新たな農協金融システムの構築のため今国会で成立した「信用事業新法」(農林中央金庫及び特定農業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律)では、農林中金が系統の総意のもとに、問題農協の早期発見・早期是正のための「自主ルール」を策定、JAや信連の経営改善、上部団体への事業譲渡などを指導することとされている。
この自主ルール(基本方針)についての協議が今月から本格化する。7月18日に開催される第63回総合審議会で骨子が検討され、19日の全国中央会会長会議で「骨子」を固める。その後、組織協議を実施し9月に基本方針案をまとめ、12月の農林中央金庫臨時総代会で正式に決定される。
◆新たな農協金融システム構築に向け
基本方針の骨子案を示す ―― 農林中金
JAグループは、信頼性の高い系統信用事業体制の構築を目ざして、自主ルールによる破たん未然防止策の確立に取り組んでいる。農林中金は、この自主ルールをJA、信連、農林中金がJAバンクとして一つの金融機関のように機能するための基本方針と位置づけた「基本方針」骨子案をまとめて26日の信連会長会議に示した。
これは「信用事業新法」(農協改革2法案の1つ)の成立を受けたものだ。新法は、農林中金が基本方針に基づいて指導業務を行うことを法定化する。
法案づくりの過程では農水省の検討会等において「実効ある破たん未然防止策」や系統信用事業全体としての一体的事業運営の確立などを内容とする「新たな農協金融システム」の構築を議論した。
これを踏まえて農林中金は「新たな農協金融システム」の構築に向けた広範囲の取り組み事項を基本方針に盛り込む必要があるとした。このため骨子案をもとに今後はJA全中の総合審議会をはじめ全国的に具体的な取り組み事項を協議して、12月の農林中金臨時総代会で最終決定する。
骨子案は、まず「JAバンク会員」について、基本方針を遵守するJA・信連と農林中金を会員とする、と規定した。そして会員の一体的な取り組みによって「JAバンクシステム」を確立する、とした。
次いで、会員の総合力を結集し、実質的に一つの金融機関(JAバンク)として機能することにより、良質な金融サービスの提供と組合員・利用者の利便向上に取り組む。そして、実効性ある破たん未然防止策を確立し、JAバンク全体の信頼性向上を図るなどJAバンクシステムの基本方向を示した。
会員の役割としては、農林中金にJAバンク中央本部を設け、関係団体の協力を得て会員を指導する。信連はJAバンク県本部を設置して県内JAを指導し、JAは指導を順守することなどを挙げた。
基本方針などに従わない場合には、農林中金が勧告と警告を行い、なお改善が認められず、JAバンクシステムの運営に重大な影響を与える場合にはJAバンク会員からの脱退・除名などペナルティー措置を講じる。
一方、農林中金は参考事例として破たん未然防止策の枠組み案も示したが、それによると、自己資本比率が一定水準を下回ることが懸念される経営不振JAに対しては、資金運用の一部を制限してリスク抑制を図りながら経営改善を促していくこととし、また事業継続が困難なJAには合併・事業譲渡を指導することなどが盛り込まれている。
なおJAバンクシステムのあり方については「基本方針の位置づけ」の中で▽組合員・利用者に迷惑をかけないためのJAバンクメンバーによる監視システムであること▽JAバンクグループの総合力を結集して高度で一元的な金融サービス機能を果たす、ことを挙げている。