2001年度の景気は後半に回復の踊り場からの脱却が展望できよう、との経済見通しを農林中金総合研究所が昨年末に発表した。
これによると、日本経済は設備投資と輸出の二本柱が牽引して緩やかな成長が続いている。だが米国の景気減速で、輸出の伸び率や半導体関連の設備投資が鈍化し、成長率は2001年度半ばにかけて一時的に足踏み状態になるとみる。
しかし設備投資は幅広い産業で徐々に波及し、所得環境の改善から個人消費の増加が続くため2001年度後半には持ち直す。
全体的には、公共投資、住宅投資、輸出などが鈍化・減少するなかで、個人消費と、裾野の広がりが期待できる設備投資が景気を牽引する形が見込まれる。
2001年度の成長率は年度前半の足踏みもあり、実質GDPで1・5%、名目で0・3%程度の超低空飛行にとどまるとみた。
設備投資は半導体などIT投資の伸び鈍化などが見込まれるが、ITを利用する業種への裾野の広がり、企業の財務体質の改善による収益力の強化などの下支え要因もあり、4・8%程度で推移しよう。
個人消費は企業の雇用調整の長期化と、雇用のミスマッチによる失業率の高止り、賃金抑制など構造的な要因から急回復は期待できないが、所得環境の改善傾向を受けて実質賃金の伸び率の範囲内で緩やかな回復ペース(1・5%)を維持するだろう。
リスク要因としては、第一に米国経済のハードランディングであり、株価下落の影響や過熱的高成長から安定成長への移行過程に生ずる期待の過度な下振れなどによる景気急減速のリスクを機動的な金融政策によって払拭できるかどうかがカギとなろう。
第二には金融システムの不安で、地価・株価の下落と企業倒産の多発により銀行の不良債権処理が遅れ、システム不安を再燃させる可能性も否定できない。
第三に財政赤字の悪化で、この問題を契機に株安・債権安・円安という「日本売り」のリスクを潜在的に抱えている。企業のバランスシート調整など構造改革に向けた努力は現在進行中だが、財政・年金など公的部門の構造改革が大きな課題となる。
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