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「エネルギー転換」などをテーマに
  
地球環境財団がフォーラム (5/25)


環境フォーラム2000 「食糧危機」の警鐘で知られる米国の環境問題研究機関ワールドウォッチ研究所のレスター・ブラウン所長が新たに「エネルギー転換論」を提起し、また企業の環境政策について東京電力の桝本晃章常務と、ソニーの渡辺亘之常務が議論するという日米異色の顔合わせによるパネルディスカッションが5月25日、地球環境財団(理事長、福岡克也・立正大学経済学部教授)などが主催して東京・大崎の立正大学・石橋湛山記念講堂で「環境フォーラム2000」で行われた。その会場から3氏の発言をピックアップしてみた。



 フォーラムは福岡教授のコーディネートで、まずレスター・ブラウン所長が世界経済は自滅の方向にあり再編が急務として化石燃料の使い捨てをやめ、風力発電や水素エネルギーへの転換とを熱っぽく唱えた。また、炭素税の増税も主張した。
 これを受けて東電の桝本常務は、日本がすでに世界最大の太陽光発電国であることを指摘。ブラウン氏の提起に総論で賛成したが、急激な転換論に対する慎重姿勢も示した。

 またソニーの渡辺常務は同社が保険、証券、銀行と様々な分野に進出している事業の強みを生かして消費者の環境意識を啓発したいと述べた。一方、税制については地方税での課題などを挙げた。
 同フォーラムは21世紀に向けた戦略の中に環境施策を定着させている大企業の姿を浮き彫りにした点でも印象的であった。

◆レスター・ブラウン所長

レスター・ブラウン氏 桝本晃章氏 渡辺亘之氏 世界の人口は一年間に約8000万人づつ増えており、日本国規模の国が18ヶ月ごとに誕生していく勘定です。そして世界経済の生産高も伸びていきます。
 しかし地球のエコシステムは、この経済成長をサポートできなくなり、経済との間に緊張関係を高めています。例えば嵐の規模が大きくなったり、氷河が溶けたり、砂漠化の進行や森林の絶滅などがあります。

 グローバル経済は持続可能ではありません。これをどう再編すればよいのか。
 化石燃料ベースのエネルギーに頼る経済機構を改める必要があります。新しい経済では、風力発電、太陽光発電、水素エネルギーが根幹になると考えます。
 風力発電の伸びは昨年は24%でしたが、今年は39%に上昇しました。発電コストが激減し、一部の国では石炭を下回りました。

 アメリカではテキサスなど3州で、風力発電をすれば全国の電力需要が充たせるという計算もあります。
 水素エネルギーの活用も有望です。夜間電力を利用して水を電気分解し、水素ガスを供給するのです。
 こうしたエネルギー転換のためには税制改革が必要です。二酸化炭素の燃焼にはすべて課税し、所得税は大幅に下げるべきです。

 ガソリン税を含め広い範囲で炭素税を拡大し、例えば消費者が車の燃費コストに敏感になれるようにします。悪いことにはすべて税金がかかるようにするのです。化石燃料に対する税金は採掘から製品化までの工程すべてで安過ぎます。
 持続可能な経済へ向け、政府はリーダーシップを発揮すべきですが、しかし税制改革には企業の支援が必要となります。

◆東京電力(株) 桝本晃章常務

 東電は60年代中ごろから環境問題には大変熱心に取り組んできたつもりです。最近はNGOグループと共同で太陽光発電のプロジェクトを立ち上げました。
 時代認識としては、20世紀はエネルギーの供給増加を最大の眼目にした世紀でした。しかし21世紀はエネルギーをどう使うかが大きな課題になると考えます。

 風力発電ではソニーさんとのプロジェクト始動を検討中です。また自主的なグループや個人の風力発電を7年前から、当社の若干の持ち出しになっても購入しており、環境に配慮したクリーン電力の普及を支援しています。
 一方、一般家庭に対する太陽光パネル取り付け費用の約半額負担といった形で地域生協などと組んでパネル活用を研究しています。

 全体として行政も政治もNGOも私企業も、不燃エネルギーの活用に向けて急速に動き出しています。

◆ソニー(株) 渡辺亘之常務

 ソニーは80年に社長直轄の地球環境委員会を設置し、また世界各地の事業組織にも実行機関としての委員会を設けています。ISO14001認証も各地で取得しています。
 生産プロセスでは省エネ・省資源、有害物質と大気汚染の削減などで環境負荷を軽減する目標値を設定して行動しています。製品から発生する環境負荷についてはさらに消費電力の削減やリサイクル性の向上、さらに使用材料の種類削減などで目標値を掲げています。

 中でもプラスチックの種類削減は取引先の協力が必要であり、部品調達には大変力を入れています。

 環境保全の技術開発については、94年に環境研究センターという組織をつくり、ここではオレンジの皮から取れる物質を利用した発泡スチロールのリサイクルとか、プラスチック材料の判別機とか数々の研究開発成果を挙げています。


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