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検証・時の話題
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焦点 漠然とした不安払拭が課題 遺伝子組換え作物をどう考えるか ―食料・環境問題に貢献の視点も― |
◆安全性チェックのためのカルタヘナ法が2月施行
遺伝子組み換え作物の自然環境への安全確保措置は、今年2月からカルタヘナ法(「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」)に基づいて行われている。 ◆小規模農業者にメリットFAOが年次報告で指摘 カルタヘナ法施行以前は、それぞれの省庁がガイドラインを設定し栽培を承認してきており、わが国で栽培が認めれているのは41作物。これに同法施行後に新たに10作物が加わっている(6月末現在、ただし、ガイドラインですでに承認を受けているものも一部ある)。このほかに栽培は認めれていないが輸入は認めれているものが30作物ある。国内で栽培が認められているもののうち、すでに商品化に必要な安全性確認が終了しているものも20近くあるが、商品化されているのは色変わりカーネーションだけ。そのほかはまったく商業栽培されていない。 商品化されない理由として害虫に強いトウモロコシや除草剤の影響を受けないイネなど、「確かに消費者にとっては魅力がないかもしれない作物」(農水省農林水産技術会議事務局技術安全課)と推進する立場の国も指摘する。 ただ、それ以前の問題として遺伝子組み換え作物への漠然とした不安があったり、さらにはこの技術そのものを短絡的に否定して批判する人も少なくない。 これについて「砂漠化の進行による農地の減少の一方で人口が増加しているなか食料問題に貢献する技術。農薬の使用量も減らせる品種をつくるなど環境問題にも対応する技術であることを理解してほしい」(同)と話す。 冒頭に紹介したFAOの年次報告では、中国の例をレポートしている。 同国では400万の小規模農家がワタの総作付面積の約30%に害虫抵抗性を持つ遺伝子組み換え品種を導入。これによって収穫量は従来の品種より約20%増加する一方、殺虫剤のコストは70%減少した。殺虫剤使用量は2001年では7万8000トン減少したと推定しており、この量は中国の殺虫剤の総使用量の約4分の1にあたるという。 ◆栽培実験の計画と情報提供を義務づけ
隔離ほ場での栽培実験が認められた作物(第1種使用規程承認組換え作物)は生物多様性影響のないことが承認されたものだが、これまでは実験を行うにあたっての交雑防止措置や情報提供については研究機関ごとに個別に対応してきた。これを国として円滑な実施をするために統一した指針として決めた。 指針では栽培実験計画書に盛り込むべき内容や、交雑防止のための実験作物と同種作物との具体的な取るべき距離、種子の管理、実験終了後の作物の処理法などが定められている。 同時に計画書の報道発表やホームページ上での公開と説明会の開催を義務づけている。また、実験経過についてもホームページ上などで公表することを求めている。 この指針は独立行政法人の各研究所を対象にしたものだが、国は栽培実験を行う民間企業もこれに従うように勧めており実際に指針に基づいた対応が行われている。 説明会はこの3月から栽培実験を行う機関が順次実施してきている。農水省は「研究者自らが実験について説明することが理解を促進することにもなるという面があると考えている」(技術会議事務局)と話す。 ◆消費者が望む作物開発と不安払拭する技術も課題 世界の遺伝子組み換え作物の作付け面積は2003年で6770万ヘクタール。日本の農地面積の15倍ほどに広がっている。ただし、FAOの年次報告では品種はトウモロコシ、ダイズ、ワタ、ナタネの4品種に集中しており、イネなど発展途上国の農民が依存している重要な農産物について研究を進めている有力な機関がほとんどないと報告。発展途上国ではバイオテクノロジーの恩恵が受けられていないと遺伝子組み換え作物開発の問題点を指摘した。日本は周知のようにイネの遺伝子解析では世界トップレベルにある。 ひとつは花粉症を軽減させるコメなど消費者が望む作物を開発すること。これまでは生産メリットを重視した遺伝子組み換え作物が中心(第1世代)だったが、消費者メリットを軸にした第2世代を基軸にしていく方向を示した。しかも通常の品種改良では不可能で遺伝子組み換え技術でなければ開発できないものとする。血糖値をコントロールするイネなども開発の課題にあがっている。 また、微生物の遺伝子を組み込み害虫抵抗性を持たせたトウモロコシが開発されているが、今後は微生物などからの遺伝子導入は見合わせ食用としている植物の遺伝子を利用すべきとした。また、食用にする部分では組み込んだ遺伝子が発現しないような開発も必要としている。たとえば、イモチ病耐性の遺伝子組み込みでは葉や籾の外皮のみで遺伝子が発現し、食べる部分では発現しない方法などが考えられている。 さらに花粉として飛ぶ部分には遺伝子を導入せず、そもそも環境に拡散しないようにする技術開発も課題だとしている。 FAOの年次報告では、今後30年間で20億人に増加する人口を養うため、収穫量の増加、コスト軽減、環境保護、食の安全確保など複合的な目的を解決するための技術開発が必要だとし、「バイオテクノロジーは従来の方法では不可能だった問題の解決法を提供する」ものだとしている。 今後もこの問題について考えていきたい。 (2004.7.20) |
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