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6年振りに前年比で出荷金額がプラス 殺虫剤の特需あるも、来年は楽観できず
−農薬工業会−


 農薬工業会(村田利和会長=東京都中央区日本橋室町1−5−8、正会員62社・賛助会員24社)は11月16日、日本橋倶楽部会館で玉川寛治常務、細谷悟業務部長、高橋勝次統計部会長(北興化学工業(株))ら出席のもと、平成12農薬年度出荷概況を記者発表した。
 それによると、本年度の農薬出荷実績は、数量で29万6,000t(前年比101.3%)、金額では3,626億円(同102.9%)となり、数量、金額とも微増した。しかし、来年度の減反政策実施など、需要の低迷基調を回復する要因は少なく、楽観は許されない。

 本年度の気象条件等を総括すると、暖冬を受けて春先以降東日本では高温となり、全国的にも晴天が続き水稲、果樹をはじめ農作物の生育は順調に進んだ。
 また、梅雨明けはほぼ平年並みであったが、梅雨期間中、西日本、東日本の一部で降水量が少なく、梅雨明け後も全国的に高温、少雨が続き、みかん等は果実の肥大抑制が懸念された。9月に入っても高温が続いたが、台風の接近等で降水量は全国的に平年を上回り、野菜、水稲、豆類に浸・冠水被害が発生した。
 さらに、病害虫の発生は高温、少雨の影響で斑点米カメムシ類が全国的に多発生し、豆類及び果樹のカメムシ、野菜・畑作でのハスモンヨトウの発生が多く見られたが、水稲のいもち病は昨年に続き少発生となった。
 加えて、水稲の作柄は全国平均で作況指数104の「やや良」となり、前年に比べ収穫量は3%多いと見込まれるほか、水稲の作付け面積は前年より17,000ha減少し、176万3,000haとなっている。

 農薬工業会が発表した平成12農薬年度の出荷概況は、会員企業54社からの報告を集計したもので、当年度から、これまで非農耕地用除草剤に分類していた一部除草剤が水稲用に計上されるようになったことが一つの特色。
 本年度の特徴を見ると、先ず春先から好天が続き病害の発生が少なかったが、この中で果樹のカメムシ類、水稲の斑点米カメムシ類、野菜、花卉のハスモンヨトウなど害虫の発生が多かったことが挙げられる。
 また、水稲における殺虫殺菌混合剤の箱処理剤の普及拡大により、本田で使用する殺虫剤、殺菌剤が減少し、箱処理剤も単剤から混合剤へ移行が進んだこと、さらに、水稲用除草剤において一発処理剤が減少し初期剤が大幅に増加したこと、などが特筆できる。

 なお、病害虫の発生予察情報をまとめておくと、警報では水稲斑点米カメムシ10県、注意報では水稲斑点米カメムシ類36県(47件)、果樹カメムシ類24県(25件)、野菜・花卉ハスモンヨトウ21県(23件)が目立っている。



解説
 農薬工業会が発表した平成12農薬年度の出荷実績は、金額ベースで6年振りに、数量ベースで7年振りに、それぞれ前年を上回っている。特に、1s(1l)当たりの単価が1,226円と前年と比べ20円アップした。しかし、2001年は45,000haの減反が実施されるなど農薬需要の低迷基調を回復する要因は少なく、楽観は許されない。
 また、平成13農薬年度の農薬価格は、加重平均で0.3%の値下げで合意している。8年連続の値下げであり、各農薬企業は合理化策を実施し経営改善を模索しているが、この1年間を見ただけでも約10%を超える人員整理を余儀なくされている。
 さらに、世界的農薬企業のM&A(企業の合併・買収)もより活発化し、とどまるところを知らない。この中で、ここに来てやっと、国内企業もその重い腰をあげつつあり、こと2001年は農薬工業にとって、新時代へ向けての歴史的な1年になるだろう。各社の奮励努力を期待する。



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