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農政・農協ニュース

農林中央金庫 2期連続の増益
不良債権を大幅処理−−通常総代会開催(6/27)
 農林中央金庫の平成12年度決算は、不良債権処理を重点的に進め、リスク管理債権を38.8%減と大幅に縮減したうえ、経常利益を2.5%増とした。また自己資本比率(連結ベース)は11.06%と、前年度末より少し低下したものの11%台を確保した。不良債権処理は一括売却処理の実施など最終処理に踏み切ったことと、また数年前から、正常でない大口債権の回収に努め、引き当ての積み増しなどに着実に取り組んできた成果だ。6月27日の通常総代会は決算などを承認のあと、役員人事では、大多和巌常務が新専務に昇任し、また理事・監事計6氏を新任した。

通常総代会後記者会見する
上野博史理事長
 通常総代会では、上野博史理事長があいさつの中で「今後は金融グループ間の競争がさらに激化していくことが見込まれる」と情勢を説明し、決算については「厳しい経営環境が続くなか、収益確保に努めた結果、983億円の経常利益を確保できた」と報告した。
 さらに信用事業新法と呼ぶ「農林中金と信連の合併関係法」、「農林中金法」の全面改正、および「農協法」の一部改正が今国会で成立したことについて「新たな農協金融システムの基本的なインフラが整備された」との認識を示した。
 次いで事業報告書などを承認のあと、任期満了による橋本勝好専務ら3理事と3監事の退任に伴う新役員を選任した。理事は新しい業務を強化するため定数を1名増やし4氏とした。
 大手16銀行の前期決算は、不良債権処理の負担が重いため7行が赤字となったが、農林中金の場合は、ここ数年間、財務体質の一層の向上を図って、前々期に増益に転じ、前期は着実に好決算を実現した。
 今後の見通しについては遊佐皓専務が「昨年夏、ゼロ金利解除のタイミングをとらえ、長めの短期運用を強化したこと等のため今14年3月期は蓄積が残るが、昨年後半からのゼロ金利が続けば、来15年3月期は非常に厳しくなる。今後の運用環境には強い緊張感を持っている」と語った。
 不良債権処理は、バルクセールという一括売却をするなどした結果、リスク管理債権は11年度末に比べ4670億円減の7356億円に大きく減少した。
 また住専問題以来の子会社・協同住宅ローン(株)の債権は改善し「要管理」の債権先から脱却。グループ企業各社はすべて「身ぎれい」となった。前期は上野理事長の1年目だったが「これで引継ぎはうまくいったといえそうだ」と角道謙一・前理事長は笑顔だった。今期は農協改革2法の下で、ペイオフを見据えてJA破たんの未然防止策確立などに取り組むことになる。

◆信連預金増える 大口貸出も増加

 決算内容は、調達面で信連預金などが2兆6152億円増えて年度末残高は35兆9951億円。信連から短期市場運用を委託されている預かり金も増えて残高は3兆9907億円。農林債券は金利情勢から減少し、発行残高は6兆5457億円となった。
 運用面は、貸出金が1兆6336億円増えて残高は23兆167億円。預金保険機構などへの大口貸出が寄与した。しかし企業向け貸出は減った。有価証券は低リスクの内外債を中心に増えて残高は22兆6935億円となった。
 以上を受けて総資産は9兆1899億円増えて58兆9455億円となった。
 収支は、経常収益1兆4354億円、経常費用1兆3371億円。経常利益は前年度より24億円増えて983億円。貸出など各般にわたる営業努力と、有価証券運用による利益確保などがある。税引後の当年度利益は35.2%増えて845億円。配当率はすべて前年度と同じで普通出資の場合は年5%。
 自己資本比率は単体ベースで0.46ポイント低下して11.24%。これは総資産の増加に伴うものだ。
 なお、リスク管理債権に対する貸倒引当金の引当率は44%とした。大手銀行は41%強となっている。

個人資産の運用多様化に対応する体制を整備
上野博史理事長あいさつ(要旨)

