「土づくりで多収と病害抑制」テーマに研究会開催 土づくり肥料推進協議会2017年11月27日
土づくり肥料推進協議会は平成29年10月31日、千代田区北の丸公園の科学技術館サイエンスホールにおいて「平成29年度土づくり研究会」を開催した。
同協議会は、「土づくり」を農業生産の基本に位置づけ、行政および農業団体が推進する「土づくり運動」に協力するとともに、土づくり肥料の効果的な施用技術の普及を目的に設立された団体だ。
昭和59年に公布された地力増進法「健康な土づくり運動」に対応して同協議会は設置され、土壌管理の省略化や生産法の低下傾向などを受け、「作物・作業の最適環境づくり」、「調和のとれた土づくり」、「作土と有効土層の拡大」を柱とし、土壌診断をベースに深耕や有機物の施用と土づくり肥料などの普及推進を行ってきた。
10月31日、科学技術館サイエンスホールで開催された「平成29年度土づくり研究会」では、『土づくりを効果的に行うための議論をし、土づくりで多収と病害抑制を実現しよう』をメインテーマに、次の講演が行われた。
○「水稲の多収栽培を持続するための土づくり」:
秋田県立大学・金田吉弘教授
○「土づくりによる土壌病害の抑制」:
農研機構東北農業研究センター・永坂厚主任研究員
○「無機・有機資材を活用した土づくり」:
農研機構西日本農業研究センター・石岡巌主任研究員。
金田教授は、講演のまとめとして、「土づくりを中止しても、地力は急激には低下しない。が一度消耗した地力は、容易には回復できない。地力は1回の土づくりにより向上するものではない」とし、「有機物や土づくり肥料にコストをかけることで、経営的にどの程度の効果が得られるのか、農家とともに評価することが必要」と語った。
また「土づくりは、単に土壌改良資材や土づくり肥料の施用に限定されたものではなく、根圏環境改善を目的とした機械作業も含む総合管理」が肝要だと提案した。
永坂主任研究員は、土壌病害の防除対策として、品種抵抗性の利用があるが、「各種土壌病害に対応した抵抗性品種がすべて揃っているわけではなく、品種抵抗性の利用は、防除対策として極めて有効ではあるが、それを侵す菌系の登場で状況は一変する」と語った。
また、「土壌消毒のための薬剤や太陽熱利用などだけでは、十分な防除効果が得られない場合がある」と述べ、「耐病性品種の利用、土壌消毒などを組み合わせた新たな防除技術が必要」と指摘した。
またアブラナ科野菜の根こぶ病や、ホウレンソウ萎凋病、レタス根腐病などの改善には、土壌pHの矯正が必要と述べ、それには転炉スラグの利用が有効であると説明した。
転炉スラグとは、製鉄の過程で発生する副産物であり、年間約1千万トン産出される。原料は全て天然物(鉄鉱石・石灰岩・コークス)で、1600℃の高温で生成されるので、カドミウムやヒ素は全く含まれていない。
石岡主任研究員は講演の締めくくりに、どのようにして土づくりを進めるか、について次のように語った。
「農家の形態が、昔と比較すると多様化しているが、守りに回っている農家より、攻めに出ている農家・農業法人は、新しい技術の取り入れや土壌分析などについても、積極的で、土づくりに対する理解も深め易い」とし、多忙なことを想定して、省力的・効率的な手段を提供する必要があると述べた。
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