農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 『家の光』創刊80周年

80年の歴史
−『家の光』と(社)家の光協会−

『家の光』創刊のことば(1925年5月号)
共同心の泉  志村源太郎(産業組合中央会会頭:当時)

 力の弱い一人一人が、とても出来ない仕事でも、二人が一人となりて、しつくり組合へば、案外たやすく成し遂げられる。故にわれ等の理想は、同心協力の精神であり、共存同榮の社曾である。
 産業組合は此の理想を日常の生活に實現(じつげん)せんとするものであるから、之に最も大切なものは組合員の共同精神である。この共同精神を養ふところは、實に組合員の家庭そのものである。親も子も、夫も妻も、老も若きも、互ひに理解し、互に勵(はげ)まし、互に慰め、心から協力和合し、一家を擧げて一様に愉快で幸福な家庭に於いて、はじめて眞の共同精神が養はれる。家庭は即ち共同心の泉であって、組合員の力強い共同精神は常に健全なる家庭から流れ出る。其の清い精神を汲み取って産業組合を培養すれば、必ずや、美しい花が咲き、實(み)がなるのである。
 本誌の目的は、この共同心の泉を家庭に於いて涵養(かんよう)せんとするに存する。

 『家の光』は大正14年(1925)に産業組合法公布25周年記念事業として5月に創刊された。当時は、都会では労働争議が農村では小作争議や娘の身売り、口減らしなどが続出していた時期。こうした状況を改善するためには農民が産業組合に結集して自らを守ることであり、その力は組合員の『協同』によって生まれるとして、「その協同の精神を養うの場は家庭にある」と当時の志村源太郎産業組合会頭は組合員に訴え、それを広く浸透させるために『家の光』が創刊された。別掲の志村源太郎の言葉は創刊号の巻頭言である。
 創刊号は2万5000部。編集内容は趣味と実益に富み、家庭でおもしろく読めるものという方針どおり創刊号から「おいしい漬け物の秘訣」、「初夏の料理」など実用的な記事が掲載されている。一方で記者による「農村振興はまず婦人農会から」といった現在でもテーマとなっている農村女性の力に期待する記事が掲載されている。
 『家の光』を活用して農村の暮らしを豊かにするという取り組みは早くから始まり、昭和17年に第1回家の光体験発表会が開催されている。また、この年、発行部数が150万部を突破した。
 戦後、(社)家の光協会として改称して事業を展開。
 出版・普及とともに教育文化活動が重要な時代を迎える。 
 その前年の昭和22年5月には『地上』が創刊される。
 創刊号には宮部一郎副会長(当時)が「およそ青年は、いかなる民族においても、いかなる時代にあっても、その希望の源泉であり至宝」との言葉を寄せている。そして戦後の混乱に秩序を与え、虚脱に正気を与える中堅農村青年の役割を高く評価するとして、『地上』を青年層の伴侶、盟友だと位置づけている。創刊号では座談会「農村協同化への進路−農業協同組合はいかにつくられるべきか」が掲載され、当時の近藤康男東大教授を中心に今後の農業のあり方や検討中の農協法について議論している。
 JAの教育文化活動を支援、顕彰する「家の光文化賞」は昭和24年に創刊25周年記念事業として創設された。
 また、全国家の光記事活用体験発表大会は昭和31年に開催され、翌年から現在の「全国家の光大会」がスタート。全国から農村女性の記事活用体験やJA職員による普及体験などが発表される現在の大会へと引き継がれている。
 一方、農村の次世代を担う子どもたちを対象にした現在の『ちゃぐりん』は平成5年に『こどもの光』から改称した。
 子どもを対象にした読み物は昭和6年から「子ども家の光」コーナーとして出発。「曽我兄弟」、「一五少年物語」などの読み物が掲載された。その後、一冊の『こどもの光』として創刊されたのは昭和39年。石森章太郎や藤子不二雄の連載漫画も掲載された。現在は『ちゃぐりん』を活用した小学生対象のアグリスクールなどを実施し、農業、食などの教育、文化の継承などに取り組んでいるJAも出てきた。
 JAの大型化、広域化と組合員の多様化が進むなか、JA教育文化活動がJAの求心力を高めるものとして期待されている。そのバックアップをする『家の光』。
 家の光文化賞審査委員長の川野重任東大名誉教授は創刊80周年に寄せて(「家の光ニュース・臨時増刊」)で、JAにとって生活協同活動が重要になっているとして『家の光』にその「推進役と導標としての重要性」を期待している。

