農協や漁協の職員数減少などから財政が悪化した農林年金は、来年4月に厚生年金と統合する。政府は統合法案を今年3月中旬に国会に提出する。農林年金は統合後も存続組合として職域年金の支給や、厚生年金からの委託業務を行う。
農林年金の掛金率は19.49%。厚生年金の保険料率17.35%より2.14%も高いが、統合後も現行のままとし、引き下げない。期間は平成16年9月まで。
これは農林漁業団体数、職員数が当初見込みよりも減るのではないかなどの変動リスクと、その対応を政府の公的年金制度一元化懇談会で議論した結果だ。
厚生年金は4年後に保険料率を19.85%に引き上げる見通し。上げ幅は2.5%だ。その時に農林年金の部分は上げ幅を1.36%にとどめ、料率を20.85%として、他の加入者との掛金格差を1%に縮める。
格差がなくなくなるのは20年10月からの予定。
こうした内容は、農林漁業団体職員共済組合(農林年金)とJAグループ対策本部が統合に向けた「最終整理案」としてまとめた。
8日のJA全中理事会で確認。すぐに労使などの組織協議に入った。
農林年金には独自の職域年金(3階部分)がある。このため掛金率が厚生年金より高い。これを統合後も新たな形で続けるかどうかが組織協議の課題だ。
しかし再構築は非常に困難だという。3階部分は各企業も独自に基金を設け、厚生年金給付に上乗せ支給しているが、基金の枯渇による消滅が相次いでいる。
農林年金の職域年金支給は、統合後も数10年にわたって続く。これに必要な財源は9400億円だが、積立金1兆9300億円のうち1兆6000億円は厚生年金に移換するため残りは3300億円。つまり6100億円の不足だ。
これはJAなど使用者側の農林漁業団体が30年間負担して清算する。職員負担のない清算経理だ。このため職域年金の給付内容が抑制される。年金額スライドと障害・遺族給付がなくなる。平均標準給与月額の計算は厚生年金の再評価率を用いるため低くなるなど。
統合は今年4月を目ざしていたが、厚生年金側の連合(労組)などが多額の移換金を求めて条件が折り合わず、1年延びた。
結局、合意となった移換金額は1兆7600億円。
うち1600億円は、統合後の保険料率格差を7年間そのままにし、農林年金の加入者が、他の加入者より多く払い続ける上乗せ保険料を財源にしたものだ。
なお被保険者数は農林年金が48人弱。厚生年金は約3300万人。
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