新しく発足しようとしている戸別所得補償制度は、その対象に小規模農家を加えた。10a以上の販売農家に限定した、という不十分さはあるが、このことは高く評価してよい。
しかし、構造改革派からは非効率な小規模農家を温存するものだ、とう批判が絶えない。選挙目当てのバラマキだ、という低次元の批判もある。だが、こうした批判に、ためらってはならない。
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先ず第1に、それには国民の支持がある。これまでのように、大規模農家だけを選別して政治の支援を集中する、という選別政策を多くの国民は否定している。
第2に、農政の目的が変わった。これまでは、効率の追求が農政の目的だったが、一昨年の世界規模での食糧危機の経験を経て、これからは食糧自給率の向上が最大の目的になった。
戸別所得補償制度の目的も自給率の向上である。だから、この目的に貢献する多くの農家を補償の対象にしたのである。もっと広げて、10a以下の自給農家も対象にすべきだったろう。自給農家も自給率の向上に貢献しているからである。
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第3に、構造改革派は競争力の強化が農政の最重要な目的だというが、仮にそうだとして、小規模農家の競争力は弱いのだろうか。そうでない。ここ数年の米価下落で困窮しているのは、小規模農家ではなく、大規模農家である。このことは、小規模農家の方が競争力が強いことを、何よりも雄弁に物語っている。
競争力とは、いうまでもなく市場競争力である。だから机の上で計算すれば分かるというものではなく、市場で最終的に判断すべきものである。市場は小規模農家に軍配を上げたのである。
そして最後に、兼業者や高齢者を農業から排除することは、国民経済にとって決して望ましいことではない。兼業者が余暇に農業を行い、働く意欲も能力もある高齢者が農業を行って、食糧自給率の向上に貢献することは、農政の目的にかなうことでもあるし、国民経済にとっても望ましいことである。
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だが、いまの農業構造に改革すべき点がない訳ではない。小規模農家の機械が非効率的に使われていることは明らかである。改革すべきことは、小規模農家の排除ではなく、小規模農家が主力になって組織した集落営農などの協同活動への支援の強化である。
(前回 友愛の鳩山農政と信念の小沢農政)
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