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この人と語る21世紀のアグリビジネス |
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◆SS投資から経営受託まで、多いセルフへの転換
協同会社再編の一環です。しかし会社側としても川上から川下へ出て行かざるを得ない状況もあり、これを契機に、建設事業等をやめ、SS運営受託に集中するための事業の再編成に取り組みました。 ――川下といいますと?
JA−SSのことです。ご存じの通り、ガソリンスタンドの競争は非常に激しい。その中でJAの場合は規模が小さく、収支のとれないSSが多い。しかも多くのSSが建設から25年を経て老朽化している。しかし更新は困難です。固定比率が高く、JAとしては新たな投資が難しいのです。
そうです。合併前の全農燃料ターミナル(株)は石油とLPガスの基地を安全に管理するのが最も大きな仕事でした。他方、全農燃料テクノ(株)はLPガス充填(てん)所やSSの建設が主要な仕事でした。 ――JAのスタンドは全国にいくつあるのですか。 約4500です。1JAで30ヵ所ほどを経営している大型JAもあります。経験からいうと採算ラインはフル方式のSSで1月の販売量200キロリットル、セルフ方式で300キロほどですが、現実にはわずか10キロ、20キロという店舗もあります。
綿密な調査や再編成が前提です。以前はJAが投資し、当社が経営するという考え方でしたが、実際にはJAの投資はほとんどなく、今は当社が投資まで引き受け、老朽化した小規模スタンドを再編成しています。リスクも、そちらでみてほしいといわれているからですが、ビジネスにはリスクがつきものですから基本的に引き受けています。 ――専門的なスタッフがたくさん必要ですね。 埼玉の草加とか所沢、山口の下関などのSSを運営してきた蓄積がありますが、それでは追いつかないので、他部門の社員も、それらの店で訓練して現場へ送り出しています。選択と集中でヒト、モノ、カネをSS受託に投入しています。 ――何ヵ所で建設中ですか。 昨年までは1年に2、3ヵ所でしたが、現在は約10ヵ所です。年内には25ヵ所の新設・改増を含めて受託数は50ヵ所近くにのぼる見込みです。とにかく全国から委託要請はすごい。人件費がかからないようにとセルフのスタンドに改造するケースが多い。もちろん旧式でも使える部分は、そのままにして運営します。それから1JA数ヵ所のSSを少数の店舗に集約する再配置も必要です。 ――投資規模はどれくらいですか。借り入れはどこから? 1ヵ所平均で1億円ほどです。市中銀行から借りていますが、自己資本の5倍程度が限度です。JAの金融は建設地に本社がないと借りられません。やはり悩みはカネとヒトですね。
――全農オート(株)も一緒に合併となりましたが。 全農本所の自動車燃料部が自動車事業から撤退して燃料部となったため、新車事業を支援する形だった中古車事業が、それだけで事業として成り立つかどうか収支を厳正に検討する必要があると考えています。 ――LPガス供給のほうはどんな状況ですか。 今は大丈夫ですが将来はこれも撤退したいというJAが出てくると思います。そこで、うちとしては秋田でJAあきた白神から引き継いだ小売事業を展開したりしています。また茨城ではJAグループと出光グループが組んで水海道市に大型のガス充填所を建設し、当社は共同検査所を含めて運営をし始めています。共同の輸送会社も設立することになっています。LPガスも川下へ向かう感じです。
1位がガソリン、2位が灯油、3位軽油、4位重油です。 ――とにかく燃料事業は全農全体の収支面の柱ですね。 燃料事業は全農の経営に大きな貢献をしています。しかしJA−SSは赤字で老朽化しているものが多い。だから、もっと燃料事業を活かす投資が必要になっています。 ――前期決算はどうですか。 売上高も経常利益もほぼ計画通りです。しかし今後は厳しいですね。石油基地が山陽と東海で閉鎖されたこともありますしね。 ――それは合理化ですか。 以前と違って元売り間の壁がなくなり、SSは近い精油所から直接、製品を受け取れるようになったので、2次輸送の必要性が減少したのが理由です。
そうですね。私は全農時代に4年間、ニューヨークに駐在し、娘も現地の中・高校で学びました。その時、アメリカ人の社会科の先生から『国家の基本は食料の自給とエネルギーの確保です。それを他国に頼っていている日本は、いくら車を売りまくっても国としての形をなしていないのではないか』といわれてショックを受けたといいます。私も社会科の先生に同感です。 ――しかし日本では、農業者とJAと消費者にすべて委ねられてきています。国内産を買うのも買わないのも生産者と消費者の責任にされそうです。 地域農業を守るのは『農協の仕事だ』といわれても、その責任は重過ぎて果たしきれないように思います。 ――考えて見れば、営農指導ではメシが食えないのというのに、それを負担したうえで経済事業の収支がとれなければ、平成17年度には、抜本的改善かやめるかどうかを考えなさい、というのはすごい論理ですね。 JAグループとしては非効率な部分を反省し、改革しなくてはなりませんが、そうした事業面と、食料安保などの国家の課題は区分して考えないと責任があまりに重すぎて身動きができないような気がします。国が確固とした食糧と農業のビジョンをもち、その基盤のうえにJAグループが事業を通じて農家に貢献するのが本筋だと思います。 全農エネルギー株式会社(東京都千代田区猿楽町1)
(2004.6.2)
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