『家の光』80年の歩み

1925(大正14)年…産業組合中央会より『家の光』創刊。5月号、菊判、定価20銭。
1928(昭和3)年……布旗,紙旗、手帳を家の光愛読者大会に配布を開始。府県家の光大会を奨励。
1930年…臨時増刊『人の一生と産業組合』を発行。
1931年…家の光通信員制度を設ける。「子供家の光」欄を新設。
1934年 …『家の光』誌上に賀川豊彦「乳と密の流るゝ郷」の連載開始。
1935年 …第一回全国家の光婦人大会を長野で開催。『家の光』都市版発行。『家の光』100万部を突破。
1938年…「読書会の開き方」等を作成、配布。
1942年…第1回全国家の光体験発表会を開催。『家の光』150万部を突破。
1944年…社団法人全国農業会家の光協会発足。『家の光』150万部を突破。
1945(昭和20)年…紙不足で『家の光』合併号発行。
1946年…第1回全国農村読書調査実施。
1947年…『家の光文化ニュース』(後の『家の光二ユース』)を創刊。総合雑誌『地上』を創刊、定価12円。
1948年…社団法人家の光協会に改称。懸賞入選「農業協同組合歌」発表。
1949年…創刊25年記念事業として家の光文化賞を制定。
1950年…ミス・クミアイ誌上コンクール実施。
1952年…『家の光』北海道版を発行(その後、計六地区版を発行)。『こどもの光』を別冊付録とする。
1954年…『家の光家計簿』を発行。
1955年…世界の農村児童との交換図画募集。家の光作業衣の制定・発表。
1956(昭和31)年…全国家の光記事活用体験発表大会を開催。
1957年…第1回家の光主任大会(後の全国家の光大会)開催。『家の光』表紙モデル「ミス・クミアイ」登場。
1960年…創刊35周年記念「家の光料理教室」の開催。
1961年…『家の光』発行部数180万部を突破。
1962年…家の光の図書の刊行開始。『家の光』をA5からB5判に変更。
1963年…『家の光家計簿』を12月号付録に。
1964年…『こどもの光』を創刊(8月号)29万部。
1973年…ICAに加盟。海外通信員の設置。
1976年…創刊50周年記念『土とふるさとの文学全集』の発刊。
1984年…『家の光』をAB判に変更。JA・家の光料理教室事業を開始。
1986年…創刊60周年記念『新版・協同組合事典』を刊行
1988年…『家の光』生活版を廃止し、地区版を7版に再編成。
1993(平成5)年…『こどもの光』誌名を『ちやぐりん』に変更。第一回世界こども図画コンテストの実施。地区別農協教育文化活動研究集会の開催。
1994年…家の光家計クリエイターの募集開始。『地上』をB5判にし誌面を大刷新。
1995年…創刊70周年の5月号より『家の光』の誌面を刷新。
1996年…『地上』創刊50年特別記念号を発行。
2000年…JAトップ向け情報冊子『JA教育文化』を創刊。
2002年…家庭菜園雑誌『やさい畑』(季刊)を創刊。
2004年…『家の光』創刊80年を機に、12月号より誌面をA4版にして大幅刷新。

(2004.11.1)


社団法人 農協協会
 
〒102-0071 東京都千代田区富士見1-7-5 共済ビル Tel. 03-3261-0051 Fax. 03-3261-9778 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。