「閣僚になる機会があるとすれば、農水省は情熱を傾けてみたいと思って狙っていた役所。思いの深いポストで感慨この上ありません」。
武部勤新農相は、27日未明に行った就任後初めて記者会見で大臣就任の感想をこのように語り、「農業は、単なる産業ではなく国土保全など公益的機能がある。国の基本政策としてもっとも大事な課題だ」と農業の多面的機能をふまえて政策推進する姿勢を示した。
その一方、小泉内閣が掲げる「改革断行内閣」を受けて「農業は生産性が低く高齢化も進んでおり、もっとも構造改革を必要とする分野」、「若い農業者は地団駄踏んでいると思う。そういう人たちのエネルギーを政治主導で引き出すのが改革断行」など「構造」、「改革」、「断行」、「政治主導」の言葉が再三飛び出した。
しかし、この日の会見からは、武部農相がどのような農業構造が望ましいと考えているのかは明らかにはならなかった。
「当面は、専業農家が成り立っていく体制づくり、意欲を持ってチャレンジしていける体制づくりをしていかなくてはいけない」、「政治家として留意すべきことは、あなたの言うことも分かる、あなたの言うことも分かる、(という姿勢)ではだめ。もっと強力に政治主導で政策誘導をしていくべき。そのことによって専業農家を育成する。これは食料供給を考えると大事なこと」と語る一方、「小さい農業を切り捨てる考え方はない。都会でサラリーマンをやっていた人に農業をやりたいという人も増えている」と強調する発言もあり、構造改革といいながらもその方向については分かりにくかった。また、経営所得安定対策に関して、昨年自民党が決めた生産法人を含めて40万戸程度を対象にするという方針については、明確な答えがなかった。
大臣就任について「思いもよらなかったこと。正直言ってあまり準備できていない」とも話し、有明海のノリ不作問題への対応やセーフガードの暫定措置での日中協議など個別の問題では「谷津前大臣のレクチャーを受けてから」との言葉も目立った。
小泉内閣は改革を強調するが、農政ではすでに国際化の進展、市場原理の導入で急速に改革が進み、それが農産物価格の下落と経営の圧迫を生んでいるとの認識が現場には根強い。「行政の継続性も大事だが、もっと大事なことは新しい挑戦、新たな機軸で考えていくこと」とも語った武部新農相。新たな経営所得安定対策の構築や本格化するWTO農業交渉などの課題に向け、現状をどう認識し構想を描くのか。手腕が早急に問われる。
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