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耕そう協同の心 築こうJA新世紀
  第43回全国家の光大会
(2/15)

 第43回全国家の光大会が2月15日に東京・明治神宮会館で開かれた。今回の大会スローガンは「耕そう協同の心 築こうJA新世紀」。全国から1800人が参加し、体験発表などを通して、協同の力で日本の農業と農村を守り、心豊かな暮らしの実現をめざして読書・学習運動を積極的にすすめることなどを誓った。

主催者あいさつをする田昌彦会長

■大会決議の実践の年

 主催者あいさつで家の光協会の田昌彦会長は、「今年は、昨年10月の第22回JA全国大会の決議を実践する年」であることを強調、「家の光協会も新しい事業構想(家の光事業基本構想)に基づいて、読者とJAグループの付託に応える事業をすすめていきたい」と語った。
 家の光協会では「農村文化の振興」、「JA運動の活性化」、「出版・文化団体としての社会活動」の3つの役割を発揮するため、平成13年度から3年間の21世紀第1次家の光事業中期計画」の策定作業を進めている。
 また、田会長はあいさつのなかで協同組合運動の意義についても触れ「われわれが今あるのも先人が世界に誇れるJAの組織をつくってきたから。協同組合は地域社会を安定させる大きな役割がある」と指摘、「厳しい時代だが、後に続く次世代のために精一杯努力して協同組合運動を確立していこう」と参加者に呼びかけた。

 来賓としてあいさつしたJA全中の原田睦民会長は「近年、経済のグローバル化やIT革命の進展などによって選択肢が増えた。JAの事業は質の高いサービスを提供しなくては本当の信頼の確保とJA運動への参画が得られない」などと話し今後の「参加、参画、連携の促進によるJA運動」の重要性を説いた。
 その後、第51回「家の光文化賞」と平成12年度JA普及実績特別表彰に続き、「体験発表」が行われた。

大会当日は1150名の応募者の中から選ばれた9名が体験発表を行った

■酪農こそ「命」を伝えられる−牧場からのメッセージ

 「記事活用の部」と「普及・文化活動の部」の2部門で行われている体験発表には今年は両部門合わせて全国で1150名が参加した。そのうち都道府県で選出された61名が大会前日に体験発表を行い、大会当日にはそのなかから選ばれた9名が(記事活用の部6名、普及・文化活動の部3名)発表した。

記事活用の部で農林水産大臣賞に選ばれた鳥取県代表の三谷里美さん

 記事活用の部で農林水産大臣賞に選ばれたのは、鳥取県代表の三谷里美さん(JA鳥取中央)の「牧場からのメッセージ」。

 三谷さんは同県大栄町に住み、夫とともに酪農を営んでいる。結婚して13年、家事、育児も一人でこなしながら多頭飼育に努力。20頭から55頭にまで経営を拡大した。
 しかし、牛の世話、家事などで忙しい毎日を送るなか、何かを忘れていることに気づく。それが何なのか、一頭のポニーを飼ったときの子どもたちの喜ぶ姿を見て分かった。「多くの人に命を感じてもらいたい。それが忘れていたことでした」。

 具体的な活動のきっかけは、地元のスーパーからの依頼。子牛と触れあうイベントに牛を連れきてほしいというものだった。「子どもたちはとびきりの笑顔で大喜びしていました」。これがきっけとなって自分たちで毎年夏に搾乳体験ができるイベントを行うようになった。
 さらに「家の光」の記事で知った酪農家を女性部員とともに視察、アイスクリームの製造など消費者へのPRを積極的に行っていることなどを知り活動の幅を広げてきた。

 また、一昨年からは地元中学生の職場体験授業にも協力。中学生たちはその期間中は早朝から掃除、エサやり、搾乳などを三谷さんたちと同様に体験し、牛の出産にも立ち会った。
 「息を飲むように見つめていた中学生から、子牛が生まれた瞬間に拍手が起きた。きっと何かを伝えられたと思いました」。
 三谷さんは、こうした体験を通じ「青少年による犯罪が多く人の命を何とも思わない若者がいる悲しい現実があるが、生命産業と言われる酪農こそ心の教育ができると思う」と語り、「牧場のなかにはたくさんの生きている命があります。これからも牧場からメッセージを送り続けていきたい」と結んだ。

 審査委員長の藤谷築次京大名誉教授は、審査のポイントは「記事活用に具体的な成果が見られるか」、「先進的な取り組みで、しかもだれもがこれから取り組めるよう一般化することができるか」、「21世紀を見据えて現代的な意義があるか」の3つを挙げ、三谷さんの発表は「家の光に支えられながら、自分の問題意識に対応して組織活動に参画している。酪農こそ命を伝えられるとの主張は現代的意義も非常に大きい」と評価した。

■組合員・職員の意識変革

 普及・文化部門で全国農業協同組合中央会会長賞を受賞したのは、和歌山県代表の柴田喬さん(JA紀の里)の「協同の心を育む家の光普及活動」。
 JA紀の里は、平成4年に広域合併して誕生した。営農と農産物の販売が事業の中心だが、合併以降、組合員による地域での協同活動が低下していた。

