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アグリビジネス業界ニュース
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北野さんと農薬をやさしく学ぶ−消費者向けセミナーを開催 |
消費者に農薬の目的、使用法、安全性などについて理解を深めてもらうのが狙いで同工業会として初の試み。応募者は1400人にものぼり抽選で選ばれた350人が会場を埋めた。 セミナーでは、北野大淑徳大学教授がゼミ塾長として進行役を務め、本山直樹千葉大学教授や眞板敬三残留農薬研究所常務ら専門家が解説。農薬とはおもに農業生産の障害となる病害虫防除と除草のための薬剤であることや、登録制度、安全性評価の仕組みなどについて説明した。 本山教授は、化学合成農薬のほかに、生物農薬も使用されていること、かつては効果重視だったが最近では人や環境への影響を配慮した開発が行われていることなども強調した。 また、眞板常務は、新しい農薬が登録されるまでの試験期間が6〜7年と時間がかかることや、登録後も神経に及ぼす影響など新しい知見をもとに安全性が再評価されていることなどを紹介。残留農薬検査では基準値を超える事例は「1万件の検査で2件程度」と極めて少なく、国や生協などの年間サンプル調査を合計すれば60万〜70万件になると指摘した。
◆農薬不使用では収量激減 会場では、(社)日本植物防疫協会が調査した農薬を使用しないで栽培した場合のおもな作物の収量データもスライドで紹介された。同調査によると30%程度の減少にとどまる作物もあるが、果実などではほとんど収穫できないことが示されている(グラフ参照)。パネラーのひとり、農事組合法人四季彩くらぶ理事の青木東洋氏は、このデータについて「商品として販売できるかどうかを考えると、農薬を使わなければゼロだろうというのが現場の実感」と話し、「農薬がなければ農産物の生産が不安定になり消費者にも影響するのでは」と指摘した。 そのほか農薬取締法の改正によって生産者も使用基準を遵守しなければならないことや、防虫ネットを使用するなど物理的な防除も行っていること、栽培履歴を記録してホームページで公開するなど生産現場の努力も参加者に伝えた。「小学生のときに、みんなが農業をやめてしまったら日本の食料はどうなるんだろうと作文に書いた子どもが今、後継者になってくれた。健全な精神で農業を継ぐ人間もいる。温かいエールを送ってほしい」と青木氏は参加者に呼びかけた。 ◆21世紀は理解と納得の社会 北野教授はゼミのまとめとして「農薬とは何か、安全性はどう確認されているかを科学的に学ぶことを目的にしたゼミ。21世紀は安全・安心の世紀といわれるが、それは消費者が理解して納得する社会にしようということ。農薬をうまく使って共生していくことが理解されたのではないか」などと科学的な知識に基づく判断が消費者にも求められていると指摘した。 ただ、ゼミに参加した低農薬野菜づくりに取り組む生産者は、「たしかに農薬がなければ栽培はできない。ゼミでは適正に使用すれば安全性に問題がないことが強調されたが、私は農薬を少しでも減らすほうが安全だと考えている。店頭に並ぶ私の低農薬野菜も慣行栽培も同じ、というようなメッセージは不満」と語った。 農水省も環境政策を打ち出し、そのなかで農薬と化学肥料を削減する方向を示している。店頭にも低農薬をうたう野菜が多いなか、この日のゼミではたしかに「低農薬」についての「科学的」な議論はほとんどなされなかった。今後、消費者だけでなく生産者にも情報提供していくべき課題のひとつだろう。 なお、農薬工業会では同様のセミナーを、この秋にも開催する予定。 (2004.4.12) |
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