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閣議終了後、初登庁する谷津新農相(5日午後9時30分ごろ、農水省玄関で)
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大臣室で農水省幹部職員に出迎えられる。平成6年には政務次官、昨年10月から今年7月まで小渕内閣と第1次森内閣で総括政務次官を務めていたため「まるで自分の家に帰ってきたみたいだ」と話す。 |
12月5日に発足した第二次森改造内閣で農林水産大臣に就任した谷津義男氏(前農林水産総括政務次官、自民党政務調査会長代理)は、初閣議の後、幹部職員らが出迎えるなか初登庁。あいさつに訪れたJAグループ全国機関の会長らと懇談したあと、午後10時半すぎから記者会見に臨んだ。
会見では、「21世紀を前に大きく社会状況が変化しているなか農林水産関係の政策も新たな展開をしなければならない」などと語り、「食料の安定供給は農水省の責務。中長期的には食料不測が予想される。自給率を上げる対策を今から積極的に行っていかなくてはならない」などの所信を表明した。また、セーフガードの発動やこの日、自民党農業基本政策小委員会が提言した「新たな農業経営所得安定対策」の実現についても積極的に取り組む姿勢を示した。
会見の概要は以下のとおり。
「わが国は食料安全保障の観点から、10年後の食料自給率を45%としているが、もっと上げる対策を今から積極的に行って行かなければならない。輸入に頼るより国内で生産することが大事だ。
ただ、単に食料生産をするだけでなく国民の健康を保持するための食生活のあり方を含めて取り組んでいく。食べる人の好みもありなかなか至難なことだと思うが、消費者のほうにも目を向けながら国民のためにいかに生産するか、その一点に絞ってやっていく」
【WTO農業交渉の日本提案について】
「ミニマム・アクセスについては弾力的に考えなくてはいけない。日本では40%も減反をしている。当然、弾力的に考えるべきだ。輸入国と輸出国の義務のアンバランスも考えなくてはならない。数値などはこれから示すが、少なくとも(考え方の)枠組みは示す。(ただ)、個別問題を先に示してしまうと交渉にならない。最初から手の内を示すのは得策ではない。まず日本の状況を理解してもらうことが大事だ」
【セーフガード発動への対応】
「政府調査のための検討は3省(大蔵、通産、農水)で行っているが、私は調査に入ってしっかりやっていかなくてはならないと思う。野菜は輸入によって大きな影響を受け極端に所得が減っている。早急に取り組むべきだ」
【新たな農業経営所得安定対策について】
「所得が不安定で再生産の意欲も減退している。今後、懇談会を設けて検討していくがぜひ導入したい。(生産者が)国民の食料はまかせとけ、といえるにはやはり所得が前提。他産業並みの生涯所得にすべきという方向は原則だ」。
(自民党の提言では経営体を40万程度と対象限定して実施するとしているが・・・)
「具体策は1年間ぐらいかけて検討していく。個人的には40万経営体(に限定する)と固定観念では考えていない」
(一定の所得を保証するというこの政策に都市住民が納得するか?)
「今度の補正予算や来年度予算でも中小企業対策は農業以上にやっている。中小企業は日本の産業の原点。農業は生命に関わる食料を生産しておりもっと大事。国民の理解を得ながら実施すればそう批判は受けないと思う。
(財源については)予算編成を原点から洗い直す。予算は政策遂行のためにつけるべき。これまでは惰性でつけてきたところがあった」
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原田JA全中会長らJAグループの
代表が表敬訪問。
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「農協は営農指導が原点」と持論を展開(午後10時30分過ぎから就任記者会見)。
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【狂牛病・スターリンク問題】
(EUは半年間、動物性飼料の使用を禁止したが・・・)
「英国、北アイルランドからの(反すう動物由来の飼料の)輸入は禁止している。(そのほかは)OIE(国際獣疫事務局)が定める基準で加熱処理したもののみ認めている。しかし、今後は、反すう動物由来の飼料を使用しないよう指導を検討していかなくてはならない。発生防止に万全を期す。」
(今後の遺伝子組み換え農産物政策について)
「(未承認遺伝子組み換え農産物)スターリンクが日本に輸入されないよう米国政府と協議中だ。水際での検査体制強化もする。ただ、それ(スターリンク問題)はそれ。稲などの遺伝子組み換え農産物の研究はストップすることはできない。きっちりやっていかなくてはならない」
【公共事業について】
「必要なことはやらなくてはいけない。ほ場整備もまだ51%。これから水田の汎用化をはかり、麦や大豆をつくるには、土地の付加価値を高めるようなことをやらなくてはいけない。
ただ、今後は、完成年度までにきちっと終わるようにすることや費用対効果も考えなくてはならない。また、農水省の(公共事業の)基準には地域の違いを考えない金太郎飴的なところがあった。生きた公共事業にするためには、地域による違いを考えて(基準を)抜本的に見直さなくてはならない」
【今後の農林水産業行政のあり方について】
「現場にいくと末端では政策が全然動いていないことがある。テレビや新聞で言われていることとと実際が違うから、農家の人たちも不信感を持ってしまう。広報なども徹底すべきだと思う。また、農水省の職員ももっと現場に入っていってはどうか。現場の人たちは農水省は全然(実態を)知らないと思っている。
農業もれっきとした経営者。今後は経営感覚を身につけてもらいたいが、普及も作物の普及だけではなく経営の観点で指導してもらいたい」
【農協改革について】
「農協で大事なのは営農指導。ところが最近は商社みたいになっている。営農指導をやるために経営がおかしくなってきたら(国も)考えなくてはいけないが、しかし、最近は組合員、生産者ののためというよりも農協の維持のために汲々としている。しっかりと原点にかえってもらいたい」
大臣の初登庁後は、通常、幹部職員の紹介が行われるのだが、谷津新大臣は自民党でも農林関係の部会の要職をつとめ、また、この7月まで総括政務次官だっため幹部職員は顔見知りばかりで今回は省略となった。農水省には歓迎ムードが強い。
一方、JAグループ内でも、昨年のWTO日本提案策定の与党スタディチームの責任者だったことから3者協議の要役として評価も高く「農政を知り尽くした谷津大臣」(原田JA全中会長の談話)と受け止められている。なお、谷津新大臣は、7月に自民党政務調査会会長代理としてしている。
(略歴) (やつ・よしお) 昭和9年7月群馬県生まれ。32年法政大学法学部卒業。46年坂村吉正衆議院議員秘書(50年3月まで)、50年群馬県議会議員(連続3期)、61年衆議院議員当選(第38回総選挙)、平成4年衆議院議員当選(第39回総選挙補欠選挙)、5年衆議院議員当選(第40回総選挙)、6年農林水産政務次官、8年衆議院議員当選(第41回総選挙)、9年衆議院内閣委員長、11年農林水産総括政務次官(12年7月まで)、12年衆議院議員当選(第42回総選挙)。
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