高付加価値生産を支援 (
新たな養豚経営安定対策(平成13〜15年度)
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13年度の畜産酪農政策価格と関連対策は、今回から前年の秋に決定されることになり、JAグループは9月初めに要請事項を決め運動に取り組んできた。
要請では、新たな畜産経営対策の確立や生産基盤の維持確保、コスト低減などを求めたが、政策価格と関連対策ともほぼ要求に沿った決定となったとJAグループでは受け止められている。
このうちJAグループが求めていた新たな養豚経営対策については、経営安定対策である「地域肉豚生産安定基金造成事業(地域肉豚)」と「生産振興対策」の二本柱で構築されることになった。
「地域肉豚」は、ウルグアイ・ラウンド合意をふまえ、輸入基準価格と関税の引き下げにともない、価格が低下した際に補てんする制度について、国が資金援助する事業として発足した。当初は、12年度までの事業だったが今回の決定で継続されることになった。
仕組みは、都道府県レベルで基準価格を決め、それを下回った場合に生産者の積み立てた財源から差額が補てんされるものだが、その財源を国が支援するというもの。財源がなくなった場合でも国の支援があるため、価格が下支えられていた。
その資金援助の発動基準価格が、今回の焦点のひとつだったが、基準価格は従来どおり「1s400円」と決まった。3年間で総額50億円の予算となっている。
もうひとつの柱である生産振興対策は、@生産効率の改善に資する器具、資材、簡易施設などの整備、A肉豚の銘柄化の推進、B高付加価値生産豚肉の産直体制の確立などを対象メニューとして資金援助を行うこととした。肉豚の銘柄化の推進が目玉となった。3年間で18億円の予算。
充実した経営対策事業へ転換 (
肉用牛肥育経営安定対策事業
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肉用牛の経営安定対策は、従来、経営に必要な経費を補てんする「肉用肥育経営安定緊急対策事業(マル緊事業)」があったが、これを「肉用牛肥育経営安定対策」として見直しを行った。
現行のマル緊事業は、肥育農家の所得が家族労働費を下回った場合に一定の経費を補てんする事業で、全国事業と県ごとに積み立て基金を造成して行う地域事業の2本立てで行われていた。(生産者2分の1、国費2分の1)。また、最大で一頭あたり4万円と補てん限度額が設けられていた。
これを見直した新マル緊事業は、全国事業と地域事業を一本化し、国費4分の3、生産者4分の1で県ごとに積み立て基金を造成、所得が低下した場合は、県の計算で発動し、補てんは家族労働費の8割まで補てんされることになった。家族労働費を1頭(肉専用種)7万5000円とすると、新制度では最高6万円までの交付水準となる。
補給金単価は現行制度水準を維持 (
加工原料乳の経営安定対策
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市場原理が導入される酪農分野では、加工原料乳価格は政府ではなく、乳業メーカーとの相対取引によって決まる。そのため、生産者の所得確保対策として、従来の不足払いにかわる補給金と価格補てん制度が導入されることになっているが、今回はその基準価格の決定が大きな課題となった。
決定された内容は、新補給金は現行制度の補給金と同額で1kg(以下同)10円30銭となった。この価格に相対取引価格を上乗せした価格が手取り価格となるが、相対取引価格はこれから乳業メーカーとの交渉で決まる。現行では取引基準価格は61円83銭で、それと同額になれば、現行の保証乳価72円13銭となる。
一方、それを下回った場合の対策としては、補てん制度が導入される。その補てん基準価格は、現行の取引基準価格である61円83銭とされた。
補てん率は、基準価格との差額の8割。基金は、生産者1、国の助成3の割合で積み立てる。新たな米政策で導入された稲作経営安定対策と同様の仕組みとなった。
円滑な移行対策も実現
酪農ではすでに市場実勢を反映した適正な価格形成などを柱とする「新たな酪農・乳業対策」が決定されており、今回の関連対策は大綱実現のための具体策といえる。
JAグループとしては、生乳の需給調整が新たな制度に移行するのにともない、「円滑な移行対策の確立」も求めていた。なかでも加工原料乳の過剰在庫の原因となっているバター対策の実施を要請していた。
この点について、関連対策では需要面での対策として@臨時応急的特例的な対応として全国連によるバターの安値販売の取り組みへの助成、A国産バターに関する商品情報野提供やイベントの開催など販売活動の実施を決めた。安値販売への支援は12年度中に実施する。
また、供給面での対策としては、バター在庫がさらに積み上がることがないよう飲用向け量を拡大し、それにともなって加工原料乳の限度数量を13年度は前年より13万トン少ない227万トンとした。
また、生クリームなどの生産振興を図り、国産生クリーム向け生乳の需要拡大のために助成を行う。これについては限度数量を超える加工原料乳が生じた場合に備え6万トン分の枠を確保した。同時に国産ナチュラルチーズの生産振興のため、チーズ原料乳の生産を奨励する。
これら牛乳・乳製品の加工・流通・消費対策として約209億円の予算が確保されている。
「牛乳」の表示ルールづくりへ
一方、酪農対策の課題のひとつとして、牛乳・乳製品の表示の改善もある。JAグループも消費者が適切に商品選択できるよう、生乳を主原料としているものについてのみ「牛乳」と表示することなどを求めていた。
この問題については、11月16日に「飲用牛乳の表示のあり方等に関する検討会」が報告書をまとめ一定の方向を示した。
それによると、表示の改正の方向として@生乳の使用割合を表示すること、同時に牛乳・部分脱脂乳・脱脂乳については「生乳100%使用」の表示を行うこと、A加工乳・乳飲料の商品名には「牛乳」の文言は使用不可とすること、B商品区分(種類別)の表示のうち、部分脱脂乳と脱脂乳の名称を消費者に分かりやすくするため、それぞれ「部分脱脂牛乳」、「無脂肪牛乳」と改称することが適当、などどとなっている。
報告書では、これらの提言を酪農・乳業の安定的発展を図ることを目的としたものであり、今後、早急に表示の見直しが具体化すること要望している。
そのほか、生乳の円滑な取引のあり方、経営継承システムの確立や、畜産環境自給飼料対策など今後に残された課題も多い。JAグループの取り組みも重要になる。
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