トップページにもどる 農業協同組合新聞社団法人農協協会 農協・関連企業名鑑
 
中国のセーフガード 報復関税に抗議
「国際ルール無視」と全中など撤回迫る(6/22)

 農産物3品目の緊急輸入制限措置(セーフガード)暫定発動に対し、中国は報復措置として22日から日本車などに特別関税を課した。セーフガード撤回を迫る狙いだが、日本政府は撤回などは「全く考えていない」(武部勤農相、平沼赳夫経産相)と強い姿勢だ。また自民党農林水産物貿易調査会も、中国は報復関税を「ただちに撤回すべきである」と決議し、日中貿易摩擦は一段とエスカレートしてきた。JA全中も、中国の措置に対する「全国の生産者の憤りは激しい」として、撤回を求める原田睦民会長の声明を出した。


 全中会長の声明は、中国の措置を「WTO(世界貿易機関)協定はもちろん日中貿易協定にも反する」として中国に厳重抗議するよう日本政府に求めた。
 日本の工業製品3品目に限定して特別関税をかけるのは、明らかに「最恵国待遇」の無視だ。日中貿易協定は特定国を狙い撃ちした措置を禁じている。
 このため自民党農林水産物貿易調査会(会長・中川昭一元農相)では「日本はWTO協定に則ってセーフガードを暫定発動した。発動期間中の報復は禁じられているのに中国は、そうした国際ルールを平気で破った」との批判が噴出した。 出席した農水、経産、外務各省の幹部を前に「中国向けの政府開発援助(OED)を中止してはどうか」(江藤隆美・総合農政調査会最高顧問)といった強硬論も飛び出した。
 また「中国のWTO加盟も近いのだから、そのルールに従うように今から、慣らし運転をさせるべきだ」「外務省は、暫定発動に踏み切らざるを得ない日本の農家の苦境を中国政府に伝える努力をしてきたのか」など外務省批判も出た。
 その結果、中国の措置を撤回させるよう政府は「あらゆる努力を傾注すべきである」との決議になった。
 これまでの日中協議では日本が、通常の関税で輸入するネギ、生シイタケ、畳表(イグサ)の数量(関税割当量)を、日中間で暫定発動期間中に取り決め、それを上回る輸入に高関税をかけて、本発動に移行するという仕組みを提案。
 これに対し中国は、日中の民間業者同士が輸出削減に取り組む方法を主張。
 しかし日本側は、日本の業者が開発輸入を急増させている実態も踏まえ、政府間合意がなければ実効が期待できないとみて、折り合いがつかなかった。
 足もとを見た中国は、本気でセーフガードをやめさせようと、国際ルールを無視し、報復関税で揺さぶりをかけてきたようだ。
 日本国内では早速、工業製品が「農業保護の犠牲になってよいのか」といったマスコミ論調が出てきて、「暫定発動を取り下げよ」という財界の声など、中国側の思うツボにハマる動きも目立ってきた。
 泥沼化を避ける方法には年内に予想される中国のWTO加盟を待って、紛争処理をWTOに委ねる手がある。そうすれば日本の勝訴はほぼ確実だ。しかし。それには時間がかかる。
 いずれにしても具体的な打開策への動きは7月の参院選後になりそうだ。

 ◆中国は「速攻」 後手に回った日本

 中国政府は日本の工業製品3品目への報復関税措置を予想外の早さで22日から実施した。同日の自民党農林水産物貿易調査会では「こうした動きを前もって察知できなかったのか」と外務省への不満も出た。
 また特別関税にかかわる経済産業省の詳細な数字確認の遅れも指摘された。
 報復対象品目の対中輸出(昨年)は乗用車452億円、携帯電話111億円、エアコン56億円となっているが、これら3品目(中国の関税分類で60項目)には、22日から通常関税に100%の特別関税が上乗せされて、輸入価格が2倍となる。
 対象製品60項目のうち大半を占めるのが自動車で52項目にのぼる。経産省は22日、在日中国大使館に厳重に抗議し、2国間協議を早く再開するように改めて申し入れた。
 なお日本が輸入制限した農産物3品目の中国からの輸入額は約230億円(昨年)で総輸入額の0.4%だが、自動車のそれは1%程度となっている。

 
トップページにもどる農協・関連企業名鑑 社団法人農協協会 農業協同組合新聞


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
webmaster@jacom.or.jp