農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 落ち穂
「ガソリン国会」

 「独走福士30キロ暗転」、「横綱決戦白鵬V」(新聞の見出し)と1月最後の日曜日は、劇的な場面に出会った。何度も何度も転びながらも、笑みを浮かべゴールを目指すマラソンの福士選手。出身は青森だという。「じょっぱり」精神健在。また、モンゴル出身の両横綱の決戦は、久しぶりにみる力相撲。これは日本人には消えてしまったハングリー精神の発露と言っては失礼か。
 そして週明け、今度は政治の世界で与野党が激突。ガソリン税の暫定税率をめぐる与野党の攻防だ。与党は「つなぎ法案」なるものを出し、「60日ルール」による乗り切りを図ったが、衆参両院議長のあっせんであっさり収束。どうも、こっちの世界は大相撲横綱決戦のような力強さがみられない。これは両党とも来る総選挙を意識した、単なる国民受け、旧態依然の道路利権確保といううわべの議論に終始し、芯からの国造りの大きな青写真や、押し寄せる石油危機や食糧問題に対する危機意識のないところにあるように思う。
 とりわけ、政府・与党の最高責任者である首相の態度は不可解。「つなぎ法案」は政府案ならず議員立法という奇策。この議員立法について、首相はどう考えるのかという、野党議員の質問に対し、知らぬ存ぜぬで突っぱね通す。たしかに、議員立法は政府提出の法案ではない。だから、政府の責任者である首相が考えを述べる責任はないと言いたいのだろうが、先には薬害肝炎患者の問題で、自民党総裁として議員立法で救済したのに、今度は総裁ではなく、首相の立場で知らぬ存ぜぬで済むはずがない。リーダーシップの無さを自ら露呈して憚るところがないとは、恥ずかしい首相を頂いたものだ。
 このガソリン、われわれ都会に住む者はいざ知らず、地方に住む人にとっては、路線バスやローカル線が廃止され、ガソリン(車?)は生活必需品。それに、農産物をつくる人、魚をとる人、それを運ぶ人も、こう油が上がっては悲鳴を上げよう。それが「ガソリンを安くすると、環境への取り組み姿勢が問われる」の言は、まったくこの国の政治家はどこの国の政治家と言いたくなる。
 ガソリンは上がる。飼料は上がる。「安い、安全、うまい」はずの中国製冷凍ギョウザは農薬汚染。この国は道路どころではない。そのうち、食べるものが無くなる。福田首相、ガソリンを安くすることが叶わぬのなら、暫定税率分(2兆6千億円)を環境税や自給率向上税に組み替えて、森や田んぼを守る、食卓を守る、と宣言してはどうですか。(駄々っ子)

(2008.2.13)

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