米化学大手ダウ・ケミカルの日本法人、ダウ・ケミカル日本(株)は10月12日、三菱商事(株)の農薬販売子会社である菱商農材(株)に資本参加すると発表した。これにより、同社は農薬事業において懸案であった直接販売体制を本格的に構築することになる。
具体的には、明年1月に菱商農材(株)が実施する第三者割当増資分を全額ダウ・ケミカル日本(株)が買い取るもので、10月11日に正式調印した。増資後の資本金は1億8000万円になると思われ、ダウ・ケミカル日本(株)の出資比率は39.4%となる。
菱商農材(株)は、1970年に三菱商事(株)と大日本インキ化学工業(株)(以下DIC)の国内農薬販売合弁会社として発足した。その後、1987年には旧三菱油化(株)(現三菱化学(株))が資本参加し、現在(資本金5000万円)の出資比率は三菱商事(株)65%、DIC25%、三菱化学(株)10%となっている。
増資後の出資比率はダウ・ケミカル日本(株)と三菱商事(株)がそれぞれ39.4%、DICが15.2%、三菱化学(株)が6.0%となる。
これにより、ダウ・ケミカル日本(株)は三菱商事(株)と出資比率が並び筆頭となるが、さらに将来的にはダウ・ケミカル日本(株)が、その過半を出資する見通しであり、菱商農材(株)の経営権取得も視野に入れている。
菱商農材(株)の現在の売上高は約80億円(1999年12月期)。ダウ・ケミカル日本(株)の資本参加を受けることで、2001年には約100億円、さらに2005年には倍増の約200億円の売上高を目指していく。
【主催者側の出席者】 (敬称略)
▽菱商農材(株)代表取締役社長=内田敬一郎
▽ダウ・ケミカル日本(株)ダウ・アグロサイエンス事業部門管掌・代表取締役副社長=スティーブン タトル
▽ダウ・ケミカル日本(株)ダウ・アグロサイエンス事業部門・アグロ事業部事業部長=芝原哲也
▽三菱商事(株)スペシャリティー化学品本部長=永井峻一
▽三菱商事(株)農薬ユニットマネジャー=丹野静也
▽大日本インキ化学工業(株)アグリケミカル事業部事業部長=森芳計
【解説】
今回の、ダウ・ケミカル日本(株)の菱商農材(株)への資本参加は、同社が国内において農薬の直接販売体制を本格的に構築することを意味している。同社は一昨年、非農耕地分野では直販ルートを立ち上げしたが、今回の農耕地分野での直販ルートの構築により、先行の非農耕地分野は一部の変更が見られる。
ダウ・ケミカル日本(株)の国内での農薬直接販売体制の構築はここ10年来の懸案であったが、欧米の大手農薬企業が直接販売体制を構築しつつある現状のなか、機が熟すのを待っていた感がある。
一方、菱商農材(株)は国内農薬需要の減少の中、普及販売力の強化を目指してきたのであるが、ダウ・ケミカル日本(株)(ダウ・アグロサイエンス事業部門)から有力製品の供給を受けることで、さらに品揃えを充実させていくことを通し生き残り戦略に出たものと思われる。
日本国内で、農薬事業の強化・拡充を図りたいダウ・ケミカルと品揃えを拡充を目指す菱商農材(株)の双方の思惑が一致したものであり、今回の資本参加では菱商の社名及び社長の変更はなく、出資後にダウ・アグロサイエンス事業部門から芝原哲也アグロ事業部長を含む若干名が菱商へ出向する。
この中で、「将来的には”緑化対策の強化”及び”D−D分野の整理”も今回の資本参加に至った背景が有る」(業界評)と思われ注目したい。
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