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プロ化する消費者の選択能力にどう向き合うか
21世紀の外食産業 新たな成長モードを探る

−第6回日本フードサービス学会年次大会より−

 研究者と外食産業の経営者、フードコンサルタントなどで構成されている日本フードサービス学会(奥住正道会長)の第6回年次大会が1月20日、東京・平河町の日本海運倶楽部で開かれた。今年のテーマは「変わるフードサービスの成長モード」。消費の低迷から外食産業市場も停滞しているなか、新たな成長パターンとして何が見いだされるのかをめぐって、研究報告やディスカッションが行われた。学会では国民の健康を守る外食産業として「味」で消費者を惹きつけることの重要性などが指摘された。


 (財)外食産業総合調査研究センターの推計では、外食産業の市場規模は28兆1400億円(平成11年)、そのうち食堂・レストランなど飲食店は13兆2700億円(同)となっている。市場規模はバブル崩壊の直前までは右肩上がりで伸びてきたが、ここ10年間はほぼ横ばいで、しかも10年、11年は縮小している。
 長引く景気低迷がその要因だが、外食よりもコンビニエンスストアの弁当など中食市場の伸びも影響している。外食総研の推計では、昭和50年と平成10年の外食率(食市場全体に占める外食率)をくらべると30.0%から39.2%に伸びた。しかし、食の外部化率(外食と中食合計の比率)をみると、同期間に32.8%から44.2%と、いわゆる外食の伸び率を上回っている。

 学会では、こうした現状を踏まえて「何を食べさせるかと同時に、どのように食べさせるかという業態開発も今後の課題」(学習院大学・田島義博教授)との指摘もあった。

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 そのためのヒントになるのは消費者の動向だ。ワークショップ「新世紀、フードサービス再考」では、消費者の外食選択能力がプロ化しているとの認識から、消費者へのヒアリング調査をもとにディスカッションが行われた。
 調査は(株)ニコ・ニコ料理の主宰者、道畑美希氏が実施したもので、それによると、30代から50代の女性は、「外食は主婦の癒しの場」だが、「ファミレスは勉強不足、主婦だって素材にこだわるのだからプロならもっとこだわって」などと考えていることが浮かび上がった。

 また、30代〜50代の男性では「外食は家族サービス」と捉える人が多く、「気持ちよくゆったり」とした食事を求めているが、現状には「えさ小屋では食事をしたくない」、「店員の教育ができていない」、「身体にはイマイチ」といった声が多かった。
 20代の男女では、「マックする」、「松屋めしる」など「固有名詞が普通名詞」になっており、「長くおしゃべりができる店に行く」と外食をコミュニケーションの場と捉え、「待たされるのがイヤ」という声が多かった。食事の内容については「母のごはんが安心」と考えていた。

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 こうした結果を踏まえて明治大学の大友純教授は「消費者にとって店はあくまで自分の目的を実現するための手段。顧客の真の購買目的をつかむことも重要になってきたのではないか」と指摘。
 (株)スエヒロの干田英晶社長は「ファミレスは個性をなくした。消費者の選択が厳しく、味と価格に加えて、サービスの重要性を感じている」と話した。

 これに対し道畑氏は「調査結果をみるとメニューに対する注文が一切出てこず、外食はバランスが悪い、など不信感のかたまり。外食が提供する食もスーパーマーケットで調達するのと変わらないのなら健康の点でソッポを向かれる。原点に戻るべき」などと提言した。
 また、明治学院大学の上原征彦教授は「味とは素材の良さと味付けの良さ。繁栄している外食企業は味付けがいい。消費者の目的の実現だけを追求した店はうまくいかない」と味の追求の重要性を指摘した。

 とくに議論になったのが、高齢者への対応を外食産業がこれまで考えてこなかった点だ。
 文教大学の横川潤講師は「ファミリーレストランといいながら、ファミリーに食を提供できていないのが悲劇」とまで分析したが、高齢者は子どもや孫が喜ぶからという「目的」を実現するために外食店には足を運ぶが、高齢者自身が積極的に訪れる傾向は少ない。 「年齢にともなって味の高度化が進む」ことから、今後は高齢者もターゲットに「出店数は減るものの本格的な味を提供していく店をいくつか抱えながら全体を経営していくこと」(上原教授)が成長につながるとの提言もあった。

 ただし、一方で消費者の低価格志向が続くことを見越すと、本格的で多様性のある味を提供するには、効率的に食材が調達できるよう生産から流通までのサプライチェーンの構築が必要なことも指摘された。
 また、今後は、消費者に外食産業の姿勢を提言していくことの重要性も話合われた。

 ファミリーレストランが登場して30年。国民の健康を守る視点での成長戦略も求められる時代という認識が広がっている。  




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