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検証・時の話題
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全頭検査は本当に「不要」なのか? 科学的根拠少ない「月齢基準」--その2-- 日本生物科学研究所主任研究員・東大名誉教授 山内 一也 |
◆サーベイランスは効率性を追求 サーベイランスは汚染実態を把握し、飼料規制などのまん延防止対策が実効性をあげているかどうかを検証する目的もある。そのために継続的な検査が必要だ。継続的な検査によってBSEの発生が減少傾向にあれば、たとえば、まん延防止対策が機能していると評価できるが、逆に発生が増加していれば対策がきちんと機能していないか、新たな対策が求められていることも示すことになる。 サーベイランスのこうした目的からして、BSE感染のリスクが高い牛だけを検査するという考え方にはそれなりの科学的な根拠がある。
死亡牛や病牛などいわゆるリスク牛を対象にした検査は、汚染実態を把握するというサーベイランスの目的にとっては効率的な基準だとはいえる。 では、サーベイランスの対象を健康牛にまで広げれば安全性確保になる、という議論はどういうことを意味するのか。 「EUの検査成績からはBSE感染牛を1頭発見する効率は、症状がありBSEが疑われる牛を対象にした検査にくらべて、5000分の1以下になるということになっています。つまり、サーベイランスをする意味があるのかということになるだけです」と山内氏は話す。 前回も指摘したが、米国との関係でいえば、検査対象をどうするのかを議論する以前の問題として、牛肉の安全確保策の柱のひとつにEUや日本は、感染牛を市場に出さないという観点に立ちスクリーニング検査を導入しているのに対し、米国はそもそもスクリーニング検査を導入していないという違いがある。 米国が実施しているのはサーベイランスのみ。そのサーベイランス検査の頭数を増やすというが、サーベイランスである以上は、直接的な牛肉の安全確保につながるわけではない。 「国際調査委員会は米国にサーベイランスの強化を勧告しましたが、われわれは強化してほしいとは一言も言っていません。また、これまでのサーベイランス対象も具体的に明確になっていないため汚染実態についても信頼が持てない。 それよりも感染牛を市場に出さないという考え方に立った直接的な安全確保策であるスクリーニング検査の導入を求めているのです」という。 わが国ではと畜場で解体された牛の脳の一部を迅速検査(エライザ法)し、陽性例が見つかればさらに精度の高い確認検査を行うことになっている。その結果、陽性であれば焼却処分されるのであってSRM(特定危険部位)を除去して市場に出すわけではない。SRMの除去は陰性であっても、さらに安全確保するための措置として行われているのである。それもわが国ではすべての月齢を対象に除去している。 こうした二重の安全確保策に加えて、サーベイランスも実施しているのが日本である。 一方、米国は直接的な安全確保策として実施しているのはSRMの除去だけ。しかも対象は30か月齢以上である。 実はSRMの除去には、わが国も含めて本当に完全に除去できているのかどうかという問題がある。ただ、日本ではかりにSRM除去が不完全であっても、除去の対象はそもそもスクリーニング検査で陰性である牛、という前提をつくることで、リスクを軽減するという対策になっているのである。 こうしたことから山内氏は「食品安全委員会では現在の検査体制について検証することにはなっていますが、この対策の柱を変えるようなことがあってはならないと私は思います」と強調する。 ◆月齢の議論は材料不足も ただ、そのうえで「全頭を対象にした検査が必要かどうかという議論がされることもあるだろう」という。山内氏が指摘するのは、今回の検証作業が日米関係を意識したものではないことはもちろん、月齢で検査対象を線引きすることを目的にした議論が行われるわけではない、ということだ。 |
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