GCPF=Global
Crop Protection Federation(世界作物保護連盟)のクリスチャン・バシューレン統括理事が11月中旬に来日、農薬及びバイオテクノロジーを中心に化学工業日報、日本農業新聞、農業協同組合新聞の共同インタビューに応じた。
これまでの化学合成農薬に加え、ここ数年遺伝子組み換え作物(GMO)等のバイオテクノロジーが拡がりをみせ、GCPFも新たな展開の渦中にある。バシューレン氏は中国を歴訪しており、アジア情勢の知見を広め、さらにGCPFの方向性を明示する歴訪と見られる。
FAO(国連食糧農業機関)をはじめとする国際機関への代弁者、また地域間のコーディネーションを担うGCPFの沿革等を見ると、欧州の農薬製造者団体がGEFAPを設立(1960年)したことに端を発し、1966年にアメリカがGEFAPへ参加したのを機にGIFAP(世界農薬工業連盟)と改称、(日本)農薬工業会は1969年に加盟し、今日のGCPFは1996年に生まれている。
また、現在のGCPFの組織を見るとACPA(米国)、ECPA(欧州)、JCPA(日本)、LACPA(ラテンアメリカ)、APCPA(アジア・パシフイック)、AMEWG(アフリカ)の6ブロック構成となっている。
著しいラテンアメリカの成長 世界の農薬情勢
バシューレン氏のインタビュー内容に触れる前に、ここで世界の農薬市場の動向及びバイオテクノロジーの周辺を見ておきたい。
先ず、表1は国別農薬市場だが、1998年との比較で市場として堅調だったのが東アジアだったと考えられるものの、為替レート換算による見かけの伸長であったことは否めない事実だろう。この中で、過去5年間のラテンアメリカの成長が著しく、特にブラジルの成長が目立っている。
また、円グラフ1〜3は地域別・使用区分別市場を示している。我々は今更ながら、こと北米市場に圧倒されるのだが、東アジアの除草剤・殺虫剤、西欧の殺菌剤市場にも注目しておかなければならないだろう。そして、北米におけるバイオテクノロジーも。
さらに、表2〜3は作物別・使用区分別順位及び作物別分野の成長率を示している。
作物別・使用区分別に農薬市場を見た場合、最大の市場を構成しているのは果樹・野菜の殺菌剤であり、金額では約3,000億円となっている。次いで、トウモロコシの除草剤、果樹・野菜の殺虫剤、穀物の除草剤、大豆の除草剤と続き、金額ではいずれも2,500億円を超え、他作物を大きく引き離している。
ここで特徴的なことは、大豆のバイオテクノロジーが第10位に初めてランキング(1,000億円超)されたことだ。総括すると、世界市場の主要作物分野では穀物、トウモロコシ、大豆用の除草剤と果樹・野菜が一大市場を形成している。
次に、作物別分野の成長率を見ると、1998年と比較して1999年はバイオテクノロジーの成長が顕著だ。農薬では、果樹・野菜の殺菌剤が最も伸長した分野。一方、大きく後退した分野は果樹・野菜、トウモロコシ、大豆、穀物の除草剤であり、明らかにGMOの導入が影響しているものと思われる。
情報のグローバル化で GCPFの仕事が拡大
さて、多忙のなか来日したバシューレン氏は1958年、ベルギー生まれの43歳。趣味は多彩におよび、なかでも読書は核にあり、特に歴史、文化の書籍が中心となっている。なかなかの好男子だ。本年6月、GCPFに着任したが、「ブリュッセルにある動物薬協会での11年間の規制、法律関係に携わった経験がGCPFに役立っている」、と語る。
最近の世界的なM&A(企業の合併・買収)については、「多国籍企業の戦略で、企業数が少なくなってきた」、と率直な見解。また、農薬を取り巻く情勢においては、「インターネットなど国際間のスピードが速くなり、本格的な情報化時代に入った」、との認識をあらためて示した。情報のグローバル化で、GCPFの仕事が拡がり、より一層(GCPFの)役割が高まってきた。
これらの背景から組織、ネットワークを強化していくことの必要性を強調するが、基本的な変化として「コミュニケーション指向及び行動」、「活動範囲の進展」を提出した。これまでの技術対応だけでなく広く消費者、社会との連携が必要だとし、化学合成農薬に加え遺伝子(組み換え)技術を利用した作物との協調の時代、を力説する。
GCPFとしては、化学合成農薬を大切にし、バイオテクノロジーへと活動範囲を拡大していくが、バシューレン氏は「バイテクが化学農薬に取って代わることは無い」と同時に、「種子団体等との協調も大切」だと強く訴えた。
さらに、同氏は「持続型農業の重要性」を挙げるなか、地球全体の食糧問題に触れ、「食糧を今まで以上に作らなければならない国は多く、我々が持っている技術を活用していくことが重要」、とした。
最後に、同氏は「消費者・社会的問題に対し、コミュニケーションを前面に出していきたい」とし、その手法として「科学的情報の押しつけでは無く、相手のニーズに見合った現実的な対話」が大切だと言う。
GCPFは、来る12月初旬の理事会で新たな組織、活動内容等について衣替えを決定する。コミュニケーションの重要性を強調するバシューレン統括理事だが、消費者志向が多様化する中で、バイオテクノロジーがどう位置付られるか、最大の関心事となっている。
なお、日本の情況に少し触れておくと、厚生省の輸入農産物にかかるGMOの安全性評価を終了したものは約30件程度あるものの、日本で当該種子を販売するに当たって、農水省(食用作物)による安全性評価を終了したものは、今だ無い。
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