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アグリビジネス業界ニュース

防除の新天地を切り拓いた殺菌剤「ウィン」
農林水産技術情報協会理事長賞を受賞
―日本バイエルアグロケム―

松本昇氏
松本昇
殺菌剤製品開発
グループリーダー

 日本バイエルアグロケム(株)開発本部技術開発部の松本昇殺菌剤製品開発グループリーダーはこのほど、功績名『長期効果持続型いもち病防除剤の開発とそれを利用した新水稲病害虫防除体系の確立』で(社)農林水産技術情報協会理事長賞を受賞した。
 低薬量で効果を発現し、浸透移行性をもち、かつ長期間効果を持続する殺菌剤有効成分カルプロパミド(製品名『ウィン』)の開発・普及に携わったもので、いもち病防除において従来の「本田施用」等から「箱施用」という新天地を切り拓いた。
 大型殺菌剤成分に成長したカルプロパミドの開発に当たっては数多くのエピソードがあるが、総体的に見て「これだけ長期間に亘る委託試験は、カルプロパミドで終わりではないか」(松本リーダー談)に象徴されているのではないかと思われる。
 事実、全国の国公立試験場の圃場試験は平成3年から9年までの7年間におよび、さらに平成8年から11年まで大規模圃場試験が行われ、その高い実用性が確認された。接点は、「箱処理で本当に水稲のいもち病が防げるのかの見極め」(同)にあった。試験件数は、60余に及んだと見られる。
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 当時の背景としては、水稲栽培では数回におよぶ防除作業を要するため、省力的で効果が持続する防除方法の確立が求められていた。既に、害虫防除では長期持続型薬剤が開発されていたため、水稲栽培で最も重要な病害のいもち病に対し田植え前に処理できる長期効果持続性薬剤の開発が待望視されていた。
 日本バイエルアグロケム(株)では、前述のように平成3年から「0301」の試験コードで全国的な公的試験を展開するが、最も理想的な結実は長期効果持続性殺虫剤『アドマイヤー』(有効成分:イミダクロプリド)との混合剤『ウィンアドマイヤー箱粒剤』の開発となって現れ、これまでの防除体系の概念を塗り替えることになる。
 カルプロパミドの開発に携わった主要な人々を見ると、先ず利部伸三化学合成研究室長(当時、現岐阜大学教授)が挙げられる。「創造力」に定評があり、イミダクロプリドの合成も果たしている。また、倉橋良雄殺菌剤研究室長(同)も忘れがたく、その「不屈の精神」が成就への礎となった。
 なお、松本リーダーは「研究者は自然界に無いものを創る夢をもてるが、同時に(製品の)効果と人・畜及び環境への安全性確保の責任もある」と研究者の生き甲斐を語るが、この素朴な言葉の中に純然たる真理を垣間見ることができ後人への模範となる、との印象だ。
グラフ
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                    (注)2001年は本紙推計


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