 JA貯金の伸び率は、昨年4月に2%台に回復してから漸増基調にあり、本年4月末現在では速報値ベースで72兆5000億円、前年同月比伸び率は2.7%となりました。貯金伸び率のマイナス県も2県と改善され、これは各県における「ペイオフ対策」および「郵貯大量満期対策」への着実な成果の表れと見ることができると思います。漁協系統貯金の年度末残高も、過去最高残高を更新いたしました。
 日銀によるゼロ金利政策の復活というような状況の中で、預貯金者にとっては文字通りゼロに等しい預金金利であり、さらにはペイオフ解禁に伴う不安感も増大しているにもかかわらず「それでも貯金するしかない」かの思いが背景に存在しているものと思います。
 一方で、個人の運用手段の多様化も少しずつ進展しております。金融業界においても伝統的な預貸業務から預かり資産型業務に移行しつつあるようですし、小泉内閣の「骨太の方針」においても個人の資金を証券市場に呼び込むため税制などの面で環境整備を行う必要性が強調されています。当金庫も、系統信用事業がそういった面においても十分な対応がなし得るよう、サポート体制を整えていきたいと考えております。
 組織整備につきましてはこれまでに統合を指向している信連との間で個別に協議を進めてきた結果、栃木および秋田の両県信連とは平成15年中を目途に、また宮城県信連とは信用事業再構築計画の達成後早ければ14年10月を目途として、円滑な統合を実現すべく具体的な協議を進めているところであります。
 次に金庫の業務運営につきましては、今般、金庫法等の改正で、系統信用事業全体の健全性の維持と高度な金融サービスの提供に向けた金庫の役割が一層明確になったことを踏まえ、系統が強みを持つ組合員基盤の維持・強化に向け、皆様とともに系統一体的に取り組んでまいる所存です。
 また、皆様方への安定的な還元を行うためにも、金庫の強みを発揮できる分野で収益力の維持・拡大を図るため、経営資源の選択と集中を進めます。特に国際的な市場で、その力を発揮するためにも国際決済銀行、いわゆるBISが3次規制案で求めている高いハードルを越えるため、リスク管理手法の高度化等についてさらなる体制強化を図っていく必要があります。これらのことは、いずれをとっても、大変難しく、かつ急を要する課題です。今回、これら諸課題に的確かつ迅速に対応するため、所要の業務運営体制見直しを行うことにしたいと考えております。
 最後に、当金庫の12年度決算につきましては、各般にわたり収益確保に努めた結果、983億円の経常利益を確保することができました。これを受けて13年3月末の自己資本比率は単体11.24%、連結ベースで11.06%となっております。

◆新専務に大多和常務−−農林中金の役員人事

 農林中金は27日の通常総代会で、理事3氏と監事3氏を選任した。新役員は専務に大多和巌常務、常務に佐藤純二人事部長、鶴見肇総合リスク評価部長、山崎直昭推進統括部長、河野良雄総合企画部長、監事に古本修次総務部長、白岩徳人大分県信連会長、岸康彦愛媛大学教授が決まった。
 【専務】
 大多和巌(おおたわいわお)昭和17年兵庫県生まれ。京都大学経済学部卒。平成10年から常務。
 【常務】
 佐藤純二(さとうじゅんじ)昭和21年宮崎県生まれ。上智大学法学部卒。平成11年から人事部長。
 【常務】
 鶴見肇(つるみはじめ)昭和22年静岡県生まれ。東京大学教養学部卒。平成12年から総合リスク評価部長。
 【常務】
 山崎直昭(やまざきなおあき)昭和23年神奈川県生まれ。早稲田大学政経学部卒。平成12年から推進統括部長。
 【常務】
 河野良雄(こうのよしお)昭和23年愛媛県生まれ。京都大学農学部卒。平成12年から総合企画部長。
 【監事】
 古本修次(こもとしゅうじ)昭和21年福岡県生まれ。早稲田大学法学部卒。平成12年から総務部長。
 【監事】
 白岩徳人(しらいわのりと)大正13年大分県生れ。平成6年から大分県信農連代表理事。
 【監事】
 岸康彦(きしやすひこ)昭和12年岐阜県生まれ。早稲田大学文学部卒。平成9年から愛媛大学農学部教授。


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