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2017年に1兆円めざす  農水省が農林水産物・食品の輸出戦略で検討会

 農水省は農林水産物・食品の輸出額を2017年までに1兆円規模に伸ばそうと「農林水産物・食品輸出戦略検討会」を立ち上げ、10月7日に1回目の会合を開いた。

◆07年ピークに輸出額落ち込み

 農林水産物や食品の輸出について、政府は「21世紀新農政 2006」で09年に輸出額6000億円の目標を掲げ、さらに同年の第165回国会の安倍晋三首相(当時)は13年までに1兆円をめざすとしていた。
 しかし、07年の5160億円をピークに08年のリーマン・ショックや円高の影響で落ち込み、10年には前年比10.5%増の4920億円と回復したが、今年は東日本大震災と福島第一原発事故の影響で再び減少する見込みだ。
 実際に4月から7月までの輸出実績は1407億円で前年同期比10.3%減。輸出の7割以上を占めるアジアでは、中国が86億円で同45.1%減と大きく落ち込むなど全体で同12.6%減。欧州ではロシア向けが6割ほど減らすなど13.3%減となっている。
 こうした経済や社会情勢の混乱を受けて、新たに17年に輸出額1兆円という目標を決め、それに向けて戦略を立て直そうと検討会を立ち上げた。

◆原発事故を早期解決し輸出拡大

あいさつする筒井副大臣 検討会冒頭で筒井信隆農林水産副大臣は「少子高齢化がすすみ国内消費も落ち込む中、先進国としては極めて低い一次産品の輸出を、なんとしても大幅に伸ばしたい」とあいさつ。福島第一原発事故により日本産食品の安全性への信頼が揺らいでいるとの認識を示し、「原発事故を早急に解決して、輸出拡大をめざしたい」と述べた。
 座長の茂木友三郎キッコーマン取締役名誉会長(農林水産物等輸出促進全国協議会会長)は、「日本の食品はおいしくて健康にいいと評判だ」として、1兆円達成に期待を寄せた。
 この日の討議では輸出戦略というよりも、放射性物質の検査体制や各国の輸出規制、風評被害など原発事故とその影響にかかる議論が多かった。「諸外国が納得するような検査基準や体制の構築」、「放射性物質検査への継続的な支援」、「安全性やイメージ回復のPR」などを求める意見が出た。
 ほかには、輸出を伸ばしている各国と比較し「農水省ではなく、首相自らが先導して日本の食文化を外国へ売り込む必要がある」など国としての支援が不十分であるとか、「海外では高品質であれば価格差を許容する土壌がある」として価格が高いから売れないなどの認識を改めるべきだ、などの意見も。
 検討会は年内で最大5回(予備日1回含む)の会合を開き、年内に提言をまとめる予定。

(写真)
あいさつする筒井副大臣

委員は次の10人(五十音順)。
▽安藤エリザベス(料理教室主宰、YOKOSO!JAPAN大使)
▽飯田永介((株)岡永代表取締役社長)
▽太田一民((社)青森県りんご輸出協会理事長)
▽緒方英雄((株)オおおやま夢工房取締役総支配人)
▽寺島実郎((財)日本総合研究所理事長)
▽松浦晃一郎((株)ぐるなび総研理事)
▽三國清三(フレンチシェフ)
▽宮村正夫((株)ノースコープぎょれん代表取締役)
▽茂木友三郎(キッコーマン(株)取締役名誉会長=座長)
▽S.C.ヒッチマン(米国チェリーマーケティング協会日本代表)

(2011.10.12)