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アグリビジネス業界ニュース

三菱化学の農薬事業を買収
事業基盤強化で拡大路線へ
― 日本農薬 ―


大内脩吉社長
大内脩吉社長

 日本農薬(株)(大内脩吉社長、本社:東京都中央区)は8月20日、10月1日付けで三菱化学(株)(冨澤龍一社長、本社:東京都千代田区)の農薬事業を買収すると発表した。総合農薬専業メーカーとして、新たな拡大路線に入ることを内外にアピールした。
 買収内容は、農薬の研究開発・生産並びに販売・普及を含む生物化学品事業の全て。国内農薬市場は縮小傾向にあり、今後も厳しい環境下で推移するものと予想されている。この背景下、医薬・精密化学品事業などに集中したい三菱化学(株)と、さらなる農薬事業の拡充を図りたい日本農薬(株)の思惑が一致した。流通チャネルの変更はない。
 三菱化学(株)は、農薬事業において高い創薬能力を誇る原体メーカー。主な製品は、果樹・野菜用殺虫剤の「コテツ」、「ピラニカ」、「ノーモルト」、「マブリック」、園芸用殺虫剤の「ハチハチ」、水稲用除草剤の「インダノファン」、水稲用殺虫剤の「バッサ」など。開発ステージには、殺センチュウ剤の「MKIー245」が有るほか、「インダノファン」の畑作への展開が期待されている。
 一方、日本農薬(株)は、研究開発型企業として、「フジワン」、「アプロード」、「モンカット」、「ダニトロン」、「エコパート」など自社開発原体を中心に製品化し、国内外の農薬マーケットへの販売に精力的に取り組んでいる。開発ステージには、殺菌剤「NNFー9850」、殺虫剤「NNIー0001」及びこれに続く殺虫剤がある。特に、「NNIー0001」は同社農薬事業に求心力を生む大型剤として期待されている。
 現在、三菱化学(株)の農薬事業の売上高は約70億円となっている。農薬に携わる従業員は100名弱で、そのうち研究開発32名、原体営業10名など44名が日本農薬(株)への転籍対象となっている。三菱化学(株)黒崎事業所(北九州市)で農薬生産に携わる約50名は、引き続き三菱化学(株)にとどまる模様。

日本農薬(株)売上高の推移(単位:億円)

 【解説】 国内農薬市場は、減反政策の強化などにより縮小傾向が続いている。2001年の市場は、金額ベースで3,565億円(農薬工業会調べ)となっており、本年9月末の実績も2〜5%の幅で縮小することは避けられない。また、世界的に巨大農薬企業の統合が進むが、これは重なる研究開発費を吸収できないことやジェネリック(特許切れ)農薬台頭への危機意識から派生しており、日本への外資系企業の攻勢は、「直販」という形で顕在化した。
 日本農薬(株)は、1928(昭和3)年に創設され、砒酸鉛で農薬登録第1号を取得、故・行友威彦氏が初代農薬工業会会長に就任するなど常にわが国農薬工業の中心にあり、真にリーディングカンパニーとして業界を牽引してきた。「フジワン」、「アプロード」、「モンカット」「ダニトロン」は、後に「FAMD」の愛称で呼ばれるまでに成長し、大きく農業生産に貢献している。
 この間、巨大農薬企業は「直販」という形で日本での攻勢を強めてきた。日本農薬(株)だけをみても、この5年間で大型品目欠落の影響を大きく受けている。これへの対応は、「自社品の比率を高め、これをどう普及ベースに持っていくかが鍵だ」(大内社長)。同社では、2005年を目途に現在の自社品比率33%から50%以上に持っていく中期計画を進行中だ。
 また、日本農薬(株)では構造改革を同時に進めている。1999年の第一次構造改革では、100名に及ぶリストラを敢行、これに引き続き2001〜2002年は人事制度を改革し、併せて生産・物流を別会社化した。一方で、事業基盤の強化に向け(株)トモノアグリカ製品及び人員(8名)の譲受けなど積極攻勢にも出ている。
 「市場の信頼を得られるような力を発揮していくことが重要」だと大内社長は語る。嵐の中に晒された日本農薬(株)にとって、”信頼”は究極的な命題となったが、今回の一連の動きはこの命題をクリアする源となると同時に、これからの売上拡大と事業の拡大につながるものとなろう。そして流通においては、農家に必要な技術・サービスを日本の企業が中心となって推進していくことの大切さを匂わせていると思われる。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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