 柴田さんは、東京で行われた「家の光文化賞JAトップフォーラム」への出席を機に「もっと心の豊かさを引き出すべきだ。営農・販売だけでなく、将来を担う学童を対象にした活動を」と考え、先進JAなどの例に学ぶ家の光セミナーを発案、それをきっかけに職員、女性会が一丸となった普及運動が立ち上がった。
 その成果は普及率の向上に結びつき、さらに運動を継続させるために、翌年は家の光協会の職員にも参加してもらった普及活動を実現した。また、子どもたちによる読書感想文の発表会や夏休みの親子フェスタなどの文化活動にも取り組むようになった。
 こうした活動は「組合員教育の必要性を職員に認識させJA職員のあるべき姿を認識させてくれた」という。
 地域社会で人々の胸を打つ活動は、「地域に根ざした活動をしているJAだからできること。1冊の家の光はJA職員としての意識を根幹から変えてくれました」と柴田さんは語った。

講評する審査委員長の
藤谷築次京大名誉教授

 藤谷審査委員長は、「普及・文化活動を危機にある協同組合運動の核にした取り組みにした点が評価された」と語った。

 そのほか今回の体験発表全体について、藤谷審査委員長は、真の農村の豊かさを求める多様な活動が展開していること、女性の農業経営者が増えていること、また、国内農業の意味について理解促進のための運動が広がっていることなどが感じられたと指摘。
 「次世代へ熱い思いを伝える取り組みが各地に広がっている。女性が主役にならなければならない21世紀。農政活動や広域合併JAのあり方にどう女性の力を発揮するかが課題」と語った。

 大会では最後に「男女共同参画社会の実現とJAの活性化をめざす」、「協同の力で日本の農業と農村を守り農と共生の地域社会づくりにつとめる」「心豊かな暮らしの実現をめざして記事活用グループの育成など、読書・学習運動を積極的にすすめる」ことなどの申し合わせ事項を採択した。


「家の光文化賞」4JAに

 今回で51回めとなる「家の光文化賞」は、JA前橋市(群馬県)、JA甲賀郡(滋賀県)、JA高知市(高知県)、JA糸島(福岡県)の4JAが受賞した。
 この賞は、昭和24年に「家の光」創刊25周年記念事業として創設され、教育広報・生活文化などの活動に優れたJAが表彰されてきた。昨年度までに221JAが受賞している。審査は15名の審査員(委員長・川野重任東大名誉教授)による現地調査も含めて3か月にわたって選考が行われた。
 受賞JAには、正賞として床置き時計、副賞として賞金300万円が贈られ、また「コチア産業組合中央会記念賞」も贈呈された。同記念賞は、ブラジル・コチア産業組合の有志が太平洋戦争後の日本の惨状を知り、家の光協会に寄付金を贈ったことをきっかけに、これを基金として創設されたもの。

 また、今回は、合併構想実現JAを対象に管内の一定の地域で優れた教育文化活動などを行っていることを顕彰する家の光文化賞特別賞の審査も行われ、JAありだ(和歌山県)が受賞した。
 平成12年度JA普及実績特別表彰には、JA奈良県(奈良県)、JA豊関(山口県)、JA東びわこ(滋賀県)、JAえひめ南(愛媛県)が表彰された。


倍賞千恵子さんが記念講演

 大会の午後は、倍賞千恵子さんが「歌うこと 演じること そして生きること」と題して記念講演。子どものころ疎開先でお年寄りを相手にみかん箱の上に立って歌ったことや、姉に連れられて出場したラジオののど自慢で合格してしまったことなどの思い出を歌を交えて語った講演に会場は何度も大きな拍手に包まれた。
 映画「男はつらいよ」で長く共演してきた渥美清さんとの交流についても紹介し、突然亡くなったときには「目の前に黒い幕が降ろされたように感じた」と振り返った。最近では「今から、ここから、自然体」がモットーなどと自分の生き方を語った。


命こそ宝 大人のみなさんも語り続けてください−愛読者発表で井上君訴える

 「ちゃぐりん」愛読者特別発表をしたのは、広島県三次市立神杉小6年の井上和義君。井上くんは昨年、ちゃぐりんレポーターに選ばれ、沖縄戦について現地取材をした。体験者に話を聞き野戦病院跡など真っ暗な壕も訪れた。「人間とは思えない残酷すぎる戦いだった」ことを知り、悲しい戦争が起こらないよう心から祈った。しかし、もっと悲しいと思ったのは、未だに「米軍基地があること」どうしたら戦争をなくすことができるのか悩んだが分かったのは「戦争反対、世界を平和にしていこう」と一人でも多くの人に語ること。
 「命がいちばん大切、と大人のみなさんも話をしていってくれませんか。すごく地味だけどこれがいちばん大切な平和運動だと思います。そのことをみなさんにお願いしたくて勇気を出してここに立ちました」。井上君の発表の途中から参加者になかには涙をぬぐう人も。大きな拍手がわき起こった。




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