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この人と語る21世紀のアグリビジネス
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モノではなく考え方で共感を |
「規律・礼儀・約束」を重んずることは人としての原点であり、それは顧客の信頼を得るビジネスの原点でもある。住まいづくりに携わるプロに求められるのは、技術・知識以前に人間性であり、顧客の夢をわが夢にすることだと、独自の歴史を刻んできた住宅メーカー・東日本ハウス(株)社長に48歳の若さで就任した成田和幸氏は、在来住宅の「尺貫法」から、高齢者にも優しいメートル法への転換など、時代の1歩先をいく戦略でいま注目を集めている。
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◆入社以来トップセールスとして活躍
――営業時代に大変優秀な実績をあげられていて「函館を見渡せば必ず私のお客様あり」といわれたそうですね。 成田 多いときには、函館市の建築確認の3%が私だったこともありましたし、年間に50件から60件受注していました。 ――半年に1回、業績優秀な人を表彰する制度があって、金バッジを29回、最多受注獲得社内1位15回という記録をもたれているそうですね。 成田 だいたい社員の1割くらいが表彰される制度で、入社以来毎回受賞しましたが、たまたまでしょう…。 ――どういう制度ですか。 成田 上期と下期に各セクションの優秀者を表彰しますが、営業の場合には1億3000万円以上とかルールを決めて、それを超えた人を表彰します。 ――設計部門などでは金額というわけにはいきませんね。 成田 設計の場合には、図面が書けない営業に替わって設計するわけですから、サッカーのアシストと同じで、営業の受注金額に応じたポイントで目標を決めています。 ◆常に新たなことに挑戦する姿勢を ――トップの営業マンはいくらくらい受注するのですか。 成田 私が営業の時代には半年に5億円くらいでしたが、いまは3億円くらいですね。私のころは、高度成長で家を持ちたいという人が多く、良い時代だったと思います。いまは、全国にマイホームセンター(住宅展示場)があり、競合相手も多く、情報過多ですから、大変ですよ。 ――23歳で入社され48歳で社長に就任されましたが、社員の方も若い人が多いんですか。 成田 私が入社した頃の平均年齢は20歳代でしたが、いまは35歳に上がってきて、多少危機感をもっています。 ――企業としても大きくなられたから、これでいいのではという社員も多いのでは… 成田 社長になって1年ですが、この間の戦いは、そういう意識との戦いですね。「俺がやらんでも誰かがやるだろう」という大企業病とのね。戸建市場が縮小しているなかで、良かった時代のままの組織では生産性が落ちますから、営業所や展示場を減らしたりして、意識改革をしてきました。 ――どうしても安定志向になりますね。 成田 社長に就任したときに私は、中小企業の親父の経営をする。仕入れから商品開発から何でも口を挟む。中小企業の親父の仕事の7割は資金繰りだ。現場のあなた方には資金繰りはないのだから、その分、会社の隅々、支店の隅々まで見れるはずだ。それが見れなければ、あなた方は中小企業の親父以下だ、と話をしました。大企業の支店長のようにふんぞり返ってもらっては困るんです。だから、支店長は年俸制にし、意識を改革してもらうことにしました。 ――抵抗はありませんでしたか? 成田 それを気にしていたら、意識改革はできませんよ。 ◆顧客との人間関係をつくることが一番大切 ――住宅産業は、ルートセールスとは違いますからやらなければ実績があがりませんね。 成田 常に新規と既客からの紹介です。リピーターといっても20〜30年経たなければ無理ですから、常に新しいものに挑戦して、第一線で奮闘努力しなければ成果がでないという業種です。そういう意味で、展示場が大切ですし、お客さんからの紹介が必要です。一番は、お客さんからの紹介ですね。私が函館で営業していたときの95%は、お客さんからの紹介でした。 ――注文して良かったという口コミですね。 成田 それと引き渡した後のフォローですね。とくにこれからは、お客さんの立場に立ってやっていかければいけないと考えています。何もなくても半年に1回くらいは「こんにちは、どうですか」と顔を出す「お客様相談室係」という女性だけの部署をつくりました。こういうことはこの業界ではいままでなかったことなんです。 ――たずねてこられると嬉しいものですよね。 成田 私が函館で実績をあげたのも、お客さんからの紹介があったからですが、いつも既客を訪問し何かあればすぐに対応していた、そういう人間関係からですよ。 ――人間関係をつくるうえで大事なことはなんですか。 成田 創業者でもある中村功会長からいつもいわれたことですが「約束は必ず守れ」ということです。注文住宅の営業は、図面だけで形のないものを売りますから、人間性ですね。いま年間2800棟建てていますから、その人たちからの応援・支援をいただかずに、住宅展示場のような激戦のところだけで戦っていたら会社がダメになります。 ◆介護のしやすさ、高耐久性を実現する桧材のメータモジュール ――高級感のあるモデルハウスが多いようですが、今後もそういう路線ですか。 成田 中高級層を対象にしていきます。もう家の安かろう悪かろうの時代は終わったと思います。日本の住宅の解体の平均年数は26年ですが、これは無駄遣いではないですか。これからは、50年、60年持つような住宅にしていく必要があると思いますし、そういう高耐久住宅を供給していく義務が私たちにはあると考えています。それで湿気やシロアリに強い桧の4寸角を提案しているわけです。桧材は樹齢と同じだけ持つといわれていますから、60年ものの桧を使っています。 ――最近、メーターモジュールを採用と聞きましたが、これはどういうことですか。 成田 少子化・高齢化で介護がこれからの大きな問題になりますね。いま、バリアフリーといわれていますが、介護のためには廊下とかに幅が必要です。ところが、住宅ではいまだに尺貫法が使われていますから廊下の幅が3尺、芯々で91センチ、柱の幅を考えると実質70数センチですから車椅子が使えません。私も73歳の父親と同居していますが、もし病になったらと考えると「尺」で建てた家なので介護に不安をおぼえますね。 ――コストが上がるのでは… 成田 木材は一本4メートルとメートル法なんです。従来の尺では36センチ捨てていたわけです。これは不合理ですよね。 ――桧は国産ですか。 成田 木曾と吉野の国産です。 ――高いんじゃないですか。 成田 いいえ、トータルで3%くらい高いだけです。それでも若い人はなかなか関心を示してくれませんね。どうしてもファッション性に走りますね。しかし、家は生活を営む場なんです。だからJAさんや農家の方などその地域に根を張っている人にうけるんですね。農家では100年150年経ている家がたくさんありますからね。 ――そういう考え方が大事ですね。 成田 営業には、モノを売るのではなく、こういう考え方を売れ、といっているんです。間取りとかを優先するけれども、家に対する考え方に共感してもらってから、そういう話はしなさいとね…。 ◆自ら社員教育の場へ ――御社の30年史を読むと、必ずしもいまの社会では受け入れられていないユニークな考え方を貫いていますね。 成田 自分たちが正しいと思うことを貫いた方がいいと思いますね。米国式のグローバルスタンダードが日本に合っているとは思えませんから、それに流される必要はないですよ。日本には日本の良いところがいっぱいあるんですから…。いま全支店を回って、私自身が社員教育をしていますがそのポイントは、30余年の歴史があり素晴らしい思想があるのにそれを忘れていることが多いから、もう一度原点に返ろうということです。社員は分かってくれていますね。 ――そういうコミュニケーションが大事ですね。 成田 自分が弱くなると、どうしても強いもののマネをするようになりますがそれが正しいとは思いません。良いものはいつでも良いものなんです。そのことを大事にしていきたいと考えています。 ――ありがとうございました。 (2003.5.7)
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