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吉本 武雄 社長
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(株)ベルデ九州(吉本武雄社長=福岡市博多区博多駅前4−2−10、資本金:1億円)は、急進する流通の変化に迅速に対応しうる農薬・農業資材販売専門会社として今春立ち上げられたが、約1年間の空白とも見られる期間を乗り越え、どう農薬事業に求心力を生んでいくのか。
(株)ベルデ九州立ち上げまでの経緯を見ると、井上喜(株)(井上良弘社長=福岡市博多区店屋町6ー18)は、同社のアグロ事業部門を分社化し、三井物産(株)(20%)、日本農薬(株)(22%)、石原産業(株)(10%)の資本参加を受け、2月19日に(株)ベルデ九州として設立、3月1日より営業を開始している。
井上喜(株)は、340年の長きに亘る歴史を有した九州を代表する企業で、こと農業分野においても70有余年の歴史と伝統を誇る大手の有力問屋として成長している。2000年の売上高を見ると、全体で約400億円、農薬で約43億円の売上げを確保した。
この中で、農業及び農業資材を取り巻く環境は厳しさを増しており、同社では生き残りを賭け三井物産(株)の協力の下に、同業者と将来の卸再編を視野に入れた合併交渉を2000年10月以降重ねてきたが、本年1月末の交渉期限内の合意に至らず、急遽、新しいスキーム(枠組み)による新会社設立に至った。
新会社は、アグロ分野での強力な「専門集団」としての会社を目指し、所謂「MBO」(従業員による経営権取得)形式を採用し、井上喜(株)アグロ事業本部より転籍した従業員により組織する「従業員持株会」が筆頭株主(28%)として運営されている。初年度の売上げ目標は、約55億円。
この6カ月間の道のり及び今後の抱負について吉本社長は、「信頼性の高い農薬・農業資材販売の専門会社を目指し、先ず社員の意識改革に取り組んできたが、この6カ月間でかなり向上してきた。今後は、小売店、JAとの密接な関係を構築する中で、しっかりとした在庫管理のもとに計画購買を推進していく」、と力強く語る。
戦術的には、栽培指導及び各メーカーの新剤の普及、販売店との協力による独自の低コスト防除暦の作成、これに見合ったベルデ製品の積み上げ、などが挙げられ、「技術推進室」が主にバックアップしていく。
さらに、同氏は三井物産(株)の資本参加について、「市場ニーズからのネット構築といいますか、“仲介ネットサービス網の構築”が最大の目標です」、と説明する。
従来、情報の提供等においては、各メーカーから各取引卸それぞれに対して情報提供されているのが一般的であった。これに対して(株)ベルデ九州では、卸機能を最大限発揮し、メーカーに情報をフィードバックすることを考えている。現在の外資系企業による直販指向の高まりのなか、(農薬)卸の統合・再編が加速すると見られており、同社では情報伝達のシステム化の構築をはかっていく。
もともと農薬卸の再編は、医薬卸の再編から派生していると見られる。クラヤ三省堂、バイテタルネット(武田系)、アズウェル、アスカム(三共系)、オオモリ薬品(塩野義系)、シーエス薬品、スズケン(その他グループ)など急旋回を見せている。総じて規模拡大と機能強化を図るものだ。
今回の(株)ベルデ九州の設立手法及び再編理念は、そのままこの範疇には属さないものの、国内農薬企業及び商社を絡めるなかで、将来的に新型の農薬卸統合・再編の試金石となっていくだろう。特に、井上喜(株)と密接な関係にある日本農薬(株)及び石原産業(株)、この分野の進出に手間取っていた三井物産(株)の動きに注目したい。