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この人と語る21世紀のアグリビジネス
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肥料と農産物の販売をリンク 農家へのサービスさらに強化 |
小早川社長は3年前に同社の特約店(卸商)代表約30人を全農の営農技術センター(神奈川県平塚市)視察に誘い「系統は全国にあまねくサービスをするため、これだけの機関を持っている。その責任感も事業のスケールも実に大きい。これがあるからこそ商系の我々も仕事ができているなどと説明した」という。事業環境を見詰める社長の目は鋭い。肥料事業は苦境にあえいでいるが、社長の話は意欲的だった。同社は肥料などの農業資材販売に加え、農産物販売にもチャレンジしており「食料自給率を50%以上に高めなければ」と強調した。
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◆販売先が見える
「三菱商事が化学肥料部門の国内販売課を分社化して設立した会社で、現状は年間売上約270億円のほとんどが肥料の販売額です。選果機などの農業機械も扱いますが、4年前からはコメや青果物などの農産物販売も始めました」 ―どんな品目ですか。 「青果ではレタスが一番、次いでキャベツが多い。丸ごとも扱いますが、カット野菜が中心です。これをスーパーや外食産業などに直接・間接に販売しています。パッケージサラダもあります」 ―どんな生産体制ですか。 「各地の耕作者組合と話し合って作り始めました。レタスなどは半年間ほどの値段を決めて契約栽培し、市況がどんなに安くなっても約束した値段で必ず引き取ります。産地は北海道から九州まで全国的です」 ―JAとはどうですか。 「こちらから商談に出向いたり、またJAさんのほうから販路を求めてきたりもします。最近は本当に増えました」 ―農家の反応はどうですか。 「市場出荷と違って、どこへ売っているか、誰が買っているか、わかるから楽しいといいます。何よりも生産計画が立てやすくなったとのことです。例えば生産量の半分くらいは前もって販路を確保しておき、あとは高値になった時の楽しみにとっておくわけですね。だから全量の契約栽培は少ないのです」 ◆先行投資で挑戦 「だからJAからの要望が私どもにくるわけです。JAから市場の情報を聞くだけ、あとは精算金待ちといった農家の状況ではいけないと、全農も全中もすでに『売り』に力をいれていますね。やればできますよ。我々だってできるのですから。なにしろ現場に一番近いのはJAですし、全農のパワーは大きいのですから。ただ『変える』ことが難しいのですけど…」 ―掛け声は良いのですが…。 「商系の肥料問屋も私どもと同じようなことをやっていますから、今後は販売競争となります。すると農家に入る情報が多面的となり、いろいろなことが見えてくると思います」 ―契約栽培の技術指導はやっているのですか。 「今、そこへ入る段階です。素性がわかるようにトレーサビリティは3年前からやっています。おコメも『こだわり米』から有機栽培米、特別栽培米と信頼のおける商品としています」 ―とはいっても、農産物販売の収益性は低いのですが…。 「我が社も採算が取れていません。4年前に農産部をスタッフ4人で発足させましたが、しかし今年8月までには9人に増やします。というのは先行投資であり、チャレンジです。農産物販売を通じ、農業生産者や、その組合代表と直接話し合うのですから、我が社の主力商品である肥料販売の社員にとっても大変な勉強になるわけです」 ◆経済事業の価値 「経済事業のうち購買事業の価値は、画期的な品物を作らせて供給することだと思うのですが、農機などの今後は別として肥料ではこの30年間、画期的な品物は新しく出なかった。だから全農もJAも生産資材を流通させるだけでは利益が出てくることはないし、肥料を扱う魅力はなく、期待もできない状況です。そこを認識しないといけないんじゃないかと思います」 「戦後のモノ不足の時代とは違い、今は陳腐なモノをつくっていては成り立たない。そこで購買事業としても、農業生産者が何を求めているかをつかみ、何を作って、どこに売るかということのお手伝いをする、指導をする必要があります」 「もちろん、販売事業も同じで、何を作り、どこに売るかのお手伝いに事業の価値があります。これは全農も全中もすでに方針を出しているわけですからそれを実行することですね。ただ、その実行は効率的に、より少ない要員でやらないといけないだろうと思います」 ◆良き販売者になる ―肥料の需給やメーカー各社の状況はどうですか。 「需要は毎年、前年比で平均3〜4%減がここ10年間続いています。要因は減反、コメ輸入や中国などからの農産物輸入増加、そして減肥です。メーカー各社の生き残り作戦も徐々に打つ手が底をついています」 「肥料はメーカー段階で付加価値をつけるのが難しい性格の商品だと思います。製造方法もこの30年間、画期的な技術進歩がありません」 ―合理化も手詰まりですか。 「私は三菱商事の子会社であるコウノシマ化成(株)の社長もやりましたが、1社だけの合理化には限界があります。他のメーカーと力を合わせないとね。化成肥料工場は約50社ですが、半分以下にならないと他産業並みにはならないと思います」 「2工場を1つにし、しかもその1工場の人員を半分に減らして計4倍の効率にしないとダメです。また流通段階では1人が今の2倍の数量を扱うようになれば他産業並みです」 「私どもは農業生産者に対するサービスの度合いをもっと高め、良き販売者になることにより、従来とは違った形で1人の肥料取扱量を2倍にしたいと考え、その手始めに農産物販売を始めたわけです。それをやらないやつは怠け者といえます」 ◆肥料製造肩代わり ―業界地図は変わりますね。 「ここ20年、肥料メーカーの撤退が続いています。その場合ですね。例えば三菱レイヨンさんが子会社であるトモエ化学工業(株)からの撤退を考えると、三菱商事がトモエの株式を取得し、筆頭株主として経営責任を担い、肥料事業を肩代わりするということをやっています。このところこの種の肩代わりは立て続けです」 「その背景には、日本の農業と国産農産物を大事にし、それに関わる肥料事業にコミットし続けていくという三菱商事トップの考え方があります」 「食料自給率40%後半という目標でなく、1日も早く50%以上へ持っていくという時代になってほしいと思います。1億3000万人の食料を支えていかないといけないのですから」 ―肩代わりに際して御社はどんな役割を担うのですか。 「三菱商事といっしょにアレンジメントなどをやります。商事の肥料事業をコーディネートするというか、我が社にはそうした機能が深まっています」 ―ところで、三菱商事は全農とプロジェクトを組んでヨルダン肥料の開発輸入を軌道に乗せましたが、「アラジン」の取り扱いはどうですか。 「全農8、我が社が2の割合で販売しており、我が社分は完売しています。低コストの海外生産ですから、ヨルダン肥料の競争力は強いですね」 ―最後に肥料販売の仕組みをお聞かせ下さい。 我が社はメーカーの元売りとして卸商(特約店)に販売するお手伝いをし、与信そして代金回収、さらにメーカーに末端情報を提供しています。
(2003.6.26) |
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