営農に不利な地域の農家に補助金を出す中山間地域等直接支払制度が今年度から実施されたが、農政史上初めての制度とあって、実施を見送った市町村が2割あるなど、取り組み状況に大きな差異の出ていることが30日発表の農水省報告で明らかになった。
集落または個別の協定にもとづき農業を5年以上続ける農家に支払われるが、報告は集落協定の優良事例を3つ挙げた。
大分県T市K地区では山間の8集落が協定を結び、「谷」ごとの農場づくりを推進。5年間で1億500万円の交付金(補助金)の3分の2で共同利用機械を導入。集落営農を進める。
新潟県T町では全集落間で協定を結び、これにもとづく活動に交付金の3割を拠出。共通課題の都市農村交流などに町全体で取り組み、地域活性化を図る。
岩手県D町では旧町村単位に広域的な集落協定を結び、旧来の集落を超えた農地の利用集積と、有機栽培の導入など集落営農中心の活動に取り組む。
一方、制度実施による変化の事例を山口県のホームページにみると、これまでは、あきらめから話合いがほとんどなかった中山間の集落で制度導入の検討を機に話合いが復活した。
また他の市町では集落協定推進委員の呼びかけで、よそへ出ていた後継者が戻り、農地の管理を手伝う姿が見られるようになった。
なお全国の制度実施状況は(調査は昨年11月30日現在)対象農地のある2158市町村の約8割が実施。
集落協定数は2万6022。個別協定数は588。直接支払い対象面積の約7割について協定が締結されている。
「地方裁量主義」と評価されている制度なので取り組みに差が出たが、農水省は協定締結面積の増加に向け、低調な自治体に対しては推進を図っていく。
同制度の対象農地は急傾斜や、自然条件による小区画・不整形な田など。耕作放棄を防ぎ、国土を保全するために実施した。直接支払いは欧米がすでに導入。世界貿易機関(WTO)農業協定では削減対象とされていない。
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