JR九州東証上場とTPP2016年10月27日
◆TPPと国有企業
TPPで初めて登場した章として、25章「規制の整合性」や17章「国有企業及び指定独占企業」などがある。
国有企業に関する章の特徴は、地方・中央の政府により支配されている(その定義は省略)企業も、(1)基本的には商業ベ-スでの経営をすること(商業的考慮)、(2)政府による特別な支援策の禁止(非商業的援助)、また(3)非商業的援助によりTPP参加国に悪影響を与えてはならない(悪影響)、そして(4)国有企業が事業活動を行うに当たっては他のTPP参加国の企業を自国や他の国の企業と同等に扱う(無差別待遇)という点にある。これでは通常の企業と同じではないか、と思うのも当たるとも遠からず、だ。
◆JRは民営化されていたのでは?
TPPの規定では、規制の対象となる国有企業は「発効後6ヶ月以内に各国に通報」することとなっている。しかし政府は16年3月29日、緒方衆議院議員の質問主意書への答弁書で11社の規制対象の国有企業名を明らかにした。そこには、日本郵便、かんぽ生命、ゆうちょ銀行などと並んで、JR北海道、JR四国、JR貨物、そして東証上場前のJR九州も載っている。
赤字の続いていたJR北海道・JR四国・JT九州・JR貨物は、他の本州中央部のJRが民営化されて以降も、政府が100%支配する(独法)鉄道建設・運輸施設整備支援機構により株式の100%を所有された"国有企業"だ。そして機構からその特例業務勘定を通じて経営支援を受けている。
赤字経営のJRは過疎地を走る不採算路線を抱え、そのことは、地域住民の重要な足として基礎的な社会インフラとしての機能を発揮しているのだが、国からは民営化を目指して経営の多角化の一方赤字路線の廃止や駅の無人化を求められている。
その中でJR九州は,豪華寝台列車「七つ星in九州」で有名だが、不動産・小売りなど非鉄道事業が売り上げの過半を占めるという点で異色とも言える。04年に黒字転換し、16年4月1日施行のJR会社法改正法により法令上は民間会社となり、今週10月25日東証上場を果たし、総株式を一括売却、晴れて?民間の株式公開企業となった。
◆暮らしや地域に欠かせない基礎的な社会インフラも規制される
日本だけではないが、鉄道、郵便事業、病院、農畜産業振興機構のような農業分野に欠かせない事業体など、更には金融分野の事業体など、国有企業と思われる事業体は多様な分野に広がっている。
暮らしや地域に欠かせない事業が商業ベ-スに従うよう規制されれば、郵便のユニバ-サルサ-ビス、過疎地の鉄道路線、病院などがその存続のため経営支援が必要とされる場合も規制され、赤字病院の閉鎖、過疎地の郵便局の閉鎖、赤字路線の廃止などが生じかねない。
◆TPPによる規制の先にはサ-ビスの低下、そして民営化が待つ
筆者は必ずしも国有企業を是とし、民営化を否とする立場ではない。しかしTPPによって必要な支援を規制されれば、赤字部門・赤字路線の廃止や事業多角化により黒字確保に取り組むのが自然であり、その論理的帰結は、くらしや地域の基礎的インフラの役割を忘れた民営化路線への転換とならざるを得ない。
◆政府は公共事業体や独立行政法人は規制されないと言うが...
政府は、TPPでは「参加国の貿易又は投資に影響を及ぼす事業体」に適用されるので国内向けの事業体には適用されない、利益を求めない事業体には適用されない、とQ&Aで説明している。しかし"国内向けの事業"でも"影響を及ぼす"ことはある。また、業務報告書や財務諸表を分析すると、"利益志向"ではなくとも実体として利益を蓄積することになっている事例は相当にある。TPP政府対策本部とのやりとりでも、他国から日本のリストに対して疑義が出される可能性を否定しなかった。
また、日本はゼロだが、他の11ヶ国は73ペ-ジにも及ぶ規制対象からの例外事例を確保している。基礎的な社会インフラを確保する上でも、大きな問題であると指摘したい。おまけにその部分は日本語への翻訳もされていない。
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