JAグループの自主的な改革努力を支援するため農水省は「農協改革2法案」を今国会に提出する。新たな基本法の制定や、来春のペイオフ解禁など金融情勢の激変を踏まえ、農協改革の推進が急務であるとする観点に立つ法案だ。
2法案は、農協系統の組織と信用事業にかかる法制度を見直し▽農協法の一部改正▽農林中金法の全面改正▽農林中金・信連統合法の一部改正をする。改正点の骨子は次の通り。
【農協法の一部改正】
@法人経営もすべて農協の正組合員となれる。現行法は、農業以外の事業も併せ行っている法人は正組合員になれない。また農協の第一の事業は営農指導であると明記した。現行法は、農協の事業として第一に信用事業を規定している。
A組合員のメリットを大きくするための業務執行体制の強化としては▽信用事業を行う農協には常勤理事を3人以上(うち1人は信用事業専任)置かなければならない。現行法には常勤理事の人数規制はない。
また▽常勤役員の兼職と兼業の規制を強化する▽経営管理委員会に正組合員以外の青年部・女性部・生産部会などの代表も入れる。また理事だけでなく代表理事の選任権も持つ▽信連などの連合会には経営管理委員会の設置を義務づける。
B一定の手続きの下(知事の認可など)農協の地区の重複を認める。現行法は重複を禁止している。
また現行法では、農業以外の事業ができない農事組合法人が、経営を他事業にも拡大する時は解散して、つまり課税されて新しく有限会社を設立するしか方法がなかったが、改正案では農事組合法人が同一性を保って、課税されないで有限会社などに転換できる。
【農林中金法の改正】
@大正12年制定のカタカナ法を、ひらがなの現代法制度に改める。
A貸出範囲を拡大し、限定業種のない貸出を一定の範囲で認める。現行法は法人などの貸出先業種を限定列挙している。
【農林中金・信連統合法の一部改正】
@「農林中央金庫及び特定農業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律」に改める。
A農林中金は、問題のある農協と信連を早期に発見し、早く経営改善と組織統合による是正をはかるための自主ルール(農協金融の再編と強化に関する基本方針)を策定する。
Bこの基本方針に即して農協と信連を指導する。
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これら法制度見直しの前提には、担い手を中心に農協離れが進んでおり、担い手のニーズに的確に対応した農協の事業運営が重要であるなどの考え方がある。
このため組織改革では、法人経営を家族経営と同じように正組合員とし、また農家が複数の農協のサービスを選択できるよう複組合制を導入した。
一方、信用事業改革では農家が安心して貯金できるように、破たんすることのない信用事業体制の構築を考えた。結果として農林中金の指導性が重くなり、そのため農林中金の運営体制を改善する。
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