用しているのも特色の1つである。

2基を専任オペレーター6名で運転 ‐組合長の陣頭指揮で20数年間無事故

 坂出共同CEが設置されたのは、昭和51年度に1号基3,000t、昭和55年度に2号基3,000tを建設し、今日に至っている。
 この間、麦の荷受けを含めて、一度も事故を起こしていない。それを支えているオペレーターの役割は見逃がせない。当CEのオペレーターは、所長以下6名、他に1名の女性職員が在籍している。所長はJAから出向しているが、他の5名は、オペレーターとして採用されたCE専任職員である。オペレーター6人全員が「乾燥設備作業主任者」「酸素欠乏危険作業主任者」の資格をもち、乾燥、調製、保管管理に精通した経験豊富な技術集団である。

 CEがJA直営の場合、オペレーターは通常JA職員のケースが多いが、人事異動等で仕事を覚えたころ替わる例が多く、CE事故の事例のなかで、オペレーターの知識・技術が未熟、あるいは引継ぎが不十分なために事故を起こしている例がみられるなかで、当CEの専任体制はこうした欠点を補っている。

組合長はCEの運営に責任をもつ人 ‐職員と膝づめで話合う

 もう1つここのCEで特筆すべきは、組合長のCEへの関心が極めて強いことである。三谷組合長は、全国CE協議会の役員、農倉基金のCE事故査定委員をしており、CE事故の恐さを骨の髄まで承知している。ときどきCE現場に出向き職員と膝づめで話し合うという。「組合長はCEをつくる人、そして、その後の運営にも責任をもつという、当たり前のことを当たり前に実践している実行の人である。

荷受能力の増強で生産者に便宣を ‐待ち時間をなくす

 CEの利用上の問題点の1つに、荷受けの待ち時間が長いことがある。このCEでも従来3時間待ちはざらで、笑い話だが、屋台がでてもおかしくない状況であったとのこと。そこで、組合長は平成6年に荷受能力の増強をはかるため、2億円をかけて施設の改修を行い、今では待ち時間はなくなり、農家から非常に喜ばれている。また、待ち時間の解消は、ほ場での滞留も少なくなり、事故防止の上で大きく役立っている。

 当CEの利用率は、他のJAと同様4割にも及ぶ転作のため苦戦しているが、麦作の維持拡大を懸命に推進し、麦だけでサイロを現在は4本(1本300t)、今年は5、6本使用するまでになっている。また、近隣の2JAにもCE利用を呼びかけ、利用率75%以上の確保に向けて陣頭指揮をとっている。

CEの都合を農家にきちんと伝える ‐事故防止のキー

 CEでの荷受けを整然と行う、計画的な荷受けが事故防止の基本である。ここでは、このため、早・中・晩品種の組み合わせと、毎日色違いの荷受証(1枚1反分)を発行して計画的荷受を実行している。例えば、今日は赤の荷受証なのに前日発行した黄色の荷受証を持参したものは絶対受け入れないことにしている。
 「CEは米、籾の処理というお金がついて回る、農家の都合を聞いたために事故が起きても農家はお金を負担してくれない」「したがって、ことCEについてはCEの都合を優先させる。CEの都合を農家にきちんと伝える、断るときはきちんと断る」ことが大事と組合長は力説する。

 先年、香川県のあるCEで1億数千万円にもなる品質事故が起きた。組合長は香川県のCE協議会の会長として、苦労しただけに、事故防止に対する認識は人一倍強い。また、本来のCEの機能である農家に対する便宜や支援をいかに図るか日夜努力している姿がその話の端々にほとばしっていた。

 最後に組合長は、今後の地域農業を考えた場合、高齢化の進行、後継者不足等に対応して、「農作業受託集団の育成」が緊急の課題、CEとこれらの組織とが連携して地域農業・農地を守り、支えて行く道を求めていきたいと結んだ。

(文責・農倉基金・古村)


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