(社)全国農協観光協会では、2月24日東京大手町のJAホールにおいて、第12回 民俗芸能と農村生活を考える会を開催した。この催しは、平成元年度から毎年1回開催されているもので、今回は、長野県須坂市の「獅子狂言」の公演を中心に、伝統芸能を継承しながら生きる人々の暮らしを紹介し、農山村の現状を考えることを意図したものだ。
演目は、塩野の「和藤内獅子」、高梨の「牛獅子」から・神獅子・鬼・清姫・久寿の葉・牛獅子等。「和藤内獅子」は、近松の浄瑠璃「国性爺合戦」のさわりを獅子狂言化したもの。「清姫」は、歌舞伎の「道成寺」を、「久寿の葉」は人形浄瑠璃「蘆屋道満大内鑑」の(葛の葉子別れ)をそれぞれ獅子狂言化したものであり、江戸期の須坂近辺の住民の、娯楽と文化水準の高さを窺い知る手がかりでもある。 | |
和藤内
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久寿の葉 |
圧巻だったのは、「久寿の葉」で獅子が口に筆をくわえ、有名な歌「恋しくばたずね来て見よ和泉なる志乃田の森の恨み久寿の葉」を障子に書く場面だが、この歌の各フレーズを縦に書き、横に書き、逆さ文字で書き、下から書く。その技術もさることながら、遊び心を享受する人々にも敬意をはらいたいものだ。
この催しの前日、民俗芸能研究の泰斗であった本田安次先生の訃報に接した。「民俗芸能と農村生活を考える会」では、何度も先生の該博な知識に裏ずけられた解説を拝聴した。浩然帰天、高みから民俗芸能の存続・継承を見守ってくれると考えたい。合掌。
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