農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 元気な地域づくりとJAバンクの役割

一体性強化で信頼感高める JAバンク栃木信連の統合に見る
現地ルポ JAうつのみや、農林中金宇都宮支店に聞く

 信連と農林中金との統合については、宮城、岡山、栃木、秋田、長崎、山形の6県で一部事業譲渡方式による統合が完了しており、さらに3県で16年度中の統合に向けた準備が進む。こうしたなか、昨年5月に統合した栃木県における取り組みをJAうつのみや、農林中金宇都宮支店に聞いた。

統合の最大のメリットは一体性強化による組合員・利用者からの信頼性獲得

 統合によりJAの現場ではどういう変化があったのかJAうつのみやで聞いた。
同JA金融部の高浜三郎部長は「昨年5月以後は、農林中金宇都宮支店の職員が足まめに助言や指導にきてくれます。連日という週もあり、住宅ローンの休日相談会なども支援してくれます」「事業計画を策定する手法にしても、農中職員の指導でスタイルが変わってきました」と語り、精力的な農中職員のJA訪問やリスク管理・事業運営等の突っ込んだ助言を評価する。統合の効果は幅広く事業運営の改善などにも広がっているようだ。
 「15年度は事業計画を作るに当たって職員の個人目標を積み上げた。下からのボトムアップで目標達成に各人が責任を持つ狙いだ。それまでは上からのトップダウンで目標の総額を決め、それを各事業にあん分する手法だった。この改善は農中職員の提起から始まった」。
 こうした例を挙げながら、高浜部長は「農中と信連の統合メリットは、目に見えない、数字に表れない内容が多いのではないか」「統合のメリットとしては、農中・信連・JAの機能重複が排除されたこと、農中の直接指導によるJAの業務能力向上、リスク管理のレベルアップなどが挙げられるが、何よりも大きなメリットはJAバンクの一体性強化によって組合員・利用者の信頼感が増し、事業推進の追い風となっていることではないか」と指摘する。今後はさらに渉外活動に対する理解も進むと統合の効果に期待する。

◆JAバンク中期戦略の実践に向けて 貸出金増強で特別運動
  住宅ローン休日相談会を積極実施

 こうした中でJAうつのみやでは、これまで貯金に比べて取り組みが弱かった貸出の強化に乗り出すなどJAバンク中期戦略の実践体制を固めている。
 同JAの金融部職員174人のうち渉外担当者は40人だが、これまで渉外担当者個人には貸出の年間推進目標がなかったこともあり、JAの貯貸率は27%台までジリジリと低下していた。このため15年度からは、新たに貸出実行件数・実行金額・相談件数などを個人の目標に加えることで貸出の伸長に力を入れた。下半期には重点推進商品ごとに軽減金利を適用することで利用者にアピールし、貸出金を増やす特別運動を展開した。
 また、住宅ローン休日相談会を上半期3回、下半期5回、数支所合同で開催したところ、相談者数約60人、実行件数約30件、実行金額約2億8000万円、見込件数約20件と好調な結果となった。
 こうした取り組みにより、JA全体の15年度末(2月末決算)の貸出金は本所で大口の償還があったこともあり前年比若干減少したものの、支所合計で見ると前年比約3%の伸びとなった。住宅ローンの伸びをてこに確かな手応えを感じていることから、「新年度はこの状況から飛躍したい」と高浜部長は意気込む。
 一方、同時期の貯金残高は約2,572億円で前年比2.1%の伸びを実現、自己資本比率も14.63%と高い水準を確保した。
 顧客基盤の拡大に向けた取組としては、年金友の会の会員1万2,000人を対象としたゲートボール、グランドゴルフ、健康管理講習会、研修旅行など活発な活動を展開している。
 なお、店舗再構築については、赤字の店舗はないものの、労働生産性および収益性の面から問題無しとはせず、今後どういう方向を模索していくかが課題だ。

JAうつのみや概況
JAうつのみや(栃木県宇都宮市)▽正組合員戸数1万2079戸▽伊澤茂組合長▽職員数668人▽主要農産物はコメ、イチゴ、トマトなど▽販売高178億円(2月末決算)▽購買供給高90億円▽長期共済保有高1兆430億7153万円。

 

県内JAと一丸となって取り組む

 一方、統合後の県域運営についてどう考えているか、農林中金宇都宮支店に聞いた。
同支店では、「JAバンク栃木信連と農林中金が統合して間もなく1年になりますが、県内10JAを毎日のように精力的に回っています。JAバンク重点実践事項など、足元のJAの取り組みを支援することが支店の主な取り組みですが、長期的な地域戦略をJAの皆さんを一緒に考えることも重要です。要するに『一緒にやっていきましょう』という趣旨です」と、JAグループの一体的事業運営の確立に向けた活動の一環であり、一緒にやることで一体感を強化する狙いを強調する。
 今後の方向については「栃木県の場合、JAそれぞれの規模が大きく、自己資本比率も高い。そういった中で、現在の事業内容をキープしながら全体として一層のレベルアップが実現できるようお手伝いさせていただきたい」「JAバンク中期戦略の最重点である住宅ローン推進については、県内JAと一丸となって取り組みたい。農業金融では各JAの農業融資相談員を中心にサポートしていきます」と語る。

取材を終えて
 今回の取材では、「将来を見据えた統合の決断」「JAバンクの一体性強化による組合員・利用者の信頼感獲得」「県内JAと一丸となった取り組み」等の表現にあらわされるように、JA・信連・農中のそれぞれが統合によるメリットを享受すべく取り組んでいる姿が印象的だった。今後のJAバンク栃木のさらなる発展に期待したい。

(2004.4.13)


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