農業協同組合新聞 JACOM
 
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検証・時の話題

輸入野菜
業務用需要に応え国産シェアの拡大を
生鮮よりも影響大きい冷凍など加工品輸入
 平成15年の生鮮野菜累計輸入量は89万9000トンで、14年より12万1000トン・16%増えたと1月30日に農水省が発表した。
 生鮮野菜の輸入は、昭和63年に20万トンを超えて以降、5年後の平成5年に41万トン、6年68万トン、そして12年に90万トンを超え13年には97万トンと戦後最多の輸入量を記録した。15年の輸入量は、3番目の輸入量ということになる(図1)。なぜ、生鮮野菜の輸入が再び増えたのかを探るとともに、これに日本の農業がどう対応していけばいいのかを考えてみた。

◆国産価格が高くなると増える野菜輸入量

 15年に輸入が増えたのは、前半に「にんじん」の国内産が品薄だったこと、「キャベツ」が天候不順で品薄になったこと、「ねぎ」が天候不順で供給が不安定になったこと、年間を通して「たまねぎ」の国内産が小玉で業務用に使われる大玉が品薄だったことから、いずれも価格が高くなったためだといえる。そのため、15年前半の輸入量が多くなっている。とくに、3〜4月の輸入量が多く(前年同月比で141%、169%となっている)、「キャベツ・あぶらな属」は7月までに前年のほぼ倍近い輸入量となっている(図2)。
 東京中央卸売市場でも、全体の取扱い数量が減少しているのに、輸入は1〜6月が20%以上増えたことから年間で前年比105%と増えている(表1)。同市場では「たまねぎ」の年間取扱高が14年から12%減ったが価格は6割高に。そして、国内産の品薄・価格高から輸入たまねぎの取扱高は前年比275%も増え、輸入品価格が同142%も上昇した(茨城県東京農産流通指導センター)。
 輸入が増えるのは、品薄などで「国内産の価格が高くなったとき」だと藤島廣二東京農大教授は指摘する。国内産価格が安いときに輸入しても、業者にとって利益が期待できないからだ。

◆肉類などの動向に左右される野菜需要

 もう一つの要因として、藤島教授はBSEなどの影響をあげる。それは、生鮮野菜輸入の中心である「たまねぎ」「にんじん」は、単独で食べられることは少ない。「たまねぎ」はハンバーグや牛丼の具材として肉類と一緒に調理されるし、「にんじん」はハンバーグやステーキの付け合せとして食べられることが多い。「キャベツ」もそうだ。BSEの影響で牛肉類の消費が落ち込み、14年の「たまねぎ」需要が大きく落ち込み、14年の輸入量は10万トン以上減り、牛肉の消費が回復してきた15年には前年より9万トン増えている。米国のBSE問題で牛丼が街から消えそうだが、これが「たまねぎ」の需要に再び大きな影響を与えるかもしれない。
 国内産の価格動向と他の食材とのからみ。これが、生鮮野菜の輸入動向を左右する大きな要因だということだ。
 また、市場では70〜80品目が品揃えされているが、レストランや居酒屋などの外食で使われる野菜は10品目程度だ。そして厳しい競争を勝ち抜くためにコスト引き下げが要求される。外食に納入する加工メーカーの話では、外食のメニュー価格の3割からよくて5割が納入価格だという。客単価3000円程度の若い人向けの居酒屋などでは1品単価300〜500円が多く、コストを下げるために、輸入に頼ることが多いと思われる。

◆輸入生鮮野菜の大半は「たまねぎ」など重量野菜

 藤島教授は、生鮮野菜の輸入が注目されることが多いが、「冷凍・乾燥・塩蔵など加工野菜の輸入の方が日本農業への影響が大きい」と指摘する。
 輸入されている生鮮野菜の品目数はかなりあるが、15年に5万トン以上輸入されたのは「たまねぎ」「かぼちゃ」「ブロッコリー」「ごぼう」「にんじん・かぶ」の5品目で、輸入量の63%になる(表2)。1万トン以上の輸入があったものに広げても上記の他に表2にある「ねぎ」から「アスパラガス」までと、表にはない3万7000トンの「キャベツ等あぶらな属」、3万トンの「さといも」と1万3000トンの「えんどう」を加えた14品目だ。この14品目で輸入量の94%になる。生鮮野菜として輸入されるものはかなり絞り込まれているといえる。
 14年の輸入量は13年に比べて19万トンほど減っているが「たまねぎ」と「かぼちゃ」で12万トン減少。15年は14年よりも12万トン増えたが「たまねぎ」と「かぼちゃ」で10万トン増というように、生鮮野菜の輸入量は、日持ちのする重量野菜に左右されている

