日本からの輸入品をこん包する木枠の検疫を中国が強化したのは、日本のセーフガード暫定発動に対する報復措置であるとの見方があるが、中国側は、セーフガード以前から検疫を強化しているという経過が改めて見直されている。
日本政府がセーフガード発動に向けて政府調査に入ると決めたのは昨年12月19日。ところが中国政府が日本に検疫強化を求めてきたのは、それより1年半も前の1999年6月のこと。日本からの輸入品こん包木枠から松食い虫が発見されたためだ。
熊沢英昭農水事務次官の話によると、中国側は、木枠をくん蒸し、処理済みの証明書を添付してほしいと要請してきた。このため日本側は昨年3月から要請に沿った措置を取り、木枠の熱処理で害虫を退治することにしている。
しかし中国側は、その後も「不適合な事例がある」と昨年9月29日に重ねて通報してきた。依然として害虫が付着しているというのだ。
農水省がセーフガード発動を検討し始めたのは、それよりも後であり、こうした経過からも、検疫強化とセーフガードは結びつかない。中国政府も別々の問題だとしており、「報復」説は全く成り立たない。
輸入制限は、安い輸入品を求める消費者の利益や自由貿易を阻害するとして、中国からの開発輸入を増やしている業界などはセーフガード発動に反対。また一貫して農産物輸出国の立場に立つようなマスコミ論調があり、「報復」報道も、その流れの中にある。
検疫については、中国側の重ねての要請に応え、農水省は木枠の熱処理やこん包の工場に対する指導を一層強めている。日本の松食い虫被害はひどい。観光事業に力を入れている中国としては、それが中国の景勝地に広がっては大変と、神経を尖らせているようだ。 一方、セーフガードの暫定発動に対して中国政府は「対抗措置をとらざるを得ない」としており、今後、厳しい対応も予想される。
しかし両国政府は、話合いを続けることで合意しており、日本としては、あくまで中国側の理解を求めて政府間協議による解決を目ざしている。
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