花粉を運ぶ動物を守る10の政策を提言 森林総研2016年12月1日
国立研究開発法人森林総合研究所(森林総研)は英国イーストアングリア大学などと共同で花粉を運ぶ動物を守るための10の政策を11月28日に提言した。この成果は来月メキシコで開催する生物多様性条約締結国会議で活用される
農作物や野生植物には花粉を運ぶ動物(送粉者)が必要。この動物としてミツバチなどの昆虫や鳥、コウモリなどが知られている。
2016年2月の報告書で、送粉者による経済効果は年間最大5770億米ドルに及ぶと試算されたが、北西ヨーロッパと北アメリカで送粉者が急激に減少しており、日本など他の地域での調査が必要だと指摘された。
アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアの研究者と共同で、送粉者や送粉サービスを守るために各国政府が配慮すべき10の政策を提言した。
提言内容は次の通り。
送粉者を守り、送粉サービスを維持するために各国政府が行うべき10の農林業および環境政策を作成しました。この中で、森林総合研究所は計画の立案と執筆を分担しました。
1. 農薬の使用基準の向上
送粉者に対する農薬のリスク評価を行い、その結果に基づいて農薬の使用基準を制定すること、すでに制定されている場合には規制を強化することが必要です。
2. 総合的病害虫管理(IPM)の推進
病害虫の防除において、経済性を考慮しつつ、農薬だけでなく利用可能な様々な技術を、適切な手段で総合的に講じる総合的病害虫管理(IPM)が必要です。
3. 遺伝子組み換え植物のリスク評価
送粉者に対する遺伝子組み換え植物のリスク評価において、遺伝子組み換え植物を栽培することによる間接的な影響、および亜致死(死に至らしめる手前)的な影響を考慮することが必要です。
4. 人工飼育送粉者の移動の規制
マルハナバチなどの人工飼育種が、本来の生息地外で利用された時、生息地外の生態系に悪影響を与える場合があります。そのため、人工飼育種の生息地外利用に注意することが必要です。
5. 送粉者を守る農林業生産者を助けるための補償
送粉者を守るために、農薬の代わりに天敵を利用した害虫防除を行った場合、生産能力が低下することがあります。こうした場合の農林業生産者への補償が必要です。
6. 農業における送粉サービスの重要性の認識
多くの農作物の種子や果実の生産は、送粉サービスに依存していることを認識することが必要です。
7. 多様な生産システムのサポート
大面積に単一の農林産物を生産するような画一的な栽培方法だけではなく、多様な生産システムが必要です。
8. 送粉者の生息地の保全と再生
森林等の自然植生は、送粉者に食料や生息場所を提供します。そのため送粉サービスを維持するには、自然植生を農地や都市の周辺に確保し、送粉者の生息場所となるように管理する必要があります。
9. 送粉者と送粉サービスのモニタリング
送粉者や送粉サービスに関するデータが不足している国、地域では、長期的なモニタリングシステムの開発が必要です。
10. 研究資金の提供
上記7や8と農林産物の生産性に関わる調査には資金が必要です。
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