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第22回JA大会 組織協議案決まる(6/8)


 「農と共生の世紀づくりに向けて」 と題する第22回JA全国大会議案の組織協議案が8日、JA全中の理事会で決まった。前回の大会決議で1つの運動課題だった「共生」が今回は議案全体のキーワードとなった。21世紀を「競争」の枠組みだけでとらえるのでなく「共生」を基本とすべきであるという考え方だ。また議案はJAグループ経済事業の赤字体質を改善する方向づけを強く打ち出した。そこには金融情勢の激変を見越して信用・共済事業の収益性に依存するJA経営の体質改善を急がなければという危機感がある。

 JA全中は議案の骨格を4月6日に決めたあと、インターネットなどで意見を公募するとともに、内部の議案審議会でも検討して8日、組織協議案を決めた。JAや県段階で、さらに協議し、8月末をめどに正式の大会議案とする。大会は3年ごとに開催し、今年は10月12日に東京・有楽町の東京フォーラムで開く。

 議案は経済事業の改革を強調し、徹底した収益改善を提起した。日本農業の衰退とともにJAの経済事業は全体として赤字続きだ。一方、金融情勢の劇的な変化や、情報技術(IT)革命などを読み込んで信用事業と共済事業も競争力の強化や事業基盤の強化を厳しく迫られている。
 このため議案は経済事業の再構築(リストラ)を重点に、部門別の収支確立、総合力の発揮、徹底した収益改善などを掲げた。

 具体的なJAグループの取り組み方向としては、食料の生産・供給で独自の「安心システム」による農畜産物の供給を打ち出した。
 安心安全といっても有機農産物では関心が一部の消費者に限定されるため、自給率向上に向けた幅広い供給をめざして独自のシステム構築に取り組む。
 肥料と農薬を、いつ、どれだけ使って栽培したものかなど消費者の知りたい生産情報をすべて開示し、国産農産物を大いに売り込んでいこうという戦略だ。独自の品質保証・表示制度もつくる。

 食料分野では朝食の欠食をなくすことに重点を置いた「日本型食生活」の普及にも取り組む。
 農業分野では「地域農業戦略」づくりを提起した。生産・販売計画、担い手育成、農地利用調整などを盛り込んだ5年間ほどの戦略を、全国のJAが策定し、農業振興を図る。

 戦略はJA営農センターに「地域農業戦略委員会」を設けて策定する。
 そのためにも地域農業の拠点としてJA営農センターを強化する。これまでは技術指導が中心だったが、今後は販売戦略にもとづく生産誘導へと転換する必要があるとした。

 営農指導員は販売企画力も求められることになるため、人材を育成し、JAの販売力を強化する。また大規模農家から販売業務などを部分受託もする。

 そうした中で大規模農家、農業生産法人、集落営農などを明確にし、担い手育成を強力に進める。
 農地の有効利用と遊休農地の解消のためにJAの農地保有合理化事業や農作業受託事業、JA出資の農業生産法人の設立にも取り組む。

 経済事業再構築のキーワードとしては「自給率向上」が挙げられるが、そのためには低コスト生産が必要となる。このため生産資材価格を引き下げるため、物流改革による費用低減を打ち出したのも大きな特徴だ。

 JAグループを通じて最適となる業務・物流システム(広域集中システム)と、担い手から取引先までを結ぶ一貫物流・情報体系(サプライチェーン)を構築するという内容だ。
 JA全農(統合連合)に広域受発注・物流情報センターを設け、農家組合員の注文を、そこに集中して、メーカーに発注。メーカーは農家配送拠点まで届け、そこから戸配送するというシステムだ。大規模農家がセンターに直接発注したり集落単位で配送拠点まで引き取りに来た場合は料金割り引きとなる。

 この改革で生産資材価格を引き下げ、そのメリットを生産者に還元する。下げ幅は利用量や利用形態などの条件をふまえて規模別・機能別価格体系に応じて決める。

 こうした競争力強化の取り組みと「共生」の理念の結合が今後の組織討議の一つの焦点になるものとみられる。

 農村分野では総合的な高齢者対策や学童農園、市民農園、グリーンツーリズムなどを通じた地域住民、都市との交流促進を図る。
 参加・参画・連携の促進による農業協同組合運動の展開もポイントの一つで、担い手・女性のJA参画を促進し、また準組合員の加入促進と意思反映手法の充実を図る。


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