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検証・時の話題


食と農、問われる国の責任
JAグループの意思強く表明を

 米政策の見直し、WTO農業交渉など山積する農政課題の議論や交渉が今月から本格化する。8月30日、、武部勤農相は経済財政諮問会議に「食と農の再生プラン」の具体化策を説明、農地制度の見直しや農協改革にも着手することを明らかにした。こうしたなかJAグループは、8月28日に農業政策確立緊急全国代表者集会を開き、農業政策確立を求める決議を採択するなど、さまざまな課題解決に向けての取り組みを一層強化する。当面の運動の焦点をまとめた。

◆「食と農の再生プラン」に不安感を持つ生産者

 

 農水省は、4月に「食と農の再生プラン」を策定し、さらに6月には同プラン実現に向けた「工程表」を発表した。
 このプランには、食の安心と安全確保や農業の構造改革の加速化などが盛り込まれているが、株式会社の農業参入の検討や米政策の大転換を示すなど、JAグループは「その内容は、むしろ農業者にとって不安を与えるもの」と捉え、8月28日の全国代表者集会でJA全中の宮田勇会長は「秋に向けて課題は多岐にわたるが、JAグループの意思を表明していくことが大切だ」と参加者に向けて呼びかけた。
 具体的には、まず15年度農業予算の確保がある。農水省が決めた来年度予算の概算要求は前年にくらべ12.8%増の3兆5983億円。
 しかし、政府の方針は財政の削減で年末には厳しい査定が見込まれている。JAグループとしては「小泉内閣は厳しい財政運営を行っているが食と農の大切さは変わらない」(宮田会長)と認識。各地で食料自給率向上をめざす農業者の取り組みが行われていることから「基本計画」の実践、食の安心・安全確保に向けた施策の充実のため「予算の万全の確保」を求めていく。
 米政策では、「国の役割と責任の明確化」を強く主張する。そのうえで、生産者が計画的生産に主体的に取り組むことができるような条件整備、生産者全員の負担による過剰米処理対策など、9月5日に決まるJAグループの政策提案実現をめざし11月末の米大綱決定に向け全力をあげる。基本はあくまで「現場の理解と納得」だ。

◆株式会社参入に反対
  消費者との連携強化も

 WTO農業交渉は、市場アクセス(国境措置)と国内支持を議論する9月が重要なときを迎える。JAグループは、大幅な関税削減やアクセス数量の拡大を求める米国の主張は「断じて認められない」とし、米のミニマム・アクセス改善と総合的な国境措置の堅持、新セーフガードの創設などが実現するよう国内だけでなく、アジア、EUなどの理解、支持を確保する運動に取り組む。
 「食と農の再生プラン」のなかで、もっともJAグループが懸念しているのが、株式会社の農業参入問題だ。
 同プランでは農業経営の株式会社化など法人化の促進とあわせ、「農企業創生特区」の導入など株式会社の農地取得が可能となるような方向も視野に農地法の見直しを行うことを明らかにしている。
 JAグループは、十分な検証がないまま規制緩和すれば、集落に混乱をもたらし家族経営の否定にもつながるとして「拙速な見直し」には強く反対していく。
 こうした山積する課題に向けてJAグループは運動を進めるが、消費者との連携強化も重視していく。

◆農相、農協改革も重視
  ―経済財政諮問会議で表明

 武部農相は8月30日に開かれた経済財政諮問会議で「食と農の再生プラン」の具体策を説明し同会議で議論された。
 具体策は7月19日の小泉首相からの指示に答えたもので、いわば夏休みの宿題の提出だ。首相指示は農協改革や農地法見直し、米政策改革など4項目あった。
 同会議で武部農相は、食糧庁を廃止し食品安全委員会を設置することや、「意欲と能力ある経営体への施策の集中」のため15年度予算を組んだこと、売れる米づくりを基本にした米政策大綱を11月に決定し15年以降改革プロセスを実行すること、農地制度の見直しを検討することなどを説明した。
 具体策のほとんどは、すでに明らかになっていることだが、農協について「農協の構造改革」との表現で関係法制度の見直しに着手することを新たに示した。
 農相は、同会議で農協に対して「企業家マインドに乏しい」、「農家よりも農協のための農協になっている」などの批判があることを紹介し、「組織・事業の効率化、スリム化」、「アグリビジネスとの公平な競争条件の確立」、「補助金依存体質からの脱却」に向けて改革することを表明した。9月下旬に有識者との検討の場を設置し、今年度末までに改革の方向をとりまとめる。
 JAグループは大会決議の実践など自ら改革に取り組んでいるが農水省は「主体的な改革だけではなく、制度的な改革が必要」(企画評価課)と判断した。
 同会議で農相は「農協型株式会社があってもいいのではないか」との持論を持っていることも話したという。委員は農協改革の方針を評価する意見で一致、「農協は独占禁止法の適用除外の分野がある。これについても検討する必要があるのではないか」との指摘もあった。竹中平蔵経済財政担当相は「年度内にしっかりやってほしい」と農相に語った。
 また、米政策改革について同会議後の記者会見で「意見を集約するのは容易ではないが、先送りすることは断じてすべきではない。11月には決断し米政策を転換する」と述べ、自ら政治決断する考えを示した。また、同会議では複数の委員から「生産調整の廃止も視野に入れてほしい」との指摘があったという。
 農相が示したプランについて同会議では「異論はない。着実に推進してほしい」(竹中経済財政担当相)と評価された。また、改革がなければ解体が迫られるとの気持ちで農林水産業行政に取り組んでいるとの姿勢を武部農相が示していることについて、小泉首相は「いいなあ、そのような決意でやってほしい」と述べた。また、「都市と農村、農業と工業は対立しない。共生、対流するという考え方は以前から感じている」とも語ったという。




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