JACOM ---農業協同組合新聞/トップページへジャンプします

アグリビジネス業界ニュース

国内最大級農薬卸商の誕生か
電光石火?業界は“寝耳に水”
−カネコ種苗・岩渕農薬−


 種子等の生産販売、花卉園芸用品・農薬・農業資材の販売を主な事業とするカネコ種苗(株)(金子才十郎社長、本社:群馬県前橋市)と農薬卸売業を営む岩渕農薬(株)(岩渕健二社長、本社:千葉県佐倉市)は5月21日、両社の包括的な業務提携を発表した。
 国内農薬業界はいま、米の生産調整の強化や、安価な輸入農産物の急増による農産物価格の低迷により、防除機会の減退から需要の減退を強いられている。
 一方、流通面においては、外資系メーカーを中心とする直販の拡大やホームセンター及び大型量販店の参入の背景の中で、販売競争が激化し利益率が低下するなど、極めて厳しい状況にある。このような情勢のもと、両社では経営基盤の充実を図るため、今回の業務提携に至った。
 「包括的な業務提携を通じて、両社の経営資源を有効活用し、流通機能の強化と事業基盤の拡充を図っていく」と、両社は業務提携の狙いを明らかにした。その戦略として、製品・物流・情報・得意先支援などの各戦略等の各分野における資源の有効活用及び共同研究を行って行くほか、その他の共同研究及びその成果の活用も視野に入れている。
 今回の(包括的)業務提携の発表は電光石火の出来事であり、業界にとってはまさに“寝耳に水”であった。そのことは(株)栗原弁天堂(埼玉県)、安藤(株)(群馬県)、宮本商事(株)(千葉県)、京浜興農(株)(神奈川県)などの関東屈指の農薬卸商においても、また三共(株)、武田薬品工業(株)、日産化学工業(株)、日本農薬(株)、日本バイエルアグロケム(株)など提携2社とパイプの強いメーカーにとっても然りだ。
 農薬卸商を束ねる全国農薬協同組合によると、全国の農薬卸商の数はこの10年間だけを見ても大幅に減少している。現在の姿は、本社機能で約210社、支社機能を合わせても260社半ばにとどまっている。経営の刷新につとめるも、流通の変化等に対応しにくくなっている。
 最近の業界再編は(株)ランドサイエンス、グリーンテッック九薬(株)、(株)ベルデ九州、(株)バイタルグリーン、(株)東農薬などで結実しているが、今回の業務提携は、改めて生き残りを賭けた農薬卸商の姿を浮き彫りにし、その規模からしても業界に大きな波紋を呼んでいる。
 2001年のカネコ種苗(株)の農薬部門の売上高は、総売上高の36%となる147億円、また岩渕農薬(株)のそれは90%に相当する45億円と見られる。両社では、提携内容を具体化し実効性を高めるために「協議機関」を設け協議していくが、この業務提携が拡展すると約200億円の売上高を誇る国内最大級の農薬卸商が誕生することになる。

<カネコ種苗(株)の概要>
 群馬県前橋市古市町1−50−12 金子才十郎社長
 昭和22年6月設立 資本金14億9126万円 従業員数510名
<岩渕農薬(株)の概要>
 千葉県佐倉市城535 岩渕健二社長
 昭和52年10月設立 資本金2900万円 従業員数30名


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
webmaster@jacom.or.jp