◆生鮮の倍以上ある冷凍など加工品輸入

 そして葉物野菜の代表ともいえる「ほうれんそう」は生鮮ではほとんど輸入されず、冷凍され輸入されている。「馬鈴薯」も植物防疫法によって生鮮輸入はなく冷凍あるいは乾燥されて輸入され、国内消費の2割程度を占めている。
 大雑把なみかただが、加工品を加えた野菜の輸入量は、毎年300万トン弱あり、その内生鮮野菜が100万トン弱、加工品が180万〜200万トンある。加工品を生鮮換算すると300万トン。国内の野菜消費量は2000万トン弱くらいだから、消費量の2割が輸入ということになる。
 とくに冷凍野菜の輸入は確実に増え、現在、80〜90万トン(製品重量)あると推定され、国内消費の90%くらいを占めている。その7割は外食・中食・加工など「業務用」として使われ、家庭消費は3割程度だ。

◆減少傾向の家庭用需要、拡大する業務用需要

 野菜消費に占める家庭での消費は5割を切り、外食・中食など「業務用」が中心となってきている。藤島教授らの調査によると、外食利用頻度は年齢が上がると低くなるが「中食利用頻度は年齢が上がると高くなる」。今後も、中食利用に抵抗の少ない世代が高齢化するので、中食需要はさらに拡大すると予測している。
 人は誰でも楽をしたいと思っているのではないだろうか。無洗米が急速に伸びているのもその一つの表れだし、量販店などの惣菜売り場に人があふれるのもそうだといえる。
 一方で、野菜の消費量は増えておらず、今後、少子化・高齢化が進めば減少していく。つまり、野菜のマーケットは小さくなり、その中で「業務用」のシェアがさらに大きくなっていく傾向が強いといえる。
 国内野菜産地の多くは、家庭で調理されることを前提にした「生鮮に特化」している。最近は、「高付加価値商品」をということで「芸術品」ともいえる野菜が増えている。そのことを否定するつもりはないが、全体としてみれば、小さくなるパイ(市場)の奪い合いになり、産地の維持が難しくなるところが出る危険性がある。国産野菜の大きな販売先として「業務用」があることを真剣に考える時期にきているのではないだろうか。

◆機械化され在庫がもてる業務用に特化した市場を

 「業務用」は、市場流通などに比べて価格は安く、低コスト化が要求される。高度な規格が求められる市場流通では、どうしてもコストは高くなる。しかし、「業務用」では、安定供給されることが重要であり、市場流通のような厳格な規格が求められるわけではない。例えば、土地利用型作物では、「収量型」の生産体系で選別もラフなものにし、500キロや1トンのコンテナで出荷するなど「市場流通の概念を捨てた」生産・流通をすることで、コスト低減ができるのでは、という流通関係者もいる。
 市場法改正の論議がされているが、そのなかで、コンテナ受け入れができるような機械化とか、市場法では認められていないストック機能をもち、オーダーがあったときに欠品なく提供できる「業務用」に特化した市場をつくったらどうかという意見もある。

◆国産に追い風が――行政の積極的な支援を

 しかし、業務用は価格が安いから、取り組もうという農家は少ないだろう。それでは、国内産地を維持することは難しくなるという矛盾がある。そこに行政の役割があるのではないだろうか。加工業務用としてコストを下げた生産への取り組みに対し、施設援助などの資金的支援をするとか、業務用の販売ノウハウが蓄積されていない産地が多いことから、そうしたノウハウ蓄積のバックをするなどである。
 また、市場を通さずに取り引きをすれば、決済期日の長期化、代金回収や債権確保など、農協・市場ルートでは考えなくてもよかった問題が発生する。ロットの問題や価格決定という問題もある。これらは、個人では対応しにくい。そこに、地域農業をどう構築するのかという視点も含めて、農協組織の果たす役割があるのではないだろうか。
 量販店やコンビニでは「個性的なもの、他の店で扱っていないものを使っていかないと不毛な価格競争だけになるという反省から、キラリと光る国産を使った惣菜をアピール」する店が多くなっている。これには、BSEや鳥インフルエンザの発生で、輸入一辺倒だったことへの反省もある。
 いま、国産に追い風が吹いている。この追い風を、活かして、国産野菜のシェアを拡大して欲しいと思う。 (2004.2.12)



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