◆「地域水田農業ビジョン」を改革の核に
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担い手は地域での話し合いで特定することがJAグループの考え方だ |
JAグループは集落から今後の地域農業の姿を描く「地域水田農業ビジョン」づくりとその実践に取り組んでいるが、担い手・農地制度の改革には、この「地域水田農業ビジョン」を制度的に位置づけることを求めている。
具体的には経営基盤強化法の「農用地利用改善団体」の規程の拡充や強化だ。地域水田農業ビジョンの策定により地域の合意で担い手の特定や明確化を図ったり、農地の利用集積計画や作付け作物などを決めるが、こうした内容を農用地利用団体が協定として設定できるようにし、ビジョンが実現できるような仕組みをつくることが必要だとしている。
また、担い手については多様かつ幅広い担い手の育成・確保が基本だ。
稲作中心の認定農業者数は5万程度と少なく、市町村では独自の基準で担い手を定めて農地の利用集積を図っている実態にある。こうしたことから現行の認定農業者制度を見直し、地域の実態をふまえた「意欲ある者」、「育成すべき者」、また、地域の農業者が参加した集落営農などを幅広く担い手として認定すべきだと主張している。
とくに現在の基本計画見直し論議では、施策の対象を全国一律の経営規模要件で決める方針が農水省から打ち出されているが、そのような要件ではきわめて限られた農業者だけが対象になってしまうことが考えられることから一律の要件設定には反対していく。
農業への新規参入については農地の農業利用を担保することが不可欠だとし、リース方式による一般の株式会社の農業参入についても、農地として利用されることを前提に、関係機関との事前協議や適切な実効確保のもとで実施することを要請。農地の所有権取得は認めないことを求めている。
また、農地の農業利用を担保する措置としても農用地利用改善団体の機能を拡充することが必要だとし、農業に利用されない農地に対する借入協議や、転用の際には地域で協議する仕組みを作るべきだと提言している。
◆数量支払い全生産者を対象に
品目横断的な直接支払いなどによる経営安定対策については、施策の対象が焦点となっているが、JAグループは、意欲ある者、育成すべき者のほか、法人化前の集落営農や受託組織も対象とすることを強調している。
とくに麦や大豆などの生産には共同利用組織や受託組織による効率化が大きく進んでいることから、これらの組織が担い手として経営安定策の対象に位置づけられなければ、麦・大豆の安定的な生産や、米の生産調整も崩壊する懸念がある。これまでの審議会企画部会でも施策対象を絞り込めば「担い手以外の生産者はみな米づくりに走ってしまうのではないか」との意見がしばしば出されている。
また、面積支払いと数量支払いによる日本型直接支払い制度については、現行の手取り水準を確保することが前提だとし、とくに「数量支払い」については「対象となる作物の全生産者を対象にすること」を求めている。
また、品目横断的な直接支払い策と同時に、収入・所得の変動緩和対策の導入も検討されている。直接支払いの仕組みだけでは価格変動による経営への影響を避けられないからだ。JAグループではこの問題については、収入・所得に着目したあるべき「モデル」を設定し、その設計での最低水準の収入・所得を下回った場合には、追加して補てんを実施するなどの仕組みを盛り込み「真のセーフティネット」とする制度が必要だと主張している。
そのほか、経営安定策の仕組みの具体化にあたっては、関税率の低下にともなう内外条件格差が拡大した場合、支援水準を是正することや、支援対象作物も拡大できるように検討することも要請している。
◆農村振興策とパッケージで改革を
資源保全対策について審議会企画部会の中間論点整理では「施策を導入していく必要がある」としているが、JAグループでは本格的に実施するかどうかきわめて不明確だと批判。
現場では資源維持のため地域の多様な農家、住民などによる「協同」の取り組みが不可欠な実態にあることから、これを支援する全国的な直接支払い制度を農村地域政策として措置することを求めている。
とくに実施は19年度からの新たな経営所得安定対策と一体的に実施することも要請。担い手への施策の集中化の一方で、地域全体へ支援策も導入するという「パッケージ」での政策実施を強く要請している。
そのほか、食料自給率の向上のために「戦略的な目標」の設定が必要だとし、生産面では麦・大豆のほか、加工原料米、国産稲わらの利用拡大、稲発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ)、飼料用米などの生産拡大についても目標を設定するとともに、これらの作物を対象にした直接支払い制度や、経営所得安定対策の対象にすることなど抜本的な検討の必要だと強調している。
◆自給率向上につながる施策確立を
自給率目標については審議会では年明けから議論する予定となっているが、JAグループは平成22年にカロリー自給率を45%に引き上げることについては目標として明確に掲げ、今後、自給率を向上させる徹底した政策展開をはかり、これまでの個別政策の検証と評価も行って、27年度目標を設定することが必要だとしている。
新基本計画策定に向けた議論は12月はじめに企画部会で議論の整理が行われて来年3月末の具体的な計画づくりに進む。
焦点のひとつは、自給率向上に向けた担い手像。JAグループは多様かつ幅広い担い手こそ農業、農村の持続的発展のために必要と強調しているが、農水省は構造改革を進めるという名目と予算のバラマキ批判をかわすため、「あくまでも一定の規模を満たすものにする。これを対象にすることが重要」(石原事務次官)との方針だ。何のための改革かを視野に入れた粘りづよい主張と議論がJAグループに求められている。
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