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昨年秋の全国代表者集会。今年も7月の政策提案決定後に集会を開く。 |
米政策の改革に関し現在、組織討議を実施している項目には、大きく分けて二つの範疇がある。
一つはJAグループ自ら取り組む課題や、自らの取り組み方針を提起した「JAグループの米改革戦略」である。その内容は生産段階での構造改革の取り組みと、流通・販売段階での米販売事業の改革の取り組みを柱としている。
もう一つの範疇は、今夏の16年度農業関係予算の概算要求を固める時期に決定を予定している16年度からの新しい米政策に関する財源確保や事業の要件・基準などの政策の具体的仕組みに係る我々JAグループの考え方なり要求内容についてである。
◆JAグループの要求や意見の十分な反映を
今夏、熱い夏にできるか―。といっても米の豊凶、作柄に関して天候のことを気にしているわけではない。現下の極めて厳しい経済・財政状況、16年度政府予算における小泉内閣の方針等から、16年度からの新しい米政策について財源確保や具体的仕組みの要件や基準において、我々JAグループの要求や意見を十分反映できるかどうか、その正念場という意味である。
我々の農政運動のエネルギー、要求を実現しようとするエネルギー、7月、8月の重要な時期に、それまでのプロセスも含めて我々の運動エネルギーを熱くしなければという思いを込めての意味である。
米政策改革の具体策に関する我々JAグループの政策提案、要求内容は今、実施している組織討議をふまえて、7月14日の水田農業対策本部委員会、中央会会長会議で決定する。
農水省は8月上旬の16年度予算の概算要求基準の決定、8月下旬の概算要求決定を控え米政策改革に関する予算は7月末までには、決めておきたいと考えるのではないか。だとすれば、7月中下旬が山場となる。意思決集をはかり、都道府県段階、全国段階と運動を盛り上げ、7月下旬の正念場へ向け、エネルギーを高揚させて行かなければならない。
◆現段階の政策提案の考え方
(1)食料・農業・農村基本政策の確立
米政策の改革は平成22年度を目標とした「農業構造の展望」と「米づくりの本来あるべき姿」を実現することが前提である。そのうえで、20年度からの生産者・団体が主役となる計画生産への取り組みの実現があるわけである。
そのためには、基本政策として食料自給率目標の実現に向けた耕畜連携対策、バイオマス対策、美しい農村環境づくり対策など新たな水田の活用政策と農業が果たす多面的機能を促進する政策、集落営農も含めた担い手への農地利用をすすめる画期的な政策の確立が必要である。
また、担い手を確保・育成し、意欲を高めるためには、米だけの当面の経営安定対策では不十分であり、本格的な新たな経営所得安定対策の具体化が必要である。
こうした総合的・抜本的な基本政策の確立のための農業関係予算は、従来の枠組みにとらわれないで重点化・集中化する必要がある。
(2)生産調整実施者へのメリット措置の充実・強化
米政策改革の具体化は、こうした基本政策の確立を前提に置き、JAグループ自らの取り組み強化をはかるためにも生産調整実施者のメリット対策の充実と十分な予算の確保が必要である。
(1)産地づくり対策=助成総額は想定される今後の米需要・米作付面積の減少や産地づくりの取り組み増加に十分対応できる水準の確保が必要であり、県別配分の算定にあたっては担い手の定義や交付単価等は現行の麦・大豆等の本作化の取り組みとの整合性や実態をふまえたものとすることが必要。
(2)米価下落影響緩和対策=補てん基準価格の算定やこれに対応する生産者拠出と政府助成の割合、それに補てん割合は現行稲作経営安定対策をふまえたものとすることが必要。
(3)担い手経営安定対策=米作付面積当たりの基準収入や生産者拠出と政府助成の割合、及び補てん水準は、(2)と整合性を確保する必要がある。また加入対象者の規模要件は地域特性をふまえ、地域で設定できる仕組みとすることが必要。
(4)過剰米短期融資制度=この制度における豊作分を区分出荷した加工用途等への米の生産者手取りは、生産者拠出と政府助成をあわせ、加工米手取り水準とすることや、販売経費を含む係増経費や新規需要の開発に必要な費用の助成が必要。
(5)安定流通確保のための対策=生産目標数量が需要と在庫状況を基本に配分される仕組みの中で、需給と価格の安定をはかるため流通の大宗を占める県間流通銘柄米を中心とした主体的な需給調整の取り組みに対する支援対策が必要。
(6)消費拡大対策=米をはじめとした国産農産物の消費拡大や新規需要開拓等に向けた対策を強化することが必要。
(7)円滑な移行対策=米政策の改革を円滑にするため、政府米持越在庫は、国内需要に影響させず政府の責任で適正在庫を実現することが必要。
◆JAグループ米改革 戦略のキーポイント
米政策改革で大きく状況が変わると考えられるものを集約すれば二つだと言える。
一つは流通の自由化、より一層の多様化・弾力化がすすむということである。計画流通制度が廃止され、業者区分なし、自主流通計画なし、流通ルートの特定なしという状況の中で、各産地は実需者や消費者から選択されることになっていく。
もう一つは生産目標数量が需要・在庫状況等を基本に配分される点である。米の需要減少は当面、毎年10〜13万トン減少すると予測されているが、こうした需要減を全国が背負うのではなく、売れる米づくりの取り組みにより需要確保をはかりながら、結果として各都道府県の実態に基づいて行なわれることになる。そのためには、米以外の作物、担い手の確保・育成、農地の利用集積などの構造対策に取り組む必要がある。
(1)水田農業の構造改革へ向けた取り組み
JAは「地域水田農業ビジョン」を行政等と一体となって策定し、面的なまとまりをもった水田営農実践組合を核に担い手を育てながらビジョンの実践をはかり、水田農業の構造改革をすすめることが必要と提起している。
このため、売れるものを生産する作物戦略、販売戦略の策定、毎年の生産・販売計画の策定、生産調整方針の策定を行なうこと。地域の創意工夫ある取り組みと産地づくり対策の活用方法の自らの提案。実践組合ごとの担い手の明確化や農地の利用集積、集落型経営体の育成をすすめる必要があると提案している。
(2)販売を起点とした米事業方式への転換
これまで全国一律的に実施していた事業方式から「販売可能な量だけ作る」という事業方式に意識の転換をはかる。そしてJAと連合会の機能分担を県間流通銘柄主体の県や大消費地近郊県などに類型化し、地域の実態に応じ再構築し、販売と連動した多様な出荷契約の選択肢の設定や共同計算の細分化などを提案している。
また、銘柄が確認できた種子により栽培され、栽培履歴記帳が確認され、検査機関で受検された米を「JA米」として確立し、出荷契約で生産者と確認するとともに、全生産者による栽培履歴の記帳・確認の体制を構築すること。そしてそのJA米の各段階での年次目標の設定と数量の拡大に取り組み、JAグループの優位性を確立したい旨、提起している。
こうした、JAグループ自らの米改革戦略は、10月開催の第23回JA全国大会の決議とし、自らの事業計画として実践していくことになる。
こうした取り組みを目標に向け着実に実践していくためにも、今夏に決定する予定の米政策改革の具体的政策における仕組みや基準・要件、そして財源確保が我々の考え方に即したものにならなければならない。 (2003.6.23)