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検証・時の話題 |
共通認識はできたのか―農業の将来像に― 2004年の農協運動を振りかえって 課題積み残した基本計画見直しの議論 |
JA全中 山田俊男専務に聞く 聞き手:梶井 功 東京農工大学名誉教授 |
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◆WTO農業交渉――アジア諸国との連携を
梶井 今日は2004年の農政課題へのJAグループの取り組みの総括と来年に向けての展望をお聞かせいただきたいと思います。最初にWTO農業交渉についてですが、夏に枠組み合意をし、来年末の香港閣僚会議で決着をめざすことになりました。今年の評価を聞かせてください。 山田 昨年9月のカンクン閣僚会議決裂以降、具体的な動きが不透明でしたが、今年になって米国大統領選もあって交渉が動き、8月1日に基本的な枠組み合意に至りました。 ◆EPA(経済連携協定)――協同組合としての協力関係づくりを 梶井 アジアとの関係ではEPA(経済連携協定)交渉も進められていますが、どう評価していますか。 山田 われわれは一貫して両国の農業者と国民の発展につながるEPAでなければならないと主張してきました。そのためには単にモノの貿易自由化をすればいいということではなくて、たとえば農業基盤の強化、所得の安定、食の安全・安心の基盤樹立などについての協力をしっかりとベースに置くべきだということです。 梶井 その点はマスコミではあまり強調されていませんね。 山田 どうしてそういう約束をしたのかという点がもっと伝われば、アジア諸国とのEPAの理念への認識が広まると思います。 ◆基本計画見直し――水田農業の課題「農地」と「担い手」が最大のテーマ 梶井 さて、今年は基本計画の見直しも大きなテーマでした。これまでの議論を振り返ってみていかがですか。 山田 全中のスタッフとともに、私も大変忙しい思いをしてきましたが、率直にいって今は、この忙しかった一年は一体何だったのかという思いがあります。 梶井 品目横断的な政策など大臣諮問の3つの問題についての議論から始まったわけですが、そもそも基本計画の柱は自給率の引き上げですね。ですから、担い手を絞るにしても、それが自給率の引き上げに役に立つのかどうかを議論しなければならなかった。 山田 たとえば、担い手育成の問題についても、それは農地の利用集積ができるかどうかにかかっているわけです。それなのに担い手については、所得基準からだけ考えて、これだけの規模が必要になる、と示すだけ。問題はその規模にもっていくためにどういう農地利用の調整が可能なのか、です。簡単に集落営農で20ヘクタール、個別経営で4ヘクタールなどといっても集落の現実の規模をみれば容易なことではありません。地域の実態から離れた議論になってしまったと思いますね。 梶井 日本の場合は、零細所有のうえに立って、大経営をつくりましょうというのですから、零細所有の農地をどうやって特定経営に集積していくか、これは欧米にはない大問題なわけです。 山田 農地が分散していることも問題です。個別経営を育成することが大事だという点はわれわれも否定はしませんが、分散している農地を団地的に集めるということなしには大規模経営だって生産性は上がらない。10町歩農地があるといっても80筆にも分散している。だから、コストが全然下がっていないということですね。このような誰にでも分かるわが国水田農業の実態についての検証をするべきなんです。 梶井 担い手を育成することが問題なのか、日本農業の生産性を上げることが問題なのか、今、問題にすべき点は後者でしょう。そこが明確に意識されていないようですね。 ◆農地政策――国土利用の根本からの検討を 山田 それから農地を農地として利用する対策は非常に大事です。みなさん資産として所有しているわけで、それがいつか他に転用されるという話になれば誰も手放さないし、利用も集積できません。そういうなかで、農地を社会的に利用するにはどうすればいいかを考えると、農地政策の枠内にとどまらず国土利用全体まで考える必要があるわけですが、議論は全然そこに至っていない。 梶井 本来は、“建築自由”の原則に立っている日本の土地利用のあり方をどうするかの議論をしなければならんのに、…ということですね。ところで自給率の問題もあまり煮詰まっていませんね。 山田 たとえばこれまで生産が伸びているのは麦、大豆で、その生産を担っているのは受託組織です。ところが、担い手を議論すると受託組織は担い手に位置づけられないという。ましてや経営安定対策の議論になると経営主体が明らかではないから対象にはならない、などの意見も出る。自給率向上につながる麦、大豆の生産振興と担い手や経営所得安定対策の対象の議論がかみあっていないわけです。こういう議論の仕方が問題です。 梶井 それは目的抜きに担い手育成が必要だと言っているからですね。まず担い手育成ありき、になっている。何が「基本計画」の柱なのかの議論がなくなっていることが問題です。 ◆地域水田農業ビジョン――集落段階でさらなる議論を
梶井 先ほどの農地利用のあり方と関連することですが、今年は地域水田農業ビジョンの策定がJAグループの重要課題でした。どう評価されていますか。 山田 少なくともこの1年かけてビジョンづくりに向けて集落段階で議論が進んだことは大きかったと思っています。 梶井 集落でどういう作物をつくるか議論すべきだといっても、では、その作物に政策的なバックアップはあるのかどうか心配になりますよね。今度の産地づくり交付金にしても地域で使い方を決めるということになったわけですが、同じ作物でも地域によって助成単価にばらつきが出てきていますね。これでは国全体の基幹作物対策とはならない。 山田 そこは今年の実績もふまえて十分に手直しを考えていかなければならない課題だと思っています。 ◆来年の課題――担い手育成と地域貢献で国民理解を深める 梶井 さて、JAグループ自体も経済事業改革などに取り組んできましたが来年の課題はどんなことでしょうか。 山田 全中だけではなく、全農、全共連、農林中金からもスタッフが集まって経済事業改革推進室を設置し、現在、各県にマスタープランを作成してもらうようにしているところですし、さらに詰めきれない課題がある場合には県段階と全国段階が一緒になって経済事業改革を推進するという方式をとってきました。JA、県、全国段階一体となって取り組んだという手法は高く評価していいと思います。来年はさらに一層取り組みを強化して成果を上げたいと考えています。 梶井 来年のJAグループの取り組みに期待します。
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(2004.12.24) |
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