JA全農の通常総代会は7月27日、東京・高輪のホテルパシフィックで開き、平成12年度決算などを承認。理事1名の補欠と増員にともなう監事3名を選任のあと、JR東日本のグループ企業・日本レストランエンタプライズによる米国産冷凍弁当の輸入販売に抗議する特別決議を、怒りをこめて採択した。決議は、輸入販売の即時中止と国産農産物の使用を両社に求めた。決算は、取扱高が4兆6512億円で計画比92%にとどまった。自主流通米と青果物の価格低下、配合飼料の値下げ、生産資材需要の低迷に加え、低価格品の普及などが響いた。
しかし当期利益は、経費削減などで20億6900万円と計画を達成し、出資配当率2%を確保した。
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大池裕会長
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総代会では、大池裕会長があいさつの中で、これらを報告のあと、冷凍弁当問題では「すでに抗議行動を展開しているが、事の重大性を考え、総代会で特別決議をしたい」と提起した。次いで堀喬専務が、前もって行った会員討議の結果報告をした。輸入野菜の急増対策では、国内産地の体質強化を急ぐ一方、政府の価格安定対策拡充を求めて来年度予算の概算要求に反映させる方針を示した。
審議では「米の豊作予想から減反強化の声も聞こえてくるが、減反率40%ともなれば稲作崩壊に道を開く。38%どまりが限界だと思う。全農としてはどうか」と切実な質問が出た。岡阿弥靖正常務は「前年度からの緊急米対策に従って、5万ヘクタールの青刈り、それでも余れば飼料米処理、それ以上となれば調整保管という対策で需給バランスを保っていきたい。また消費拡大の取り組みも強化しなければならない」との方針を説明した。
肥料と農薬の値下げ要望に対しては、松尾英章常務が「13肥料年度は円安要因で値上げとなったが、肥料コスト低減の目玉である全農の高度化成肥料アラジンは据え置いた。値上げ品目から転換して、安いアラジンを使ってもらえれば、値上げ分を十分に吸収できる。農薬価格については交渉中だ」と答えた。
総代会では決算などを承認し、退任した理事1名の補欠には、石井素行氏(千葉県本部運営委員会会長)を選任。また新監事(学識経験者)には涌嶋英之(全農参事)、山下祥司(同参事)、萬靖義(同生活部部長)の3氏を選任した。3氏は常任となる。
会員討議の結果報告では協同会社の再編・強化方針も明らかにされた。
来年4月に34経済連との統合が実現すると、全農出資の協同会社は合計二百数十社となり、事業や機能の重複が生まれてくることになる。また、その25%は累積損失を抱えている。このため全社の業績を評価し、それぞれ課題を明確にして改善策を策定、経営体質の健全化を促進する。そして設立時の使命が終わった会社や、改善のめどが立たない会社は解散する一方、環境の変化で新たな機能や事業分野を担う会社が必要となった場合には新会社を設立する。
こうした再編・強化で17年度までには協同会社を半数程度に減らす方針だ。
輸入野菜急増対策では、特にセーフガードの対象品目であるネギや、監視対象品目について低コストモデルを策定し、品目ごとの低コスト生産体系の確立と普及に取り組んでいると報告した。
流通対策としては、段ボールの茶色箱化や、低コスト原紙の開発、また出荷規格の簡素化、コンテナ・バラ流通の普及に取り組む。流通経路の短縮によるコスト削減に向けては、直送取引を拡大していく。
販売対策では「全農安心システム」などを拡大し、国産の優位性を活かした販売戦略を構築する。
また輸入青果物のシェアが大きくなっている加工・外食産業や、市場外流通のウエイトを高めている量販店に対しては契約取引など直接取引を推進する。
全農は低コスト重点品目を設定しているが、それがどの程度の効果をもたらすか、ネギの栽培事例を紹介している。それによると、施肥コストを12%削減でき、自走式ネギ収穫機を使えば10%強の収穫作業コスト削減になり、さらに出荷の茶色箱化でも削減を上乗せできると報告した。
◆担い手対策を強化 大池全農会長ら語る
JA全農の大池裕会長、四ノ宮孝義専務は総代会後の記者会見で、JR東日本の輸入弁当問題などについて次のように語った。
輸入弁当問題は、日本の水田農業や、年間77万トンにも及ぶミニマムアクセス米の輸入、そして生産調整などとの関係から、このような行為は断じて許せないと抗議し、弁当には国産農産物を使うように求めている。同じJRグループでもJR東海の社長は、国民とのふれ合いの中で考えてJR東日本と同じようなことをやるつもりはないといっている。私たちの主張は正しいと思う。
輸入野菜急増に対するセーフガード問題については実効ある輸入抑制措置の実施を求めて、本発動につなげていきたい。
生産コスト低減については、農産物が値下がりしているのだから、生産資材も値下げしてほしいというのが農家の願いだ。それに応えていくためには、国際競争の中で為替の問題なども吸収しながら事業を進めなければならない厳しさがある。今年度はさらに合理化効率化を進め、この課題をカバーしていく決意だ。統合連合の取り組みと併せて思い切った物流改革に取り組む。
地域農業振興に向けた支援強化の課題では「JA生産販売企画マネージメント体制」を構築するための研修なりモデルづくりなどのある程度具体的な骨子を6月の県本部長会議に提案した。これから、さらに議論することになっている。
担い手対策では、農業法人との提携を強める課題を受けとめていく部署や人材がJAに必要だ。そのためには研修とか、他のJAとの経験交流が必要だと考えて取り組みを強めている。農協法改正で義務づけられた経営管理委員会の設置は来年7月導入に向けて検討を進めている。