農林中金総合研究所は今年度の実質GDP成長率を0.8%のマイナス成長とする経済見通しを6月22日発表した。景気は一段と悪化した後、底打ちは今年度の後半か、来年の年明け前後と想定した。
しかし来年度はプラス成長への回帰を見込んだ。その要因としては▽循環的な在庫調整の完了▽米国を中心とする世界景気の好転による輸出増加▽抑制されていた設備投資の反動的な増加がある、とした。
しかし構造改革の進行による需要減退も続くことから回復感は乏しい、とみており、物価のマイナスが続き、デフレ環境が色濃く残る、という。
農中総研は昨年末の経済見通しで、今年度の実質GDPを1.5%成長と予想したが、今回はマイナス見通しに転じた。
小泉内閣の政策基調である▽財政支出の抑制▽不良債権の早期処理▽特殊法人の改革などには今後も変更はないとし、今回の見通しでは、公共事業の追加を前提としなかった。雇用創出などに向けた補正予算が組まれたとしても、規模は抑制的と想定した。
不良債権が早期処理された場合、単純試算では230万人の雇用減となるが、不良債権の発生が特定一部企業に集中する傾向にあることや、債権放棄などで生き残る企業もあり、実際の失業者増大数は70〜100万人と考えた。
民間消費は、リストラなど構造改革の影響で失業率の悪化や賃金低下から低迷が続くと予想した。
民間住宅投資は、住宅取得の需要が先取りされてきたことや将来不安の高まりから今年度、来年度と引き続き減少するとみた。
民間設備投資は、今年1〜3月期にマイナスに展じた。前期比で上半期はマイナス3.1%、下半期は同3.6%を予想した。来年度はIT(情報技術)産業で先送りされていた新技術新製品投資の復活でプラスに好転する、とした。
公共投資は、来年度もマイナス4.2%を予想。
外需は、輸出が今年度上半期も前期に続きマイナスになると予想した。輸入は開発輸入や海外委託生産の増加は続くものの、国内景気の低迷や円安から上半期にマイナスに転じ、下半期は反転するが、そのペースは鈍いと見込んだ。
今年度の実質GDP成長率は上半期が0.6%、下半期が1.3%のマイナス成長を予想した。